新釈 走れメロス
*ネタバレあります
森見登美彦さんの「新釈 走れメロス」を読みました
この本は森見さんが有名な文学作品、山月記、藪の中、走れメロス、桜の森の満開の下、百物語を拗らせすぎた青年を主人公として描き直したものです
文学作品が大学生の阿呆な青春ストーリーになっているので、読んでて面白かったです
山月記
中島敦さんのの山月記
11浪している大学生、斎藤秀太郎はプライドが高くて、自ら社会の歯車になり普通の会社に勤めていく同期たちを馬鹿にしていた
「俺は偉大な小説家になる」とずっと威張っていたが、かつての仲間が立派になっていたり、結婚していたりして、自分がだんだん惨めに思えてくる
何もかも嫌になった斎藤秀太郎は山の中を彷徨っていると、いつの間にか天狗になってしまった
藪の中
芥川龍之介さんの藪の中
映画を密室3人でとり、出演者は監督の恋人とその元恋人
自分の恋人とその元恋人の恋愛映画をとり、しかもキスシーンまでとる
それをとった監督には
変態など、ドMなど非難殺到
そして、その映画を撮った真意がそれぞれの登場人物の視点から語られます
でも、全員の話を聞いてみると食い違ってる部分が多々ある
だから、真相はわからない
真相は藪の中という言葉も芥川龍之介さんの「藪の中」になぞらえてできた言葉だそうです
でも、人間は自分の都合のいいように物事を解釈してしまう節があるし、一つの場面を見ても、それを見て思う感想は人それぞれ
今、ドラマでもやってる「ミステリという勿れ」という漫画でいってたことなんですけど
真実というのは本当は一つじゃなくて、人の数だけあって、みんなが本当のことを言ってても、誰かが嘘をついてるわけじゃなくて、その人なりの真実がある
藪の中ってそういう小説だと思ってます
走れメロス
太宰治さんの走れメロス
廃部にされそうになっている詭弁論部を救うために芽野は図書館警察長官に歯向かう
そこで詭弁論部を救いたければ、大学のグラウンドに設置してあるステージ上でブリーフ一丁で踊れと言われる
走れメロスと同じように、芽野は親友を人質にし、姉の結婚式に行くと言いますが
それは嘘で、芽野には姉もいないし、思いっきり親友を見捨てます
めちゃくちゃ変な友情をえがいたお話
象の尻って夜は短し歩けよ乙女でも出てきてたよね
桜の森の満開の下
坂口安吾さんの桜の森の満開の下
人のいない桜が怖い主人公
ある夜、桜の下を歩いていると、一人の女性がぐったりと様子がよくなさそうに座ってました
助けを呼ぼうとしましたが、ほっといてと言われます
困った主人公はひとまず家に連れ帰り、様子を見ます
それから成り行きでその女性と一緒に住むようになりました
男は小説を書いていましたが、全く売れません
それで、その女が小説をこういうふうにしたらいいんじゃないとアドバイスをしてくれ、その男は売れっ子作家になります
ですが、男はその女性に人生の主導権を握られたように、女の言いなりになっていくというお話です
僕、星野源さんの「桜の森」っていう歌が好きなんですけど、これって坂口安吾さんの桜の森の下でをイメージして作られた曲なんじゃないかな
これはライブバージョンなんですけど
性癖にめちゃくちゃぶっ刺さりそうなイントロしてるから是非聞いてみてください
山月記に出てきた斎藤秀太郎がその後のお話にもちょくちょく出てきててよかった
これ読むと原作も読んでみたくなるし、夜は短し歩けよ乙女も四畳半神話体系も読みたくなってきた
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