見出し画像

年末年始の南米旅行記 ('23) | トーレス・デル・パイネ編

前回はイグアスの滝・ブエノスアイレスについて書きました。
今回は、旅行の最後に行ったトーレス・デル・パイネ国立公園について書きたいと思います。

ギチギチの旅程

トーレス・デル・パイネとは

トーレス・デル・パイネはパタゴニアと呼ばれる地域にあります。パタゴニアと一口に言ってもアルゼンチンとチリの南半分にまたがる広大なエリアで、砂漠から氷原まで様々な地形を内包します。3方向を海で囲まれ、大陸最南端に位置することから「世界の果て」(“edge of the world”) とも呼ばれており、日本から見ても地球上で最も遠い場所の一つだそうです。米アウトドアブランドの“Patagonia”の名前の由来でもあり、ロゴの山脈はまさにこのトーレス・デル・パイネ!と言いたいところですが、実際にはアルゼンチン側のロス・グラシアレス国立公園にあるフィッツロイがモチーフになっています。

少し前に創業者が全保有株を環境NPOに寄付したことで話題になった

とはいえトーレス・デル・パイネも知名度的には引けを取らず、チリ側パタゴニアにある最も人気のある国立公園で、「パイネの塔」という名の通り3本の塔の形をした特徴的な岩山が目玉となっています。この岩山を含む様々な景色を楽しめる本格的なトレッキングコースがあり、4~5日かけて歩くWトレックと6~10日かけて歩くOトレックが有名です。公園内にはExploraAwasiといった高級ホテルもあり、パタゴニアの絶景に囲まれながらゆっくり過ごすリゾート的な楽しみ方も可能です。行くとしたら10月~4月がベスト、夏季の12月~2月はハイシーズンで、冬季は極寒かつ日照時間が少ないためトレッキングコースやホテルの多くは閉鎖されています。

国立公園内を流れるパイネ川。スマホで撮ったとは思えない

私たちは2日間のみの滞在だったため公園付近の宿に泊まり、1日目は岩山が見られるMirador base de las Torresまでの1日トレッキング、2日目はドライブ+1~2時間のトレッキングという予定を立てました。

アクセス・宿

近くにはプエルトナタレスとプンタアレナスの2つの街があり、いずれもサンチャゴから飛行機で3時間半程度となります。今回は空港からレンタカーで移動する予定だったため、より国立公園に近いプエルトナタレスに行きました。

レンタカーは事前に予約しましたが、空港到着後に手違いで予約できていなかったことが発覚しました。慌てて現地の業者に片っ端から電話をかけても、どこも予約でいっぱい…。とりあえずタクシーでプエルトナタレス市内に行きダメ元で探したところ、閉店間際のレンタカーで奇跡的に借りられました。

プエルトナタレス市内

レンタカーは便利な一方で予約は電話または対面でのやり取りとなるため、スペイン語が話せないと難しそうな印象を受けました。実際多くの観光客はバスを利用しており、市内のバスターミナルで簡単にチケットが購入でき問題なく移動できますが、本数が少ないため行動が少し制限されます。またレンタカーは(というよりも南米は)圧倒的にマニュアル車が多く、オートマ免許だったのでその分探しづらかったのかなと思います。

柵の奥にいるのがグアナコ

無事車を確保した後はグアナコが群れを成す草原を突っ走り、2時間強のドライブを経て22時頃にRefugio Laguna Amargaに到着しました。清潔感はあまりなく、6畳間に二段ベッドが3つ敷き詰められているような典型的な山小屋でしたが、背後にはトーレス・デル・パイネが見え、国立公園まで車で15分程度と非常にアクセスが良く、ご飯を食べて寝るだけの宿としては十分でした。ただ山の中なので虫が湧き、夜雨が降っているのかと思ったら、光に吸い寄せられた蛾の大群が屋根に体当たりしている音でした。

泊まった宿。奥にはトーレス・デル・パイネが見える

Mirador base de las Torres

翌朝は7時半頃には宿を出発し、車でMirador base de las Torresのトレッキングルートの起点であるウェルカムセンターに向かいました。国立公園の入口で入場料を払う必要がありますが、事前にネットで購入しておりQRコードを見せるだけだったので、待つことなく一瞬で通過できました。

登り始めは余裕だと思っていた

ウェルカムセンターから歩き始めたのは8時頃。往復18キロ、高低差900メートル、合計7~9時間のコースで、5年前に行った富士登山と比べれば余裕だろうと思っていましたが、体力の衰えと日頃の運動不足を痛感することになりました。麓あたりからアップダウンの激しい道が続き、それだけでもう息が上がっていましたが、極めつけは最後に待ち受けていた岩場の急斜面でした。コース全体の高低差を最後の1キロでカバーするんじゃないかと思うくらい、ひたすら登りが続きます。頂上付近に到達するまで見晴らしが悪く、途中もう登り切ったと思ったら道がまだまだ続き、終わりが見えず、何度か心が折れそうになりました。

すぐそこなのに…ひたすら急斜面が続く

頂上に着いたのは出発してからちょうど4時間後くらいでした。疲労がふっとぶくらいの絶景を前に尻もちをついて足をつり、風に打たれながら1時間くらい無心でポテチを食べていました。

メルケン味最高

振り返ると色々反省がありますが、まずはチリのトレッキング=日本の登山であり、足腰にかなり負荷がかかるため、トレッキングポールを持って行くべきでした。また結局使わなかった防寒具をたくさん持って行ったため、荷物が不必要に重くなりました。風の強い日もあるようなので一概にはいえませんが、歩いているうちに自然と身体が温まるため基本的にずっと半袖で、頂上付近はコート1枚で凌げました。水をどれくらい持って行くべきか迷いましたが、中間地点で水汲み場があるため1Lのペットボトルさえあれば十分でした。

下りはがくがくになった足で来た道をひたすら戻ったため登りより辛く、麓に着いたのは17時頃でした。足がぷるぷるする感覚を初めて味わい、これからは毎日何かしら運動しようと心に誓いました。

下りで足が限界に達し、休憩所ではひたすらストレッチ

Mirador Salto Grande、Mirador Condor、Guarderia Grey

翌日は車で国立公園内にある3つのスポットを回りました。まずはMirador Salto Grandeでパイネ川の滝を見た後、Mirador Condorで往復1.5時間のトレッキングコースを歩きました。パタゴニア自体ほとんど樹木のない広大な高原で、絶え間なく極風が吹きつけています。風速15~20 km/hにも及ぶため、駐車する際には何かしら障害物の間に停めないと車が倒れる危険があるとレンタカーで言われました。それを如実に感じたのがMirador Condorで、頂上付近では強風でふっとびそうになり、ひどい時は口を覆わないと呼吸できず、人生で初めて風によって命の危機を感じました。

風がやばかった

氷河だとチリ側ではGrey Glacierが有名ですがボートツアーでないと見に行けず、年末年始は既に予約でいっぱいだったため、徒歩でアクセス可能なGuarderia Greyに行きました。大元から漂流してきた小さな破片しかなく大きな感動はありませんでしたが、パタゴニアで氷河を見たという経験は得られました。ボートツアーで見られる景色は勿論、氷河の氷でウィスキーを飲むツアーもあるようなので、またリベンジしたいと思います。

Guarderia Greyの氷河

今回は短期間の滞在だったため限られた場所しか回れませんでしたが、圧倒的なスケールを誇るパタゴニアの大自然に囲まれ充実した2日間でした。次回はもう少し時間を確保し、アルゼンチン側を含む他の国立公園も回ってみたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?