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おやっとさぁ務川どん! 務川慧悟ピアノ・リサイタル(2022年5月29日みやまコンセール)


推しへの愛でついに空を飛ぶ!✨✨✨

というわけで行ってきましたー。タイトルの通り鹿児島日帰り、滞在時間8時間、空港とホールのみ! という弾丸遠征。でも空港内外も割と見所あったし、私ときたらとことん勘所を逃すという失態続きで飛行機ばっかり見てたのだが、それでもめっちゃ楽しかったです。

まあそれは置いておいて早速コンサートを振り返ってみますね。
今回は他の方の記事などを見て、写真を多めにしてみた。マイナーチェンジというやつです。いや基本これまで通りの拙い文は変わらんのですが(←おいっ)、そんな私でも亀の歩みで三歩進んで二歩下がるの精神というわけですね。よろしくお願いします。

⑴みやまコンセールに来た!

鹿児島県霧島市。鹿児島空港からの送迎バスチェロまろ号に揺られること約30分。山の中をどんどん登って行った先に現れたのは森の中のスタイリッシュな建物。新緑から緑深まる時期、曇天の森の中で緑とお洒落に一体化したこのホールが、憧れの霧島国際音楽ホール、あのみやまコンセール!

緑に包まれたホール…写真が壊滅的にヘタで💦

こちらの会場で毎年開催される霧島国際音楽祭は有名ですね。内外から一流音楽家を招いての森の中の音楽祭。その方々を講師に同時期開催されるマスタークラスも有名だが、2019年藤田真央さんがチャイコフスキーコンクール第2位入賞した直後に参加され、世間が大騒ぎになったのは今でも語り草ですよねえ。ちなみに我らが務川さんも2014年にマスタークラスに参加されていました。

⑵さて本日のプログラム

ワクワクのプログラム。右下はチェロまろ君

プログラムは今年3月の愛知県岡崎市での演奏会と全く同じ。あの伝説のプロを再び聴けるこの喜び……いええええい! しかも今回のご帰国でソロリサイタルはこの一回のみ。もう心して拝聴しなくてはー!
と言うわけで、細かい曲の感想は一度書いているので、よろしければ詳細はこちらをご覧ください(笑)。

⑶バッハ:フランス組曲第5番ト長調BWV816

務川さんが颯爽と舞台にご登場。グレースーツにダークレッドのシャツとチーフ。細身のお姿がいつもながらに素敵ですね。後述するが、務川さんが最後のマイクで今更ながらに(←いや、でもご本人も仰ってましたし笑)曲紹介をしてくださったので、それを取り入れながら振り返ってみたい。
務川氏「今回のプログラムのテーマはフランス。バッハはドイツの作曲家ですがフランスにとても憧れていた。この曲集はフランス的な要素を入れて作曲されています」

アルマンド
浅めに腰掛けた務川さん。清廉なアルマンドが、会場を一気にバロックの世界へ誘う。この曲は二日前の5月27日、サントリーホールで怒涛のリトミカ・オスティナータ弾いた後に奏でられたアンコール。まずトリルや装飾音を排除して一回目、繰り返しはきらびやかな装飾を施して。ペダルはラストだけだったと思う。

クーラント
Youtubeなどで見ると割りと速めのハッチャケた演奏が多いこの曲だが、務川さんはテンポを抑え、テンションも制御していた。まさにフランスの宮殿で紳士淑女が踊っているシーンを彷彿とさせる演奏でした。

サラバンド
あのサントリー単独公演、オールショパンの最後に「(サントリーで)バッハも弾きたいので」と演奏された伝説のアンコール。この曲はもう無条件に涙出る装置。前半繰り返しの2回目も、後半繰り返し後の2回目もppでハッとさせられる。

ガヴォット
速度落とし気味の品のあるガヴォット。私の心に思い浮かんだのは、まだ社交界デビューしたてのお嬢様が優雅に舞うイメージ。大きく冒険したり逸脱したりしないで、一生懸命決められたステップを頭に思い起こしながら踏む。その姿の愛らしさ、可憐さ。

ブーレ
これもまだテンション抑えたイメージ。品があるのです。素敵です←え短っ!

