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発達障害と24金

私の家系で1人だけ元気な人がいます。私の父方の祖母です。彼女は90代後半ですが見た目が若くとてもそんな年齢には見えません。祖母は健康で95歳の時に医師から「60代の体。これから15年くらいは普通に生きそうな感じ」と言われていました。見た目にも若く、90過ぎても自転車に乗ってスーパーに買い物に行きます。時々ボケたふりをしますが、要領がいいだけでただのフリです。

身体は健康で病気知らず。年をとっても頭はシャッキリ。同じ年齢の女性よりも見た目は若く、でもなんだかちょっと変わってる。

ちょっと変わってるんです。


祖母には異様な記憶力がありました。学校に通っていた時は最初の1か月で教科書を一言一句間違えずにすべて記憶してその後は学校に教科書を持って行かなくなっていたそうです。理由は「お弁当を2人前持って行かないとお腹がすいて仕方がないから」だったそう。とにかく燃費が悪くて早弁をしていたそうです。荷物になるので教科書と大量のお弁当を持って行けないから、教科書は丸覚えしておけばいいやという発想は祖母らしい。食欲大魔神でもありましたが特殊な食癖もありました。毎食お刺身を食べたがったのです。遊びに行くとお刺身かお寿司以外の食べ物が出てくることは稀でした。

そして祖母は数学が得意でした。賢いといってお姑さんに異様に可愛がられて、お嫁に行った先で資産運用をして財産を増やしました。近所の人からは変わった女性だと思われていて、人付き合いはちょっと苦手だったようですが仲のいいお友達も何人かはいたようです。歌が好きで民謡とカラオケを習っていました。おばあちゃんのおうちにはカラオケセットがあって子供のころはよくそれで遊びました。祖母は歌の歌詞を間違えないか緊張すると言っていましたが、言っているだけで大抵の歌はよく覚えていたと思います。祖母は匂いに敏感な人でよく「私の匂いは酸っぱくて嫌い」と言っていました。

・記憶力が良すぎる
・異様な食欲
・特殊な食癖
・数学が得意
・歌に才能がある
・人付き合いは苦手
・特殊な体臭

誰に教わらずとも最初から難しいことができるタイプの人間です。賢い人です。発達障害っぽいのは間違いなく、小さいころに私に向かって「私に似てごめんね」と言っていました。幼いころの自分を見るようだと言って涙ぐんでいて「記憶力が大事なのよ」と、まだ何もしゃべらない私に漢詩やお経を教えてくれました。

ちなみに特殊な食癖というのは次の通りです。

・納豆を絶対に食べない
・1日1回以上は刺身を食べる
・お寿司が大好物
・天ぷら大好き
・牛乳嫌い、ヨーグルトは砂糖入りならOK
・塩分が多めの食事が大好物
・お酒は飲まない(特にビール嫌い)
・味噌汁好き
・アイスクリームは好き
・漬物は欠かさず食べる

これは思いっきりレクチン除去しまくってる。食べ物の好き嫌いの多い人だと言われていたけれど同年代の人に比べると一番長生きしています。しかも病気をしないものだから友達と旅行に行ったり食事に行ったり人生を本当に楽しんでいました。

・老けにくい
・活動的な性格で遊びが好き
・子供っぽい所がある人


祖母がなぜほかの人たちと違って健康だったのか。
最近古細菌について勉強していると一つ思い当たることがあります。

「これはね?おじいさんが若い頃に歯の治療に使っていた金歯よ。それを溶かして指輪を作ってくれたのよ。私が年をとってボケてもこれを外さないでね。死んだらこの指輪も一緒に棺桶にいれてね。」と、言って彼女はよく指輪を見せてくれました。当時はそうやって指輪を作ることがよくあったと親戚の人から聞いたことがあります。昭和初期のことなので、当時の歯科治療に使われた合金の技術はどのようなものだったのかわかりませんが彼女の指輪はよく変形したり傷がついていたので純金に近いものだったと思います。

一人だけ健康な祖母が金の指輪を常に身に着けていた。それは私が金を購入した理由の1つでもあります。おまじないやパワーストーンのような意味合いでは全くなく、古細菌狙いでの話なのですが。


私は幼い頃に祖母が私に言った言葉をよく覚えています。それは自分たちの「記憶力」について私に繰り返し同じことを教えていてくれたんです。

「この能力はね、誰かほかの人のために使わないといけないよ。自分の為だけに使うと嫌われるからね。だってこれは神様が他の人を助けてあげるために私たちに貸してくれているもので、元々私たちだけのものではないのだから。だからこれは人のために使おう。」

学校に教科書を持って行かなかった祖母は教師から「生意気だ」と言われて年がら年中絡まれて学校生活が全然楽しくなかったそうです。「教科書を持って行きたくないから丸覚えして持って行かない」というのは自分の為だけに能力を使っていたから教師に嫌われたのだと反省したそうです。


私は祖母ほどは記憶力が良くありませんが、私の子供はとても記憶力が良いです。1度聞いた音楽はすぐに覚えて歌い始めるし、一度覚えた音楽は何年経っても覚えていて振り付けも完璧に再現できます。

ある時私の子供は「TV」「DVDプレーヤー」「iPad」「シッターさんのiPad」「iPhone」の5つのデバイスでしまじろうのアニメを見ていました。私は「もういい加減にしてよ!一体いくつ同時に見れば気が済むのよ!やかましいの!つけるだけつけて、そんなにいっぱい見れるわけがないじゃない!」と腹立たしく思ってそのうちの1つの音をミュートにしました。

すると子供は音が消えたアニメのセリフをそのままアテレコし始めて結局最後までずっとセリフを再現し続けていました。いつも異常なほどアニメを飽きずに見まくるなと思っていたらまさかセリフを全部覚えていたとは…。試しにいろいろなアニメを消音で見せてみるとかなりの本数を覚えていました。

ペラペラといくらでもセリフを言い続けられる我が子を見て思わず私は「気持ち悪っ!」と思ってしまいました。

そしてこの姿は本当に見覚えがあリました。

実は私は小さいころに母が祖母の悪口を言っていたのを覚えていて、おばさんが遊びに来た時にそれを完全に再現して喋って見せたんです。まるで音声を録音して再生したように1時間ほど延々としゃべり続けてしまったせいで後で母に折檻された記憶があります。母の悪口を一言一句間違わず再現した姿を見ていた人は全員「気持ち悪い」と言っていました。それから私は来客があるたびに押し入れの中に閉じ込められて存在自体を隠されていました。

これは同じだ。あの時の私と。異様な記憶力は他人からしたら気持ち悪く映るのです。

私はわかります。あの時私は苦しかった。余計なことを言うなと親に折檻されることよりも覚えたことを忘れられないことが本当に苦しかった。助けて欲しかったけどそれをうまく伝えることもできなかったし、伝えても誰かが何かしてくれるようにも思えなかった。

ありえないほどの記憶力を駆使しているとき本当は頭の中はとてもしんどいのです。もうこうなると特技とかそういう範疇ではなく、苦しみの表現なんです。本当は覚えているのではなく忘れられなくてつらいだけなのだから。

24金を身につけさせてから、私の子供はデバイスを5つならべてアニメを見るようなことをしなくなりました。


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