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胎内記憶と中間生記憶

今日はちょっとオカルトっぽい話をするので苦手な人はごめんなさいね。

知り合いの超重度の自閉症の女の子は口でしゃべることはできませんがひらがなが書けます。長い間「彼女の中に言葉はないのだろう」と思われていたらしいのですが、ある時「どうせできないに決まっている」と思いつつも遊びでペンを手に握らせて書かせてみたら上手に書けたのです。

でも手を横に動かすことができないので、常に同じ場所に文字を書くことになります。彼女の手の上に手を置いてみると手の動きで彼女が描いた文字が何なのかわかりました。それ以来筆談ができるようになりました。

先生も親御さんもビックリして「こんなことがあるなんて!」と衝撃を受けたらしいのですが、彼女が書いた言葉は不思議なことだらけで人々をさらに驚かせたのです。

TVのニュースを見ながら「この事件に対してはどう思うのか?」と質問したり、「最近話題のこれについて意見が欲しい」などと言うと的確な返事をくれるのです。その答えを見る限り彼女は何事に対しても思慮深く賢かったのです。見た目は超重度ですが中身は全然そうじゃなかった。でもペンを持たせなければ一生彼女の声を聴くこともなく周囲の人は彼女を誤解したままでいたかもしれません。

彼女は普通の人があまり考えないような合理的な考え方をしていたり、独自の道徳観を持っていたのです。

話せば話すほど、「私のほうが人として随分と劣っているののではないか?物事の捉え方や考え方が彼女のほうが比べようもないほど素晴らしい」と感じることもありました。

彼女は決して見た目通りの障害児ではなかったんです。

知性などないと思われていた彼女が突然ペンを持って語り始め、色々なことに対して真剣に考えていることや人びとの知らないことを沢山教えてくれたんですよ。


ある時、私の子供が通っている放課後等デイサービスの先生が「会わせたい人がいる」と言って彼女を紹介してくれました。

私が彼女と最初に知り合った日、彼女は私と私の子供を見てこう言いました。

「この赤ちゃんはいいお母さんを選んできたね。すごく良いね。私も生まれる前にどのお母さんにしようか凄く迷ってなかなか決められなかったけど、とてもいいお母さんを選んだよ。この子のお母さんはいい人だね!私のお母さんもいいお母さんだけどね!!」

「赤ちゃんはお母さんを選んで生まれてくる」という内容の本が発売されていますが、それに似た内容のことを言いました。体内記憶はインターネット上でも語られていてとても人気ですよね。

それで「生まれる前の記憶があるの?」と聞くと先生が過去に質問して記録していた中から興味深い記述を私に見せてくれたのです。


先生は私と彼女が会う時に、あらかじめ彼女から私に伝えて欲しいと言われていた資料をまとめてくれていました。

「前にそれを聞いた時にね?『生まれる前はどこにいたの?』って聞いたら『お母さんのおなかの中にいたよ』って言うから、『じゃあその前はどこにいたの?』って聞いたら『おとうさんのおちんちんの中』って言うの!そこ!?そっちなの?!ってびっくりして思わず笑っちゃった。でも『おとうさんのおちんちんの前はどこにいたの?』って聞いたら『かみさまのところ』って言うの。『そこで何をしてたの?』って聞いたら『お母さんを選んでた』っていうのね。彼女が言うには『人間は何度も生まれ変わって生きなければならない』らしいんだけど、『徐々に勉強していくとステージが上がって行ってかみさまのいるところに近づく』んだって。『人間は最後の2回が全員障害児としての一生』なんだってさ。『魂が成熟しないと障害児として生まれることはできない』んだって!しかも2回もよ?2回もやらなきゃいけないのよ?『それをクリアしないとかみさまのところには行けないし、ちゃんと生きれたらかみさまのところで永遠に暮らす』んだって。『人間として生きているときはたくさんの試練があるけどそれを超えられた人だけがかみさまのところにいける。障害児っていうのは最大の試練。だからすべての人は全員最後に障害児をやる』んだってさ。それで『どうしてお母さんを選ぶの?』って聞いたら『それまでの生涯は自分で頑張って何とか生きてこれるけど最後の障害児の生涯はお母さんの助けがないと絶対にクリアできない壁があるの。それは一人では絶対にどうにもならないの。いいお母さんを選んでお母さんにちゃんと押し上げてもらわらないと上には行けないの。だからお母さん選びは真剣にやらなくちゃいけない。選ぶのを間違えてうまくいかなくて失敗する人たちも大勢いる。そしたらやり直しになるし、余計大変。だから真剣に選ぶの。選ばれたほうのお母さんもね、ちゃんとかみさまのところに行けるようになるからね。それは良いことだからね。全部終わったらね、ちゃんとお母さんと会えるようになっているから。大丈夫なんだからね。だから引き上げてあげたいと思うようなお母さんを選ぶの。誰でも良くないの。だってずっと永遠に一緒にいたいと思うような人しか選ばないからね』って言うのよ。なんかそんなこと言うなんてねー。」

先生はホロリ。

そして彼女は何度も私に「いいお母さんを選んでこの赤ちゃんは幸せ」と繰り返し言ってくれたのです。

私は宗教などを全く信用していないので、輪廻転生の話をされているのだと気づいたときはちょっと気持ち悪いなと思いながら聞いていました。

なぜ輪廻転生を繰り返さなければならないのか?
どんなふうに生きればかみさまに認めてもらえるような一生と言えるのか?
かみさまのところになぜ行かなければならないのか?
そもそもかみさまなんてどこにいるのか?
オカルトぽくてわからないことだらけです。

でも彼女と接していたらそれがただの質の悪い作り話のようには思えませんでした。彼女はものすごいリアリストでオカルトな話題なんて好きそうじゃなかった。それなのに私にそう言ったんです。

彼女がどうしてこの話を私にしてくれたのかはよくわかりません。
そういう風に言えば障害児を持ったお母さんを励ませると思っていたのでしょうか?

私を励ましたくて作り話をしてくれていたとしても、その優しさに涙が出ます。

それがたとえ真実であってもそうでなくても。

子供たちの想いに応えてちゃんと育ててあげたい。
心底そう思いました。


そしてこの女の子は不思議なエピソードの多い子でした。

ある時、先生にこう言ったそうです。

「これから数か月の間に先生のところに小さい赤ちゃんのいるお母さんが電話をしてくるの。そしたらその赤ちゃんを預かってあげて。ここは小学生からしか見れない施設だけど、それでも預かってあげて。だってそのお母さんはみんなのためになることをするの。だからそれができるように赤ちゃんを預かってあげてね」

私はその施設に電話をする前に8か所に連絡をして断られていたんです。ことごとく「無呼吸発作のある子なんてあずかれない」と言われて消耗しきっていました。幼稚園も保育園も児童発達支援センターもどこも門前払いでした。

でもその法デイに電話をすると先生は「明日から来て!」と何の話も聞かずに言ってくれたんです。とんとん拍子に預けられるところが決まったので、ほっとしました。

でも先生があの時すぐに預かってくれることを決めてくれた理由が、彼女だったんですよ。もしも言われてなかったらやっぱり断ってたはずでした。

彼女が「預かってあげてね」と、私が電話をかける数か月前に先生にお願いしてくれていたから通うことができたんです。



私は彼女の言葉がとても気になっています。

「このお母さんは皆のためになることをするの。」

というあの言葉。

私は何かができるのでしょうか。
皆のためになる何かが。

そんな風に言われたら、私は何かを探していつも人のためになることをと考えるようになっていました。

私は彼女を相当な策士だと思います。








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