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ワクチン接種者の呼気(VOC)に関する研究により、匂いは嗅ぎ分けられるかもしれないことが判明か?ただし、中国の不活化ワクチン。

シェディング関連記事は前回で一旦区切りの予定でしたが、紹介しておきたい論文を見つけたので今回記事にしておきます。それほど新しい論文でもないので既出かもしれませんが。

内容を簡単に説明すると『中国の不活化ワクチン接種者の呼気VOC分析の結果、バイオマーカーに出来る程度にはVOCバランスが変化していた』という感じ。


◆論文引用

該当論文から要旨のみ引用します。
リンクは以下。

Talanta. 2023 Aug 1; 260: 124577.
Published online 2023 Apr 22. doi: 10.1016/j.talanta.2023.124577

ウイルスが誘発する呼気バイオマーカー: COVID-19ワクチン接種者の代謝反応を研究する新たな視点

要旨
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)ワクチンは、人々を感染から守ることができるが、ワクチンによる代謝の作用機序は不明なままである。ここでは、COVID-19ワクチン接種者の呼気検査を行い、防御免疫応答によって誘導される代謝リプログラミングを明らかにした。COVID-19ワクチン接種者と非接種対照者から合計204の呼気サンプルを採取し、包括的二次元ガスクロマトグラフィーおよび飛行時間型質量分析システムにより多数の揮発性有機化合物(VOC)を検出した。その後、12種類のVOCをバイオマーカーとして選択し、肺胞勾配と機械学習ベースの手順を用いてシグネチャーパネルを構築した。シグネチャーパネルは、高い予測性能(AUC、0.9953;精度、94.42%)でワクチン接種者と対照群を区別することができた。これらのバイオマーカーの代謝経路から、宿主と病原体の相互作用により、肝臓、肺、腸における酵素活性と微生物代謝が亢進していることが示され、ワクチンによる代謝調節の主要な作用機序を構成している可能性が示唆された。このように、本研究で得られた知見は、ウイルス感染の迅速かつ非侵襲的なバイオマーカーとしての呼気VOCs測定の可能性を浮き彫りにした。さらに、ブレスオミクスは、生物学的製剤の安全性評価や疾病診断のための代替手段となるようである。

Virus-induced breath biomarkers_ A new perspective to study the metabolic responses of COVID-19 vaccinees - PMC.html
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
[2024.03.08 引用]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10122548/

◆所感

シェディングという観点では『12種類のVOCをバイオマーカーとして選択』『高い予測性能(AUC、0.9953;精度、94.42%)でワクチン接種者と対照群を区別することができた。』あたりが気になりますね。

私は、ワクチン接種により(少なくとも一時的には)特殊なVOCバランスになると推測していますが、中国製不活化ワクチン接種においては、その通りのようです。

◇◇◇

具体的には以下の4つが特に増加が大きかったとされているようです。

  • 6-methyl-5-hepten-2-one [6-MHO]

  • CPTO

  • methanesulfonyl chloride [MsCl]

  • benzothiazole [BTZ]

翻訳すると以下の感じっぽい。
(私はガチプロじゃないので参考程度にどうぞ。)

  • 6-メチル-5-ヘプテン-2-オン [6-MHO]

  • シクロペンタノン

  • メタンスルホニルクロリド [MsCl]

  • ベンゾチアゾール[BTZ]

とはいえ、非接種と比較して減少が大きかったものも多数あったようですので、全体の総合した匂いには上記以外も関係してるかと思います。

◇◇◇

非接種(コントロール)群と比較した場合のVOCについて、以下の図表にまとめられています。

Virus-induced breath biomarkers_ A new perspective to study the metabolic responses of COVID-19 vaccinees - PMC.html
[2024.03.08 引用]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10122548/

◇◇◇

さて、シェディング的に気になるのは期間の観点。

論文中で呼気サンプル採取は『接種後4-8週間以内に実施されました』とあるのみで、経時変化に関するデータはないようです。どれくらい継続したのか気になるんですけどね。


◆おわりに

ということで、ワクチン接種後の呼気のVOCバランスはバイオマーカーになりうる程度には変化しているようです。中国製不活化ワクチンですが。

『ワクチンの匂いが嗅ぎ分けられる』(長期的に)ということについて、正直半信半疑なところがありましたが、実際に特有の匂いにはなっていそうです。

日本で接種されたmRNAワクチン等についてはまだこのような情報はなさそうですが、今回の論文は『ワクチン接種者が特有の匂いになる』というエビデンスとしては悪くないのではないかと思います。

一般人にとって嗅ぎ分けられるほどの変化なのか、極微量でも健康被害に繋がるようなVOCが増加しているのか、については謎なので、有識者の見解が知りたいところですね。


[2024.03.09 追記]
記事中のリンクに誤りがあった為、修正しました。

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