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【翻訳前編】コミュニティが創る未来の教育 〜コホート型コースの幕開け〜 (原題//The Future of Education is Community: The Rise of Cohort-Based Courses

(元の投稿は2021年6月9日にMediumで行いました。Noteに引っ越してきました。)

皆さんどうも、シリコンバレーでEdtech事業を起業中の真田です。

最近、シリコンバレーのスタートアップ界隈では、Cohort-Based Courses (CBCs / コホート型コース)がホットトピックになっています。2021年6月9日現在、「Cohort-Based Courses」を含むキーワードでGoogle検索すると、たいてい上位に引っかかってくる、Tiago Forte氏が執筆したブログ “The Future of Education is Community: The Rise of Cohort-Based Courses” を、Deep Lの力を借りながら翻訳してみました。一部翻訳者の意訳が入りますこと、あらかじめご容赦ください。(それにしてもDeepL、翻訳の精度が相変わらず高くて脱帽です)

この手の記事の翻訳は実際やってみると、なかなか大変で、今回は、前編をまずはリリースします。近々に後編もリリースしたいと思いますので、お楽しみに!

原題投稿日:2021年3月8日
筆者:Tiago Forte

今、私たちはオンライン教育の第4の波の真っ只中にいます。
CBC(コホート型コース/Cohort-Based Courses)と呼ばれるこのコースは、インターネットと共に生まれた全く新しい学習形態です。これは、インターネットが持つ、スケーラビリティと同期性がもたらした素晴らしい産物と言えるでしょう。
この第4波の到来のマグニチュードをご理解いただくために、ここに至るまでの3つの波を説明したいと思います。

第1の波:MOOCs(ムークス)

現代のオンライン教育は、2008年頃、MOOCs(ムークス/Massive Open Online Courses)の登場によってその歴史の一歩を踏み出しました。

ハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)がEdX(エデックス)を通して、あるいはスタンフォード大学がUdacity(ユダシティ)を通して、オフラインで行われていた授業をオンラインで行ったことが全ての始まりでした。彼らが克服しなければならなかった最大の課題は、「いかにして教育コンテンツをオンライン化するか」であり、その解決策として、彼らは従来の教材をデジタル化してインターネットで配信するに至りました。

MOOCは鮮烈なメディアデビューを果たしました。TIME誌は2012年を「MOOC元年」と呼び、セバスチャン・スランが教え、16万人の学生を動員したMOOC「Introduction to Artificial Intelligence(人工知能入門)」をその代表例として紹介しました。

MOOCsの目的は、大学レベルの教育を受けられない学生を対象とする点にありました。彼らはきっと、MOOCが世界中の人々にとって初めてのウェブ上で学ぶ機会になると考えたのでしょう。

しかし、2013年にはすでにMOOCsの初期の盛り上がりはすでに薄れていました。MOOCsは、学習機会を限りなく多くの人に行き渡らせるという至上命題にこたえる特効薬ではないことが明らかになり始めたのです。すなわち、MOOCsを修了する傾向にあるのは、大学の学位を本来であれば取れなかった人たちではなく、すでに大学の学位を取得している高学歴の人たちであることが浮かび上がったのです。さらに、修了率(コース完了率)が非常に低いという問題点も明らかになりました。

MITの2人の研究者が調査を行ったところ、2013年から2018年にかけて、MOOCsの修了率は着実に低下し、2018年にはなんと平均3%であることが分かりました。こうした調査結果に直面し、当初のパイオニアたちは、MOOCを教育機関のプログラムのオンライン化の手段として見なすようになりました。教育機会を民主化するためには、単に教育コンテンツをオンラインで自由に利用できるようにするだけでは不十分なのだろうという実態が、この頃誰もが知るところとなりました。

第2の波:マーケットプレイス

2010年頃から、第2の波であるマーケットプレイスが形成され始めました。
Udemy(ユーデミー)やSkillshare(スキルシェア)といった営利企業がこの波の主導者でした。彼らの関心事は、オンラインコースをどう使いこなせば良い稼ぎになるのかという点にありました。大規模な大学は、無料のオンラインコースを提供する資金力を持っていましたが、当時民間企業が商業化に成功した前例はありませんでした。

