lemonnight77

一日過ぎても、二日過ぎても、三日過ぎても、暴君は来なかった。ついに暗殺者は思い詰めた顔…

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一日過ぎても、二日過ぎても、三日過ぎても、暴君は来なかった。ついに暗殺者は思い詰めた顔で仲間にこう言った

最近の記事

掌編練習②

外部リンク:小説お題ジェネレーター こちらのサイトさまを利用して書いた掌編を数編まとめてみました。 ① No.2424視界 No.4460踊り場 No.1566きりたんぽ  私たちが階段から降りていく。階段を一段一段とちゃんと踏み込んで、体重を任せていいと確認してからもう一方の足を踏み出す。そのたびに登山靴のしっかりとしたアウトソールが階段に埋もれたような感触がする。  私が声をかけた。静まり返る階段で私の声が響き渡って、こだままでした。 「上から見たときはそんなに

    • 掌編練習

      外部リンク:小説お題ジェネレーター こちらのサイトさまを利用して書いた掌編を数編まとめてみました。 めちゃめちゃな単語が平然と出てくるから楽しい。みんなもやってみて。 ① No.4613カラーコンタクト No.3891夢オチ No.82古い  そのオレンジ色のカラーコンタクトを人差し指と親指でつかみ上げて、つけずにそのまま持ち上げて太陽を見る。するとカラーコンタクト越しに降り注いで朝の陽ざしが黄昏の残り火に早変わり。そしてこのまま見つめているとカラコンの視界の中だけが夜

      • 【短編小説】千年帆走②

        ①はこちら。  かくして冠の獅子ことピラミッドは、あっけなく海の底に沈んだ。死せる王たちの墓守とも呼ばれたタテモノノカミの一柱にしては、あっけない最期ではあったけど、タテモノノカミの死は往々にしてそんなものだ。  金字塔と一体化した頭部が跡形もなく磨り潰されて、ライオンに模した四つの爪がもがくが、異常な自己増殖を千年間繰り返してきた鋼の大蛇の躯体の前ではその必死さも虚しい。ライオンが力なく、前伏せ体勢で海に倒れこんだ。墓守の大ライオンが千年も渡って守ってきた墓の中身を、海

        • 【ニンジャスレイヤー二次創作小説】アフターオール・オスモウ・イズ・ジャスト・ア……

          1 サイクロン・ダンペイ  サイクロン・ベヤのダンペイはケツを蹴り飛ばされて、路地裏に転がり込んだ。晴れてオヤブンなった以来、この数年ではドヒョウよりこちらの泥のほうがよく口にした。  サイクロン・ベヤは今日も今日とて負けた。ローンを組んで、腎臓を売りさばいて、試合権ごとにほかのベヤからスカウトしてきた有望枠テツノビッグテールは、度重なるサイバネ手術や薬物改造により、身長、体幅とも四メートルの異常体格を手に入れた巨大獣であった。  所詮スモトリというのは体格勝負。さらに

        掌編練習②

          【短編小説】千年帆走①

          1 『金字の冠を戴く獅子』 居住性:★★☆☆☆  住めば都という諺を身をもって実行することにおいては、自分の右を出るものはそういない。そんな彼女から見ても、ピラミッド暮らしには幾つかの厳しい欠点がある。  例えば採光性が皆無で、時間感覚が曖昧になることとか。代わり映えしない石の天井を睨みつくことから朝が始まり、代わり映えしない石の寝床に横たわりたくなったらそこからは夜。そんな暮らしを強いられることになる。  彼女は幾星霜もそう過ごしてきたが、いまだに慣れることがない。聞く

          【短編小説】千年帆走①

          【短編小説】水面に触れてべからず(後編)

