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【弁護士要チェック!】 裁判手続きIT化に関する動きまとめ

こんにちは!
弁護士の方々の『生の声』を第一に考え、法律事務所に最適なマーケティングソリューションを提供するLegAlSuccess(リーガルサクセス)の松島です。

令和4年5月18日、民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)が成立しました。
数ある改正内容の中には、裁判手続きのIT化に関する項目も多く含まれており、法律事務所側でも変化への適応が求められています。

そんな日本の裁判手続きIT化に関する動きを見ていきましょう。

日本の裁判手続きIT化の現状

まずは、日本の裁判手続きIT化の現状を客観的に見てみましょう。

平成29年10月30日 内閣官房 日本経済再生総合事務局「裁判手続等のIT化について」

先進国を筆頭に、海外ではオンラインによる訴えの提起、準備書面のオンライン提出、さらにはインターネット裁判所の設立など、裁判手続きのIT化が着々と進んでいる印象です。

そんな中、世界銀行の”Doing Business” 2017年版では特に「裁判の自動化」の項目で日本に厳しい評価が示され、日本の裁判IT化の遅れが指摘されています。

目指すべき【3つのe】が示される

日本の裁判IT化を取り巻く厳しい現状の中、2017年に「裁判手続等のIT化検討会」が発足。日本の裁判IT化課題に対して、大きな指針が示されることになります。

「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて―(平成30年3月30日 裁判手続等のIT化検討会)」によると、企業顧客側から出たIT化のニーズとして、Web会議システムの普及による、裁判所出頭に係る時間的・経済的負担の軽減や、訴訟記録の電子化による文書保管コストの軽減などが求められているとされています。
弁護士側としても、これらに加え、期日出頭の負担軽減などが期待されます。
消費者側にも、IT化による全体的な利便性向上の他、本人訴訟における負担軽減などが期待され、上記の理由から裁判手続のIT化は推進されるべきと結論づけられています。

そして具体的にどのようにIT化を進めるのかという点において、本資料には「3つのeの実現」が掲げられています。

裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて―(平成30年3月30日 裁判手続等のIT化検討会)図2

本資料ではこの3つのeを、実現可能なものから段階的に実施していく必要性が示され、全体のプロセスのイメージとして下図のようなコンセプトが示されました。

裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて―(平成30年3月30日 裁判手続等のIT化検討会)図3

本資料では、フェーズ1の現実的な実現時期として2019年度中に試行による成果が見られる可能性があるとし、フェーズ2においても2022年度ごろ開始を目指すことが望まれるとしています。

特にフェーズ2・3に関しては、民事基本法の改正等が必要ですから、一定のハードルがあったと言えるでしょう。
そしてこの度、そのフェーズ2・3に関する項目が盛り込まれた改正法案がついに成立しました。

民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)が成立

1. オンライン提出等に関する改正

改正前の法(以下、現行法)では、訴え提起等の申立てなどのうち、一部の手続きのみオンラインですることができました(現行法132条の10第1項)が、今回の改正(以下、新法)では、民事訴訟におけるすべての手続きが対象となり、全ての裁判所に対してインターネットを利用した申立てができることになりました。
手数料に関しても、Pay-easyによる納付が可能になると想定されています。

また、特筆すべきは、新法では弁護士など、委任を受けた訴訟代理人は、申立てをする際にインターネットを利用すること、そして、送達を受ける際にもインターネット利用の届出をすることを義務付けている点(新法132条の11第1項)でしょう。

義務化に関しても議論が行われたようですが、結果的には

  • 一方の当事者のみのインターネット利用では、インターネット利用の恩恵を十分に享受できないため

  • アナログとデジタルの混在によって事務的な摩擦が生じるのを防ぐため

  • 長期的展望を考えると、義務化が望ましいため

などの理由から、新法では義務化の方向で決定するに至ったようです。

2. ウェブ会議による参加に関する改正

弁論準備手続における電話会議利用

現行法では、当事者が遠隔地に住んでいるなど、裁判所が相当と認めた場合において、当事者の一方が物理的に出頭していなければウェブ会議を利用することができませんでした(現行法170条3項)が、新法では当事者が遠隔地に住んでいなくても、裁判所が相当と認める場合に、双方共に裁判所に出頭することなくウェブ会議を利用することができるとしています(新法170条3項)。

口頭弁論における電話会議利用

現行法では、必ず双方が裁判所に出頭する必要がありました(現行法87条1項)が、新法では、裁判所が相当と認めた場合に、ウェブ会議によって口頭弁論の期日における手続きを行うことができることになります(新法87条の2第1項)。

その他、証人尋問においても、ウェブ会議ツールを利用できる範囲が拡大されます(新法204条)。

3. 訴訟記録の電子化に関する改正

現行法においては、裁判所に提出された書面は、紙媒体で提出されたかインターネットを利用して提出されたかにかかわらず、紙媒体で保管することとなっていました(現行法132条の10第1項)が、新法では、原則電子データで保存すること(新法132条の12、同13)とされています。従来は全てが書面化されていたところが、急に、全てを電子化することとなったわけですから、これは大きな変化でしょう。

また、電子化された訴訟記録の閲覧においても大きな変更があります。
現行法では、訴訟記録の閲覧は裁判所内でしかできませんでした(現行法91条1項)が、新法では、当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所外での端末(たとえば自宅など)でもインターネット経由で訴訟記録を閲覧することができるようになります(新法91条の2第2項、第3項)。

今後の展望

今回の法改正によって、前述の「3つのe」はほぼ実現されたと言ってもいいでしょう。

ただ、インターネットでの裁判所への書面提出システムであるmintsにも、UI、UXなどの課題は依然として残り、今後の改善が望まれるところです。

また、電子化された判決の記録について、学術面での利用・活用という観点から、全国の民事訴訟の判決をデータベース化して一括管理し、閲覧できるようにしようという動きも見られます。
こちらについては、2025年度までの導入を目指し、2022年10月に「民事判決情報データベース化検討会」が設置されました。

裁判所に行かなくても、インターネット上で全国の判決記録が見られる時代も近いかもしれませんね。
今後の日本の法システムのIT化に期待しましょう!

まとめ

今回は、弁護士必見の裁判手続きIT化実現までの流れをまとめました。
使い慣れた従来のシステムからの移行には一定の労力が求められますが、IT化によって業務を効率化すれば可処分時間が圧倒的に増え、移行にかかった労力以上の効果があります

ぜひ、あなたの法律事務所もこれを機会に業務のIT化を進めてみてはいかがでしょうか?

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