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美味しいは急げない。

こんばんは。

れふとで御座います。

美味しいものを食べた時って、皆様どんなリアクションをされますか?
目を瞑って噛みしめる人、
これ美味しい!と喜びを共有する人、
目を見開いて思考停止する人。

色々なパターンがあると思うのですが、
まぁまぁな割合で某チョコCMの綾野剛みたいになる人が多いと思います。

私ももちろん皆様と同じように噛みしめたり、
目を瞑ってみたり、
思考回路が停止して動きが止まる時もあったりします。


まだ私が上京して間もない二十歳くらいの頃、
発信のコールセンターで良い成績をとっていた為、
社長にひどく気に入られていた時期があります。

よくお偉いさん達の場に同席をする機会を頂き、
毎日のように夜遅くに帰っていましたが、色々なところへ連れて行ってくれましたし
二十歳そこそこの若造がされてはいけないような待遇をしてもらっていたと思います。


ある日、午前中から良い感じで数字を上げる事ができていた日、
社長が顔見せに来てくださいました。

私の成績を見て
「お、れふとお前もうこんな行ってんのかすごいな。昼飯連れてってやるよ。」

私はしっかり、そして深く思いました。


…嫌だなぁ。


人見知りを極める私は数回あった程度では心を開けませんし、
なかなか仲良くなれないくせに仲良くない人と長く一緒にいるのがとても苦痛なのです。

しかも偉い方とサシでお昼だなんて。

…やっぱり、嫌だなぁ。



『あ、ありがとう御座います。なんか急にすみません。』

もちろん断るだなんて選択肢は御座いませんので、
懸命な作り笑いを作って社長の車に乗りました。

「れふと東京来て間もないんだろ?
叙々苑とか食ったことあるか?」

『いえ、まさかお店見たこともまだないです。
TVですごい焼肉屋さんなんだろうなぁくらいのイメージです。』

「せっかく東京来たんだしそう言うところも行っといたほうがいいぞ。
よし、行くか。」

たったこれだけの会話で叙々苑デビューが決まりました。
しかも、ランチで。

…でも、嫌だなぁ。


『あ、ありがとう御座います。なんか急にすみません。』

もちろん断るだなんて選択肢は御座いま…略


そして20分程で叙々苑につき、
緊張と帰りたい気持ちが入り混じりよく覚えていませんが、
高そうなお肉達がちょっと食べきれないくらい出てきました。

「遠慮すんなよ。せっかくだから。」

『あ、ありがとう御座います。なんか急にすみません。』

「お、でももうこんな時間か。ちっと昼開け過ぎちゃうけどまぁいいよな」
社長は気を使ってくれたのですが、私はここはチャンスと思い、

『いえ、せっかくですがすみません。
雇用される側ですから、皆さんと同じように扱って欲しいです。
申し訳ないんですが13時には戻らせていただいてよろしいですか?』

「おぉ、やるね。じゃあ急いで食っちまおうか。」

それとなく社長のご機嫌も取りつつ、
高級なお肉を一口。

急いでいただかなくちゃと思いながら頬張った瞬間


うまぁ…。


思考は停止し、目は一点見つめ。
ワン咀嚼でピタッと、動きは止まり、
その後完全にスローモーションになりました。




もちろん13時の時点で、
私はまだ社長の車の中でした。

社長は笑いながら
「良い事言ってたけど結局、存分に堪能してたな。
今度は夜連れてってやるよ。」

口ばっかりで高いお肉に全て持ってかれた私は
結局同じことしか言えませんでした。

『あ、ありがとう御座います。なんか急にすみません…。』

美味しいを急ぐ事は、きっと出来ないんだと思います。

それでは、今夜も良い夜を。

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