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#84 「岡山電気軌道事件」岡山地裁(再掲)

2005年4月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第84号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【岡山電気軌道(以下、O社)事件・岡山地裁判決】(1991年12月17日)

▽ <主な争点>
従業員控え室への盗聴器設置/始末書の提出拒否を理由とする減給処分

1.事件の概要は?

本件は、従業員控室に「盗聴器」が仕掛けられた形跡があることを解明するため、夜間Xらが主任宅を訪問したことに対し、O社が始末書の提出を求めたが、Xらは提出を拒否した。これを理由にO社から懲戒処分(減給)に付されたXらが同処分の無効を前提に減給分の支払い等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<O社およびXらについて>

★ O社は電車およびバスによる旅客運送事業等を目的とする会社である。

★ XらはいずれもO社の従業員である。またO社には労働組合として、私鉄中国地方労働組合O社支部(以下「支部」という)があり、Xらはいずれも支部の組合員である。

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<従業員控え室で盗聴器が発見された経緯等について>

▼ 平成元年7月3日、XらがO社電車部H営業所の従業員控室(以下「本件控室」という)で休憩していたところ、天井に直径約2ミリの穴が20個ほど開いており、穴の裏側に集音機装置のような器具があるのを発見した。

▼ Xらは上記器具が「盗聴器」ではないかと考え、支部に連絡したところ、「O社の責任者の立会いのもとで天井を開けてみるように」との指示があったので、H営業所の責任者であるA所長代理を探したが不在であった。

▼ そこで、XらはB教育係主任に立会いを求め、天井を開けるよう要求したが、B主任は「自分は責任者ではないから」と拒否したので、電車部長であるC常務にも立会いを求めたものの、C常務は「A所長代理に言ってくれ」と立ち会わなかった。

▼ XらはB主任に対し、翌日A所長代理立会いのもとで天井を開けてみるまで現状のままにしておくように申し入れて、帰宅した。

▼ 翌4日朝、Xらが出勤したところ、本件控室の天井裏にあった上記器具がなくなっていた。そこで、XらがB主任に説明を求めたが、同主任は「自分は知らない」と述べるだけであった。

▼ 翌5日、XらはA所長代理およびB主任に対し、盗聴器が設置されていたか否か問い質したが、A所長代理らは前日に天井裏の器具が撤去された経過について何ら明らかにしようとしなかった。

▼ 翌6日夜、Xらは職場集会を開き、盗聴器問題について討論したが、B主任の態度が曖昧であったので、同主任の自宅を訪れて説明を求めることにした。

▼ Xをはじめ13名の組合員は、同日21時半頃、B主任の自宅を訪れ、玄関先で約30分間、盗聴器のことなどについて話し合いをしたが、同主任は「自分は知らない」などと答えるだけであった。

▼ さらに、XらはB主任が「このことはD営業係主任も知っている」などと発言したので、同日22時10分頃、D主任の自宅を訪れ、約15分間にわたり、同主任とおおむね平穏に話し合いを行った。

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<本件減給処分、就業規則の定め等について>

▼ 翌7日、O社はXら13名の組合員に対し、「B主任およびD主任の自宅に押しかけた行為が就業規則第6条の規定に違反している」として、始末書を提出するように通告した。これに対し、Xらは「盗聴器問題の解明を求める」などとして、始末書の提出を拒否した。

▼ 翌8日、支部の役員とC常務との間で盗聴器問題について協議が行われた。その際、C常務は「会社の設備に取り付けるのは自由だ」、「すぐ撤去したから実害はなかった」、「(目的は)情報収集であろう」などと、暗にO社の承認のもとで労働組合に関する情報収集のため盗聴器が設置されていたことを認める発言をした。

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