国際会議学会発表ウラ心得

毎回,海外の学会に来るたびに経験しているのに,帰国すると忘れてしまうので書き留めておこう.

1. 「講演スライドは出国してからでもつくれる」.時間に余裕があるうちにスライドをつくるのはアタリマエのことかもしれないが,ワタクシの場合,どういうわけだか毎回それができずに “敵地” に乗り込んでからじたばたつくることがほとんどだ.タテマエ上はいけないことだがなんとかなる.

2. 「講演スライドには字や図をぎゅうぎゅう詰め込まない」.国際会議ではお作法的につくってはならない紙芝居(極小フォントと縮小図版)の事例を意外に多く目にする.日本語でも英語でも(他言語でも)会場のうしろからちゃんと読めるスライドを心がける.

3. 「講演原稿はつくらなくてもいいよ」.日本語でも英語でも講演原稿をつくって壇上で “読む” あるいは暗記したものを “吐く” というのは舞台裏が見え見えでつまんないのでやめましょう.スライドを見てその場で “噺す” ようにワタクシはする.

4. 「講演の発表練習はしない」.これはきっと語弊があるな.発表練習はスライドをつくっている最中に “心の中” で終わらせようということ.並べられたスライドに噺の内容を “焼き付けて” しまうと原稿もいらないし,練習の必要もない.

5. 「講演の発表練習をするとしたら」.もしすでに講演スライドができあがっていて心と時間の余裕があるなら,原稿なしでスライドを見ながら噺ができるかどうかをチェックする.スライド順を部分的に “無作為化” してなお噺がつながるようなら万全だ.

6. 「他の演者のパフォーマンスにあおられない」.講演の番が近づいてくると緊張感が高まるのはしかたない.英語を母国語とする発表者が次々にスマートな発表をすると不安感も嵩じてくる.しかし,いったん高座に上がれば自分の天下.パアっとやってしまえ.

7. 「読むんじゃないよ,噺すんだよ」.学会発表という高座はパフォーマンスなので,聴衆たちを楽しませないと.ジョークのスライドなんかいらない.それよりもちゃんと読めるスライドを見せるのが大切.

8. 「読むんじゃないよ,噺すんだよ(続)」.英語を母国語とする参加者が多数派の学会だと世界語としての英語の “変異” に気づかないが,Hennig Society みたいに非英語話者が多い学会だとどんな英語(みたいなもの)でも大丈夫なわけ.Poor English こそ国際会議の公用語だ.

9. 「読むんじゃないよ,噺すんだよ(続々)」.いったん高座に上がれば poor English で噺しましょう.スライドがちゃんと読めれば聴衆はわかって楽しんでくれるって.読めないスライドで原稿を棒読みするのはサイアク.

10. 「海外発表での “補助輪” を外す覚悟を」.講演に先立って発表原稿をつくって覚えたり読んだりするのは,要するに「補助輪付きの自転車」に乗るようなもの.確かにコケる心配はないし安心できるだろうけど,いつまでもそこから抜け出られない.

11. 「海外発表での “補助輪” を外す覚悟を(続)」.よく耳にするのは「壇上で英語が詰まってしまったら困るから」という弁解だが,ワタクシ的には “補助輪” をはずすのをとてもこわがる子どもの稚拙な言い訳に過ぎない気がしてならない.

12. 「海外発表での “補助輪” を外す覚悟を(続々)」.いったん “補助輪” のない学会発表をどこかで経験しないといつまでたっても脱却できないと思う.もちろん “補助輪”のない自転車の自由さとその楽しみも味わえない.さらば “補助輪”.

13. 「国際会議での “修羅場” を語れ」.海外での学会発表の “修羅場” は多くの経験者がいるだろうから,そういう経験談を周囲に語るようにすると共有されるだろう.

14. 「国際会議での “パラダイス” を語れ」.一方で “修羅場” があるなら他方には “パラダイス” だってあるだろう.海外の国際会議の楽しみを語る場があったっていいじゃない.

15. 「エンジョイ!」.国内でも国外でも学会は楽しむものであって,苦しむものではない.せっかく多くの国から “同好の士” たちが集まっているんだから楽しまないのはもったいない.ホテルにこもりきりで講演準備するのではなく,学会会場に行って弾けよう.

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