そこで、マーケットプレイスの運営者たちは、誰でも好きなコースを作ることができる「場」を提供することにしました。博士号を持った教授でなくとも、配信プラットフォームを自ら構築せずとも、コースを作成して世界中に販売できるようになったのはこれが初めての瞬間でした。

マーケットプレイス上に現れる講師たちは、世界の名だたる大学に所属するネームブランドのある専門家ではなかったために、とにかく露出が必要でした。そのため、マーケットプレイスの運営者は、何千人もの講師のコースを一堂に集め、そこにトラフィックを誘導することで、露出させようとしました。マーケットプレイスは、集客を行う引き換えに、販売額の一部を講師から収納するビジネスモデルを作り上げました。

私は2013年にSkillshareに参加して最初のコースを開設しましたが、始めるのが本当に簡単であることに大変驚きました。更に驚いたのは、他のインストラクターがプログラミング、アート&クラフト、デジタル・イラストレーションなど、自分にとっては当たり前の知識や経験を何千人もの受講生に教え、何十万ドル(数千万円)も稼いでいるのを目の当たりにした時でした。私はこれを教育界に起こった革命と呼びました。誰でも独立して教えることが現実的な職業の選択肢になる。私をそう思われせてくれたのです。
しかし、マーケットプレイスモデルの問題点が表面化するまでに数年もかかりませんでした。これらのプラットフォームの運営者たちは、自社のグロースと営利目標を達成するために、大幅な割引(時には90%以上)を断行するなど、自分たちの思う通りに「市場」を操作し始めました。講師たちは成す術がありませんでした。彼らは価格設定のコントロールを失い、マーケットプレイスが値下げを行うたびに受講生のコミットメントも下がっていく負のスパイラルを傍観しているほかありませんでした。

この第2の波の表舞台に立った役者たちは、自分たちが舞台に上がりたいがために、あまりにも多くのことを犠牲にしていたことに気づき始めました。本来得られたであろう高い利益率、価格やコース設計の自由度、そして最も大きなものとして、受講生との直接的な関係構築を行うに欠かせない、受講生のコンタクト先。これら全てが、マーケットプレイス側に常に握られており、講師たちはその操り人形にならざるを得ませんでした。

トップクラスの講師たちは、増加するロイヤリティの高い受講者を引き連れて、マーケットプレイスを去り始めました。この民族大移動が第3の波、「ツールキット」を生み出すこととなったのです。

第3の波:ツールキット

第2の波の中で躍り出たトップ講師たちは、自前で整えたオンライン環境で教えることにより、まともな稼ぎができるようになっていました。彼らは、自分たちが何も言えないプラットフォームではなく、自分たちのやり方で本格的なビジネスを作る意欲に溢れていました。そのために、販売チャネル、価格設定、顧客との関係を自前でコントロールしたいと考えていました。

Thinkific(シンキフィック)、Kajabi(カジャビ)、Teachable(ティーチャブル)などのツールキットの提供者たちは、2014年頃から、講師がそれを可能にするための主導権を握るようになりました。これらの新しい時代の立役者たちは、オリジナリティに満ちたコンテンツと教える情熱を持ち、さらにはロイヤリティの高い受講希望者を多数抱える講師たちに覇権が移ったことを見逃しませんでした。そこで、講師を下請け業者として高圧的に扱っていたマーケットプレイスとは対照的に、講師を最も重要な顧客として扱う「クリエイターフレンドリー」なアプローチに打って出たのです。

ツールキットは、講師と受講生の間に壁を作るのではなく、すべてのEメールアドレスと決済情報を共有しました。顧客に延々とアップセルを仕掛けるのではなく、各講師が自由にマーケテイング活動をできるようにしました。また、自社開発の決済システムを押し付けるのではなく、月賦払いやPayPalのようなサードパーティなど、決済の柔軟性も担保しました。