ルール
このなんとも不思議なふわっとした雰囲気、バロックダンスの曲だそうです。捉えどころのないリズムと前後半の終盤に出てくる不協和音的な和声進行。務川さんのしみじみ心に噛み締めるように弾く、その表情を見ていて思いました……絶対好きでしょ、この曲! 

ジーグ
高らかに鳴らされるファンファーレは、舞踏会のクライマックスを知らせる調べ。務川さんのピアノから響く音楽はまさに宮廷楽団でしたね。ヴァイオリンに木管に、チェンバロに。多彩な音が次から次へと掻き鳴らされどんどん盛り上がって行く。いやあ最高のバッハでした。もうこれだけで大満足。本当に素晴らしかった! この一曲で会場も完全ノックアウト間違いなしー!

⑷モーツァルト:ピアノソナタ第8番イ短調K.310

務川氏「モーツァルトがパリに旅行をした時、同行していた母親が亡くなってしまいました。悲しみのあまりモーツァルトは書きなぐるようにこの曲を書いたと言われています」
一旦舞台から下がり、再び現れお辞儀をしての激しい演奏は慟哭そのもの。そこからは一気でした。ほとばしる悲しみ。2楽章の安らぎはすぐに不条理な思いに覆われ、3楽章の天上の声も虚しい。なぜ?どうして?という叫び。務川さんが「書きなぐるように」と仰った言葉を聞き、私はこの演奏は強い悲しみと不条理への遣るせ無い思いであり、未だ癒されることのない、まだまだホットな怒りなのだと受け取りました。
まああの、ど素人の私の受け取りですからね。そこはよろしく←気弱。

ここで休憩。鹿児島で見たハイビスカスなど、どうぞ。

鹿児島空港でパチリ、背景空はフェイクです笑

⑸サン=サーンス:マズルカ第1番ト短調Op.21
サン=サーンス:アレグロ・アパッショナート嬰へ短調Op.70

マズルカは結構アレンジ入ってました。
そして超かっこいい、パララララーンのアパッショナートは務川さんの左足下げ! 左手ヒラララも絶好調でしたよ。

⑹フォーレ:即興曲第2番へ短調Op.31
フォーレ:ノクターン第9番ロ短調Op.97

即興曲第2番はリトミカ2日目のアンコール。この何気ない街の風景みたいなさり気ない感じがなんとも務川さんに合っています。この曲をセレクトする務川さんの心やセンスもグッときますわ。
そしてノクターンは夜の庭をさまようような不安定な美しさに満ちていて、この曲をセレクトする務……以下同文。

⑺ラヴェル:夜のガスパール

岡崎で務川さんの圧倒的なガスパールを体感してからは、私の中ではもう務川さんのガスパールが絶対となっている。今回の演奏も途轍もなく素晴らしかった。
オンディーヌは水の表現の凄み。キラキラ煌めく水の輝きに魅入られているうちに、次第に塊の様相を見せる波。やがてその塊は大きく有機的に盛り上がり畝り、弾けるクライマックス。
絞首台。最初の鐘二つで空気がガラッと変わる。絶え間なく響く鐘の音、ポツポツと現われ消える現象、風、感情。不穏で寂寥としていて、まさしく務川さんによって創り出された独自の世界だ。
そしてスカルボ。強弱と緩急をたっぷり取って奏される世界がめっちゃ怖い。本当にゾッとするスカルボが最高すぎた。
私の感覚では、務川さんのガスパールは映像的では無く、体感に直接訴えてくる。オンディーヌの水の動きに飲み込まれそうになるし、荒涼とした町外れの絞首台にポツンと取り残されるし、スカルボはひたすら怖い。
そういう異世界を今回も体感させていただいた。

後半はオール・フランスで、サン=サーンスから始まり、その弟子のフォーレ、さらにその弟子のラヴェルの作品へと繋ぐ形で構成されていたそう。
しかしこの流れと選曲、めっちゃ良くないですか? もうセンスが良すぎて憎いほどじゃないか! すっかり魅せられた会場も大拍手!

