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[企業法務]登竜門

新卒採用や未経験者採用で法務部門に配属された後は、指導を受けながら実践を重ねていく日々を過ごすと思います。

法務部門の主要な業務の一つに契約書の作成・審査があります。企業の大中小を問わず、法務部門では必ず契約書の作成と審査を行っているかと思います。

契約書といっても企業の事業内容によって、売買契約書、ライセンス契約書、請負契約書など、取り扱う契約書はさまざまです。

ただし、どんな事業内容であっても、共通して法務部門が取り扱う契約書にNDA(秘密保持契約書)があります。そして、多くの場合、NDAの作成と審査は法務部門に配属された方の登竜門になってきます。

その理由の一つにNDAはある程度条項が決まっており、定型化(テンプレート化)しやすく、作成・審査にあたってのヒアリング項目や検討項目を設定しやすいことが挙げられるかと思います。

設定済みのヒアリング項目や検討項目に従って事業部門との確認や議論を進めていき、契約書を作成する流れを理解し、習得していく。そして、テンプレート化されたNDAに修正・変更を加えていくのを繰り返して契約書の表現を覚え、習得していく。さらに、取引先が提示してきたNDAを審査して、交渉のポイントを見つける方法を習得したり、契約書の表現をさらに知ったりしていく。

この鍛錬を経て、何も見ずにNDAの雛形をゼロから作成できるようになれば一つの登竜門をくぐり抜けたと言えると思います。

しかし、昨今の機械学習やAI(いわゆるリーガルテック)の登場により、NDAの作成が登竜門にならなくなる可能性も出てきます。すでに企業法務からは退いているため現状を把握してはいないのですが、NDAの作成をワークフロー化し、営業担当者がオンラインサービス上で質問に答えていくだけでNDAの草案が作成されるということやNDAの作成や審査はすべてリーガルテックに委ねているということが現実に起きているか、近い将来において発生する可能性は高いと思っています。(たしか、前者は大企業において既に実践されていたはずです。)

この場合、法務部門における登竜門を何にすべきなのか?契約書の作成・審査に限って言えば、おそらく、NDAよりも難易度の高い、非定型的な契約書を通じてスキルを身に着けていくしかない気がします。

機械学習やAIが人間の「働き方」を変え、「仕事」を奪っていくと言われることが多いですが、企業法務においても同じことが言えると思います。機械学習やAI(リーガルテック)の登場により企業法務の人間に求められる仕事のハードルが高まっていく中、新人をどう教育していくか?このような問題・悩みが深まっていくのは確かでしょう。

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