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#293 「ライオン交通事件」東京地裁(再掲)

2011年9月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第293号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ライオン交通(以下、L社)事件・東京地裁判決】(2011年3月30日)

▽ <主な争点>
退職の強要、誤った自動退職の扱い等

1.事件の概要は?

本件は、タクシー乗務員であったXが乗務中に追突事故に遭遇してうつ状態になったが、L社から退職を強要され、さらに誤った自動退職の扱いを受けて多大な精神的損害を被ったなどと主張して、労働契約上の地位確認と不法行為に基づき、慰謝料等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<L社およびXについて>

★ L社は、タクシー会社であり、X(昭和26年生)は、平成18年8月、同社と労働契約(以下「本件労働契約」という)を締結して、タクシー乗務員として勤務していた者である。

★ Xは原則として週5日、月22日勤務であり、19年6月から8月までに月平均約44万円の給与を受給した。

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<本件退職扱いに至った経緯等について>

▼ Xは20年8月、渋谷区内で乗務中、後続車による追突事故に遭遇して(以下「1回目の事故」という)、「腰椎捻挫、全治2週間の見込み」という診断を受けた。なお、1回目の事故は車両のテールライトの交換をした程度の軽微なものであった。

▼ Xは1回目の事故後、L社による診断書の追加提出等の求めに応じないまま、21年1月末頃まで5ヵ月間以上欠勤し、その後ペースを落として勤務に復帰した。

▼ Xは同年3月、墨田区内で乗務中、後続車による追突事故に遭遇し(以下「2回目の事故」という)、「頸椎、腰椎捻挫、全治3週間の見込み」という診断を受けた。なお、2回目の事故の物損はテールレンズの破損、後部バンパーのへこみであった。

▼ Xは2回目の事故後、L社からの診断書提出の求めに応じないまま、同年4月末まで欠勤して、5月から月に数日ないし11日の割合で勤務に復帰したが、同年9月20日以降再び欠勤してその後乗務しなかった。

▼ Xは同年10月、「うつ状態、今後約3ヵ月の自宅療養の必要性を認める」という診断を受けて、L社渉外総務部長のAに診断書を見せて休業を希望した。しかし、A部長はこれを受け容れず、Xに対し退職願の雛型を交付して退職勧奨をした(以下「本件退職勧奨」という)。

▼ L社は同年11月、Xに対し、「自動退職について」と題する書面を交付して、「Xは同年9月20日から欠勤で休業しているので、就業規則25条1項3号により同年10月21日から私事休職になった。私事休職期間は同規則26条1項3号のとおり1ヵ月であるから、それまでに復職できなければ、同規則35条4項により同年11月21日をもって自動退職になる」という趣旨の通知をした(以下「本件退職扱い」という)。

▼ XはL社事務所ビルの4階に入寮していたが、22年2月、A部長の説得に応じて退寮し、「XがL社を21年11月21日、自己都合により退職した」という趣旨の記載のある離職票に記名押印をした(以下「本件離職票」という)。

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<L社の就業規則について>

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