ツールキットは、受講料の支払い、受講者の登録管理、動画やその他の教材の配布、受講者とのコミュニケーションなどに必要なインフラを講師に「レンタル」していると言うことができるでしょう。その場しのぎのWordPressのウェブサイトとバグだらけのプラグインを組み合わせてコーディングしたり、トラブルシューティングに足止めを食わず、オンラインコースの立ち上げをわずか数時間でできるのです。オンラインコースを提供するための技術が次々と現れるに連れて、ツールキットは、受講者のユーザー体験の一元管理を可能とし、誰でも「自分の教室」を作れる環境を整備したのです。

この流れから、Leadpages(リードページ)やConvertKit(コンバートキット)といった新たなマーケティングツールが生まれ、講師たちは、より簡単に集客ができるようになりました。ソーシャルメディアがより社会に浸透するにつれ、講師たちは、ついに誰からも邪魔されることなく、受講生とダイレクトに繋がり、自身が運営するオンラインコースを販売していきました。
オンラインクリエイターと呼ばれる人たちの中でも著名な講師たちは、自分たちが提供するサービスを自社ブランドのバーチャルスクールに次々と鞍替えしていきました。パット・フリンやエイミー・ポーターフィールドのようなパイオニアたちは、デジタルコンテンツ(コース、電子書籍、ポッドキャスト、定期購読、イベント、その他各種コンテンツ)を作り、それを自分のファン達に直接販売することで生計を立てるという新たな道を切り開きました。講師たちに、これまでのような単一商品の販売から、百貨店化を遂げ、ロイヤルカスタマーに様々な商品を販売できる時代が訪れました。

私は2015年にTeachableでアカウントを開設し、それまでのマーケットプレイス上で開講していたクラスを私個人の教室であるForte Academy(フォーテアカデミー)に移しました。コピーライティング、基本的なウェブページのデザイン、Eメールマーケティングなど、学ぶべき新しいスキルや習得すべきツールはたくさんありました。それでも、使いやすい既製品のプラットフォームを手に入れたことで、ようやくプロとしての自分のやりたいことを自分でコントロールできるようになったのです。

一方で、2017年頃になると、ツールキットの限界も見えてきました。この第3の波は、大いなる力を与えてくれると同時に、講師に必要以上のものを求めるようになっていました。高度化・複雑化するツールキットの使い方を熟知するのみならず、継続的に顧客を獲得するための高いマーケティングスキルも持ち合わせることが講師には当たり前に期待されるようになりました。あまりにも多くの責任を背負わされた講師は、コースの品質管理や受講生のユーザー体験の最適化にまで気が回らなくなり、本末顛倒の結果に陥ってしまったのです。結果、講師が提供するオンラインコースの品質は低下し、その修了率は、MOOCsと大差ない水準に止まりました。

耳障りの良い謳い文句に釣られて、受講生は勇んで大量のコースを購入しましたが、そこから何も得ることなく、2度とコースに戻ってくることがないという残念な事例が多発しました。自習型のコースは、学習者にあまりにも多くの時間、エネルギー、コミットメントを要求することが分かってきました。レクチャー動画、教材、自己ワーク、クイズなど、数多くのモジュールを一人でこなすだけのモチベーションを維持できる人は、ほとんどいませんでした。

自分のペースで学習が可能であるというオンラインコースの宣伝には、誰も耳を貸さなくなりました。

これを受けて、オンライン学習は再び進化を遂げました。最初の3つの波は、講師が抱えていた問題を解決した点では評価に値します。そして、やっとのことで、スポットライトが受講者の体験の質に当たることになります。

第4の波:コホート

第4の波は、「コホート型コース(Cohort-Based Courses/CBCs)」と呼ばれています。これは、オンラインコースに学習者のグループが同時に参加し、同じペースで学ぶラーニング手法を指します。講師はインストラクションを行ったり場の取り仕切りを行いしますが、学びの多くは、学習者同士がリアルタイムで発見したことを共有したり、お互いに励まし合ったりすることで得られます。

