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パリ最古の映画館で「PERFECT DAYS」を観た夜。

今日の散歩は18区

最近の休日の過ごし方というと、パリをひたすら歩くこと。
「今日はここら辺を歩こう」とざっくりと場所を決めてその周辺をただただ
散歩する。

最近のパリは天気が変わりやすく、曇りだと思ったら急に晴れたり。晴れるとやっぱり外に行って太陽を浴びたくなる。

パートナーとの定番フレーズも「今日はどこを散歩する?」「ちょっと散歩しない?」など。

話は少し逸れるが、フランスには「移動する」ことを表す言葉が多いと以前本*で読んだことがある。歩く速度や目的によって使い分けられているようで、例えば、「Marcher(歩く)」「déambuler(ぶらつく)」「Se promener(散歩する)」「Flâner(目的もなくぶらぶら歩く)」などなど。
確かにフランス人は散歩をするのが好きな人が多い気がする。
※【歩き旅の愉しみ:風景との対話、自己との対話】

さてこの日はモンマルトルのある18区らへんを散歩することになった。
友人が最近ここら辺に引っ越したこと、オシャレなお店が増えているらしいと聞いたためであった。
それにちょうど観ておきたい映画があった。そう「PERFECT DAYS」。
映画好きの妹が勧めてくれて、私自身東京で暮らしていた日々を恋しく思っていたので東京のありふれた小さな日常を観られるかなと期待していた。

モンマルトル付近でPERFECT DAYSを上映している映画館を探してみると、見つけたのが「STUDIO 28」という老舗の映画館。
パリ最古の映画館と言われていて1928年にオープンしたそうだ。名前の28も「1928年」から来ている。
ジャン・コクトーが内装のデザインを手掛けたそう。

しかも、ここはあのアメリにも登場した映画館である。
アメリが映画館の中で、
「暗闇の中で振り返って、映画を観ている人たちの顔を観るのが好き」と、言っているシーンに出てくる映画館だ。

Amélie (2001)

現在は午後の遅い時間帯からのみ上映しており、1日2~4本ずつの上映。
小さな上映室が1つだけある。
映画館の中にはバー兼カフェもあり、パリにしては手ごろな価格で飲み物を頼める。
バーにいたおじさんが、「このあと映画も見るの?」とフレンドリーに声をかけてくれた。

映画が始まる10分前くらいから、上映室の前から列が出来始めた。気づいたらお店の外にまで列が出来ており驚いた。早めに映画館に到着していた私たちはカフェで吞気にお茶をしていたため、結構列の後ろの方に並ばなければならなかった。

バーのおじさんが入場の確認係も担当しているようで、私たちの顔を見るなりチケットも確認せず、「あー君たち、入って入って(Allez-y Allez-y!)」と言ってすぐに中に入れた。

「PERFECT DAYS」を鑑賞して。

「PERFECT DAYS」の舞台が、押上周辺だなんて思わなかった!

私は最後に東京に住んでいた頃(といってもつい1年程前)、スカイツリーの周辺に住んでいて、スクリーンに出てくる"東京"はまさに私が恋しく思っていた東京の風景だった。
窓からスカイツリーが見える部屋に住んでいたので、スカイツリーが映し出された時、そして主人公の「平山」が嬉しそうにスカイツリーを見上げた時、なんとも言えない気持ちに。少しうるっとすらした。

私はランドマークが好きである。スカイツリーも、パリのエッフェル塔も。
両方とも上まで昇ったことはないけど、遠くからその姿を見るのが好きだった。どんな時もどっしりと"そこにいる"安心感がある。
東京に住んでいたころ、窓から見るスカイツリーを見ながら「私が見る景色はもうすぐエッフェル塔に変わるんだな」などと考えていた。

親友も近くに住んでいて、自転車でよく友達の家に遊びに行った。
隅田川沿いをずっと話しながら歩いたり、昔ながらの銭湯に行ったり、公園に行ったり、流星群が来る夜は芝生の上に寝っ転がって流れ星を見たり。本当に懐かしい気持ちになった。


毎日同じように見える景色も、同じものは1つも無くて、日々少しずつ違っている。木漏れ日もスカイツリーも顔を合わせる人も、そして自分自身も。

主人公が毎日の愛しい風景である木漏れ日を、いつも違う表情をするいつも温かい木漏れ日を、カメラに収めている姿が印象的だった。
もう一度は来ない風景を、どうにかフィルムに収めることで、その小さな世界に宝箱のように閉じ込めておこうとしているようだった。

それから映画で使われていた音楽。1960~70年代の音楽もすごくよかった。
さすが、Sportifyで誰かがプレイリストにまとめてくれていた。

Nina Simoneの「Feeling Good」が流れるラストシーン。。音楽といい平山の表情といい、美しかった、感動した!
顔に反射する日の出の暖かさまで伝わるようだった。


まさかパリの映画館で東京の下町に浸れるなんて思わなかった。

スクリーンの中の美しい東京を抱えたまま映画館を出る。
帰り道も雨。上映室から出ると次の映画を見るために、また行列が出来ていた。
優しい雨の中、舗道がオレンジ色の街灯の明かりに照らされキラキラとしていた。家に帰るまで映画の中にいるような不思議な感覚。
好い土曜日の夜だった。

パリ最古の映画館。STUDIO 28

最後まで読んでいただきありがとうございます。
「平山」はトイレ掃除の仕事をしている役で、映画に出てくるトイレはどれも最新のとても綺麗で清潔なトイレばかり!日本のトイレ最高!これを機にフランスでも日本のトイレが増えたらいいなと密かに思っています。
ちなみにstudio 28のトイレはそんなに綺麗ではなかったです 笑。

Youtubeも細々とやっています。
パリ生活を撮ったゆるめのVlogをあげているのでもし興味があれば是非見ていただけると嬉しいです。

▼最新のパリVlogはこちら


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