          (前編へ) ◇  優秀な最新世代アンドロイド刑事〈ダニエル〉は素早く状況判断を行った。 「〈ミスティ〉姉さん、僕は弟機の〈ダニエル〉。いまあなたおよびあなたの左隣りにいるイレギュラー機〈モアレ〉を銃で狙い定めています。あなたは今、その〈モアレ〉の影響下に置かれているのですか? いま行っている作画作業は彼女の指示、または干渉によるものの可能性が非常に高い。事態を認識できているなら、ただちに作業を止めてください」  フレームだけなら型落ちモデルだが、アンドロイド描き〈ミス

          【短編小説】水面に触れてべからず(後編)

          【短編小説】水面に触れてべからず(前編)

          1 「祖父に仕事のことを訊ねると、いつも「オレは迷宮の番人だよ」と微笑まれる。そして横にいる両親は複雑な顔をして、話題をそらしていく。当たり前だけど祖父は別にファンタジー世界の住人でなければ、牛頭の化け物でもないが、やはり伝説の中にはいた」 「彼は中央人工知能犯罪予防対策部の刑事だった。いまでこそAI管理時代の黎明期を縁の下で支えた名も知らぬ功労者だと再評価されてるが、当時では彼女の父親にそう自己紹介したら「税金ドロボウめ!」と怒鳴られては塩まで撒かれるほどのハズレくじ部

          【短編小説】水面に触れてべからず(前編)

          【短編小説】貓咪(マオミー)・エクソダス

           我々にはネコが要る。  されどネコは?  街からネコがいなくなった。これはどういうことだと言うと、ソファをぱりぱりと爪をとぎ、注意してもどこ吹く風なあの尊大な毛むくじゃらたちも、本棚の上で傲然と寝そべて、下界を見下ろしては欠伸をかくあの気だるげな殿様方も、一秒前までは手に頭を擦りつけて甘えてるのに、一瞬後は牙を剝いて甘噛みをするあの気まぐれながらも、愛されて当然かのように振る舞う小悪魔どもが、みんな消えてなくなったということだ。  人々が事態の深刻さを真に理解するには

          【短編小説】貓咪(マオミー)・エクソダス

          【二次創作小説】ヒップ・プッシュ・ニンジャ・ダウン!

          ※ニンジャスレイヤーの二次創作小説です。 1 『アットウマルはシコをしたい』 「ンフフ」  アットウマルのでかい影にすっぽり覆われて、女は優しく笑いかけた。 「シないの? アカチャン……」  汚れた畳に一切気にすることなく、艶やかに微笑む女。今朝、ノック音を聞いて扉を開けると、いつの間にかネコめいたアットウマルの部屋に入り込み、いつの間にかネコめいてアットウマルの前に優雅に寝転がる。夢か幻か高額なオイランドロイドデリバリーか、そんな信じられないぐらいに美しい女。

          【二次創作小説】ヒップ・プッシュ・ニンジャ・ダウン!

          【短編小説】マグロに乗って夏へ

          1 『マグロになってどこかへ 〈マナさん、お時間ですよ。マグロにならないようにご質問を〉  艦長の三回目の呼びかけで、ボクは自分がマグロではなく、人間だったと思い出した。あー、とか、うー、とか、マグロにはない声帯でなんか発音をしつつ、投射された意識を手繰り寄せるように、ボクはなんとか艦長に質問を投げてみる。 「どれくらい泳いだの?」 〈距離についてですか? それとも時間についてですか? 思考の滞りは人間性の喪失に繋がりかねないので、お質問はできるだけ具体的にかつ丁寧に

          【短編小説】マグロに乗って夏へ

          【短篇小說】神首流轉(中文)

          ※身内用の自家製翻訳版。母語での文章力が駄目になりすぎてめちゃめちゃ大変だった。 1  人云萬物流轉、無物常住。常人在感嘆人生苦短之餘,自然而然會產生這類自我憐憫的哲學。如今,以仁慈而聞名萬國的大蛇神橫躺在我腳下、今後將不再蜿蜒蛇行;有翼神頹萎的屍體倒在西方不遠處、再也不會瀅瀅展翅。曾經鬱鬱蒼蒼的綠地如今只聞風沙咆哮。  一切都變了。無可否認。  然而只要我還在此處,這片一望無際的沙漠就永遠是眾神之園。無論善惡,有些事物不會隨波逐流、因風而轉。只會在不變中靜靜腐朽、風