コホート型のプログラム(マリー・フォレオのB Schoolなど)の中には、「反転型授業」モデルを採用しているものもあります。このモデルでは、事前に録画されたコンテンツを受講生の好きな時間に利用し、ライブの教室では、コーチング、対話、質問、ブレイクスルーの共有など、リアルタイムでなければできないことを中心に行います。セス・ゴーディンのAltMBAのように、事前録画済みのコンテンツを一切使わず、短いスプリントをテンポよく回す手法を採択した講師もいます。

私は2016年末にCBC(コホート型コース)を作りましたが、それをCBCと呼ぶと知ったのは、もっと後になってからでした。Building a Second Brain(2つ目の脳作り)と名付けられたその講座では、ノートの取り方という実践的なトピックをもとに、自分の知識や専門性を最大限に活用する方法を教えました。

私は、草分け期のオンライン学習(MOOCs)で受講生が直面していた課題を解決するために、自分なりにコホート型コースを一から設計しました。私は、時にコーチ、時にメンターとして受講生と対話し続けました。私を裏切れない関係を受講生と構築し、コミットし続けてもらいたかったのです。当時台頭し始めたばかりのZoomを使ってライブ配信を行ったりもしました。私は、優秀で野心的な一流のプロフェッショナルの受講生のために仕事をしたかったので、深いコミットメントを必然的に生み出すような、高めの価格設定をしました。また、受講生同士のインタラクションこそが価値の中心となるべきと考え、小グループ単位でのブレイクアップセッションやディスカッションフォーラムを積極的に活用しました。

30人の小さな第1期コホートを開講してから4年が経ち、これまで世界中から通算3,000人以上の受講生が私のコースを修了しました。彼らが生み出した成果は、私がオンラインプログラムに当初予想していたものをはるかに超えるものとなりました。次のコホートの詳細を知りたい方は、ぜひこちらをのぞいてみてください。

コホート型コースは、ある意味全く新しいものではありません。小学校から大学院まで、私たちはこの方法で学んできました。仲間と一緒に、リアルタイムで交流しながら、教師の指導を受けていました。コホートで学べたのは、たまたま皆が同じ時間に同じ部屋にいたからにしか過ぎません。この一見当たり前に見える教育形態は、実は最近までオンラインで提供するのは容易ではありませんでした。インターネットの高速化と共に、Zoomが一気に普及したことで、教室とは比較にならない規模の大人数でのビデオ会議が初めてスムーズかつ確実に行えるようになりました。

今では、数十カ国から集まったコホートメンバーが、昼夜を問わずいつでもミーティングを行い、限られた一部の人だけが関心を持つようなニッチなトピックにさえ十分な人数が集まり盛り上がりを見せ、カリキュラムすらリアルタイムでアップデートされることも珍しくない光景の一部となりました。すべてがデジタルであるため、どんな変更も瞬時に行えます。どうせ後でブラッシュアップしなければならない教材があるなら、授業を行いながら変えてしまえばいい。そのような超速でのサイクルを前提に生まれたCBCの改善のスピード感は、大学の授業のシラバスの改訂というよりは、ソフトウェアのアップデートのような気軽さで行われているように私には見えています。
CBCは、何十年も退屈なカリキュラムを教え続けるのではなく、扱っている各分野の最新の進歩をリアルタイムでコースの内容に取り入れることができます。10万ドル(1000万円)を払ってもろくな食い扶持にもならない学位を取得する代わりに、1,000ドル(10万円)を払って昨日更新されたばかりのコホート型プログラムを受けることの方が遥かに価値があるかもしれません。より多くの業界がテクノロジーの進歩によって躍進を遂げる中で、「学び」だけが時代の流れから取り残されるというのは、あってはならないことだと私は考えます。

なぜコホート型コースなのか

コホート型のオンラインコースには、それまでのオンラインコースとは一線を画す4つの要素があります。

・コミュニティ
・説明責任
・インタラクション
・インパクト

それぞれの要素を見てみましょう。

以降、後編へ続く。

(翻訳者:真田諒)