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#85 「オープンタイドジャパン事件」東京地裁(再掲)

2005年4月27日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第85号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【オープンタイドジャパン(以下、O社)事件・東京地裁判決】(2002年8月9日)

▽ <主な争点>
試用期間中の本採用拒否

1.事件の概要は?

本件は、O社に部長職として採用されたXが試用期間中(a)業務遂行の速やかさに欠け、O社の事業運営方針に適合しない、(b)O社代表者の業務上の指揮命令に従わない、(c)経歴書記載の「経験」および「実績」がO社の期待する水準に達していない、(d)業務運営上必須とされる語学力がO社の期待する水準に達していないこと等を理由として、O社が本採用を拒否し、この効力が争われたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<O社について>

★ O社は、韓国所在のサムスングループに属し、E社を親会社として、平成12年9月に設立された会社であり、日本企業に対し、インターネットに関するサービスを提供する事業、韓国ベンチャー企業の日本市場進出を支援する事業(ブリッジング)、韓国ベンチャー企業の製品(ソリューション等)の日本企業への販売事業等を行っていた。

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<Xが本採用を拒否されるに至った経緯等について>

▼ X(当時44歳)は、人材紹介会社からO社を紹介され、採用面接を経て、12年11月、O社から採用決定通知書を受領した。同通知書には「12年12月1日付で事業開発部長として採用する、報酬は年俸1300万円とする」旨が記載されていた。

▼ Xは同月、O社から交付された誓約書に署名・押印して、O社に提出した。この誓約書には社員としての遵守事項が記載され、6項には「試用期間中、本人の実務修習状況と素質を勘案して、会社が辞退を勧告した場合は、無条件に即時辞退すること」と記載されていた。

▼ O社はXに対し、13年1月24日、解雇する旨を口頭で告知した(以下「本件解約告知」という)。

▼ O社がXに送付した同月26日付の通知書には、「O社は12年12月1日、Xを事業開発部長として、3ヵ月の試用期間を付して採用したが、O社代表者がXの業務適格状況を観察した結果、O社の業務運営方針には適合しないと判断せざるを得ないので、本書面をもって本採用拒否を通知する」旨記載されていた。

★ 同通知書に記載された本採用拒否の理由は、次の通りである。

(a)業務遂行の速やかさに欠け、O社の今後の事業運営の方針に適合しないと判断されること(具体的には、韓国企業への対応の遅れから、不信感を招いていること。月間の販売目標について、全く見通しが立っていないこと等)

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