          【短篇小說】神首流轉(中文)

          【短編小説】神首流転(後編)

          (前編はこちら) 4  契約遂行の告げに揺さぶられて、ボクは目覚めを迎えた。頬が床に置かれていることに不満を覚え、ボクは実に自然に手をつき、埃まみれな白衣を纏った上半身を起き上がらせた。八本ではなく、二本しかない細腕に目をやって、一拍遅れにボクが溜息をつく。 「これはこれは。おはようございます、元神様」  わざとらしさを隠そうとしない慇懃無礼な男の声がボクを呼んでるが、ボクはそちらへ一瞥もせず視線を上にやると、現任の天蜘蛛神と目があった。ボクに向けられた馴染み深い爪腕

          【短編小説】神首流転(後編)

          【短編小説】神首流転(前編)

          1  万物流転すと人の子が言うが、それは短い生の中で、自然と生まれた自己憐憫な哲学の一環だ。確かに、現に慈愛深き大蛇神(ダイジャノガミ)はもううねりの蛇行をしないだろう。有翼神(ユウヨクノガミ)の清冽な羽音はもはや聞こえず、鬱蒼としてた緑溢れるこの地は、いまや絶えずに砂嵐だけが咆哮する。何もかも変わり果てているのは否定しようがない。  それでも、この果てのない砂漠は、ボクがいる限り神々の庭であることは不変だ。善にせよ悪にせよ、流れに転ばずにひたすらに風化を待つだけのものは

          【短編小説】神首流転(前編)

          【短編小説】婚約破棄のすゝめ(後編)

          前編はこちら。 中編はこちら。 「何もあの熊女を取って喰おうつもりなどない」手持ち無沙汰なカイがスプーンを指で摘まんで持ち上げて眺めるが、みるみるうちにその銀製のスプーンが黒く染められた。陽の光が彼女を照らして、小柄な姿と不釣り合いな色濃く深く影を落とす。黒山の精霊が、その影の深淵に潜むように思えた。 「ただ一方的にやられるのは気に喰わん。やり返さないワシはワシではなくなる。汝はそうではないのかい」 「僕はね、荒事がイヤですよ。」モーフィルが琥珀色の液体を啜る。音を立て

          【短編小説】婚約破棄のすゝめ(後編)

          【短編小説】婚約破棄のすゝめ(中編)

          前編はこちら。 「ふむ、熟した甘さじゃな。秋めいていた」  指先を舐めて、カイが独りごちる。彼女が部屋中に散らばる精霊魔法の残り香を掻い摘んで味わう。過多装飾なベッドの下で、いつの間にかそこへ潜り込んだ金髪男がひょっこりと頭だけを出して、声をかける。 「……オホン。あの、こちらのお嬢様?」 「風と泉の精霊と言ったところじゃな。よりにもよってこんなヘンテコな人の子を依り代にするとは、精霊の好みというのはまったく分からん」 「あのですね、ここ、いちおう僕の部屋なんですけ

          【短編小説】婚約破棄のすゝめ(中編)

          【短編小説】婚約破棄のすゝめ(前編)

          「ならばここではっきりとさせてもらおうではないか!」  朗々と声を上げ、モーフィル・アイナン・ララティが長机の前に上り詰めた。宴会会場に連れ並ぶ貴族と大臣たちを、そして何よりカイ・シラカンバを彼は睥睨した。  見下すは若き王族。彼の長い金の髪がそよ風に揺れて、尊大にして高貴な表情が雪よりも冷たい。見上げるのは若々しい魔女。とんがり帽子や切り揃えた灰の髪の下、揺らぐロウソクのように頬を震える。 「ただいまより、われモーフィル・アイナン・ララティ三世は、この下賤な女との婚約

          【短編小説】婚約破棄のすゝめ(前編)