ここでチェロまろくんの素晴らしいインスタを挟んでおく。なんとコンサート時の務川さんの画像が満載! リハ画像もあります。

⑻トーク

さて、お待ちかねのトークタイム!
務川さん、もうすっかり慣れましたね。あの寡黙な務川さんはどこに? というわけで左手マイクの右手左脇下ポジションで、時にはユーモアまで混ぜて語っていた内容を、例のごとく極力改変しないで、思い出しながら編集してみます。

このみやまコンセールで演奏するのは、9年前に日本音コンの受賞記念コンサートで来て以来。反田くんと一緒に1位になった時の日本音コンです。
2013年4月に受賞記念コンサートがあったのですが、その少し前の4月9日に僕は20歳になったので、初めて公で酒を飲んだのもこちらです。
僕はそれまで演奏活動をしていなかったので、記念コンサートはとても緊張していてあまり記憶がないんです。でも今日9年ぶりにこちらのホールで弾いて、素晴らしい響きのホールだなと思いました。あの頃より随分大人になれたみたいです。


そのコンサートの1年後には霧島国際音楽祭のマスタークラス に参加されたんですよね。みやまコンセールと色んな繋がりを持つ務川さんに、会場からもさらに大きな拍手が沸き起こる。それに応え、務川さんはアンコールとしてラヴェルのソナチネ第2楽章とドビュッシの花火という、お得意の演奏を披露してくださいました。

🌟おまけ 蛯原さんのインタビュー🌟

時差退場でお待ちいただいている方のために、という理由でなんとJNOプロデューサーでマネージメント業務もされている蛯原さんのインタビューという、一風変わった企画が急遽始まった。

Qいつ鹿児島入りされましたか?
A昨日東京のサントリーホールでコンサートがあったので、昨夜です。9時くらい。 

Q今日は朝から雨が降っていたんですが、務川さんの到着と同時に止みましたね。務川さんはもしかして晴れ男なんでしょうか?
A(笑)どうでしょうか。そう言われればそうかもしれませんね。

Q今日のコンサートはいかがでしたか?
A昨日までオーケストラと共に伊福部昭の現代的な曲を演奏していたので、今日は全く違うリサイタルを久々に弾けるということで本人も集中していました。このホールは響きが良くて、フランス音楽に良く合っていると言っていたし、弾き終えた時にも「弾けたー」と喜んで戻ってきました。会場の皆さんも集中して聴いていただけたと思います。

Q鹿児島で何か美味しいものは食べられましたか?
A昨夜務川さんが9年前に行ったという、思い出の居酒屋に二人で行き色々といただきました。
そこで9年前の思い出話などをしたのですが…後ろで(務川さんが)聞いていると思うと話しにくいですね(笑)。最初はお互いに記憶が曖昧だったのですが、話しているうちに段々思い出して来ました。

Q温泉は入られましたか?
A今朝ゆっくり入ったと言ってました。

聞けば聞くほど、務川さんがみやまコンセールと霧島市に深い思い出を持っていることが伝わってきた。会場の皆さんの雰囲気も大変親密で暖かで、何よりも務川慧悟という類まれなピアニストの演奏を聴けるという喜びに満ち溢れていたと思う。そして今日の演奏に心を撃ち抜かれ、新たに沼落ちした人がきっとたくさんいるはず、と拍手の渦の中で考えておりました。ようこそ沼へ!笑。
さてコンサート後は、務川さんは早速鹿児島空港へ向かったご様子。どうせなら一緒にチェロまろ号に乗って欲しかった! 笑。
空港でも足湯に入ったり、9年前にも反田さん達と食したという、思い出の鶏飯食べ放題を楽しまれたご様子。5日後には奈良で今度は室内楽のコンサートが待っている。束の間のリラックスタイムを目一杯楽しまれたでしょうか。
務川さん、いや務川どん、おやっとさぁでした!


務川どん、おやっとさぁ!


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