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「これまでの役者人生の集大成」俳優・船越英一郎、初のフジ系連ドラ主演の役どころは“元2サスの帝王”

“2時間ドラマの帝王”とも呼ばれる俳優・船越英一郎が、フジテレビ系列『テイオーの長い休日』(6月3日スタート)で初の連ドラ主演をつとめる。その主人公・熱護大五郎(あつもり・だいごろう)は、“元2サスの帝王”。自らに“多少”近しいキャラクターを演じることに、新境地を感じさせる。
 
すでに撮影がスタートしたいま、作品概要をどう捉えているのか。自身を育ててくれたテレビに対する思い、当初抱えていた「2時間ドラマ俳優」という立ち位置へのジレンマなどとともに語ってくれた。

■2人のプロデューサーが「船越英一郎で面白いドラマが撮りたい」

この日のインタビューは晴れた日の朝だった。そんな天気模様にリンクするかのように、「おはようございます!」と、明朗快活なあいさつで取材部屋へと入室。まずは、今回のドラマの設定を聞いたとき、どう感じたのか聞いてみた。
 
「このドラマは、2人のプロデューサーが“船越英一郎で何か面白いドラマが作れないか” と企てたのがすべての始まりでした。1人はホリプロ(※船越の所属事務所)のプロデューサーで、これまで僕の作品を何十本もプロデュースしている。『俳優・船越英一郎』のことはおそらく僕より詳しい人物です。そしてもう1人は、会うのが今回初めましての東海テレビのプロデューサー。彼からは『こんなドラマを作りたい』と、熱いメッセージが書かれた長いお手紙をもらったんです。新旧の付き合いがある二人が交わったらどうなるのか、僕自身もワクワクしましたよ」
 
偏屈な“元2サスの帝王”に、3人の子どもを抱え復職した女性マネージャー、年齢も性別も違う凸凹コンビがぶつかりあいながらも、徐々に打ち解けていく。
 
「ひとことで言えば、今回のドラマのテーマは『再生』。主役の熱護は、自身が決めたルールを曲げること無く突き進み、結果的に“孤独”になってしまった。家族もおらず、俳優としての限界が見えているのもどこかわかっている。マネージャーと出会い、子どもたちと接していくことで、温かい家族の存在を知り、人間としても、俳優としても変化していくんです」
 
その「再生」というテーマは、社会に対しても向けられている。
 
「コロナという未曾有の経験をして、みんながつらい思いをしました。その中から、学びを得て、またもう一度立て直す時期に入っている。いわば世の中も『再生』しているわけです。このドラマが、その再生に向かっていく人たちの背中を、少しでも押せるような作品になってくれればいいなと思っています」

■「家族団らん」を取り戻すドラマに

船越が俳優デビューした1982年は、まさにテレビ全盛期。話題の番組が放送される時間には、街から人が消えていくと言われるぐらい人々にとっては欠かせない存在だった。凋落を見せている今だからこそ、“恩返し”の気持ちがある。
 
「僕が若い頃は、今みたいにインターネットがあったわけじゃないので、すべての情報や流行はテレビから教わってきました。また、家族のコミュニケーションツールのひとつでもあり、おじいちゃん、おばあちゃんから、お孫さんまでみんなで一緒に見て、見た番組の感想を言い合う。またそんな昭和の原風景が戻ってほしいですよね」
 
もちろん、現代はスマホやPCにタブレット、娯楽を提供するデバイスは多岐にわたっている。そんな価値観を押し付けるのはナンセンスだと、自身もわかっている。
 
「スタッフたちも含めて、こうしたアットホームな作品は冒険になるかもと思っている。でも、みんな背を向けてきたものに、あえて挑まないといけません。過去のオマージュで作るのでは飽きられてしまうので、昭和と令和、
ハイブリッドな内容にはなっていると思います」

■「2時間ドラマ俳優」は本意じゃなかった

いまや、「2時間ドラマの主演俳優と言えば船越」というぐらいの地位を確立しているが、若い頃は悶々とした思いを抱えていたという。
 
「2〜30代の頃はトレンディドラマが全盛期でしたからね。年齢層が高い方に向けたドラマが主戦場の僕にとっては、同世代に向けた恋愛ものの作品は、隣の芝生が青く見えましたよ(笑)。でも、あるとき自分への苛立ちに気がつくわけです。『俳優は、自分がこれをやりたいで出来る世界じゃないんだ。皆さんが僕に何を求めてくださっているのか理解しろ。贅沢言ってんじゃねえ!』とね」
 
内容は違えども、同じような展開では飽きられてしまう。突破口を開いたのは、好きだった海外ドラマだった。
 
「アメリカのドラマで、『こちらブルームーン探偵社』っていう、半分コメディのドラマがあって、それがすごく面白かったんですよ。シビル・シェパードっていう有名女優と、まだ駆け出しのころのブルース・ウィリスが、丁々発止のやり取りをする探偵ドラマで。『こういうことを日本でもやれたらいいな』なんて思っていたんですが、よくよく考えたら2時間ドラマでもこんなことができるじゃないかと。それで生まれたのが『小京都ミステリー』というシリーズなんです」
 
その後も紅蓮次郎シリーズや、刈谷警部シリーズ、次々と2時間ドラマの“当たり作”を量産。画一的ではないキャラクターは、俳優としての評価の底上げにもつながっていった。
 
「2時間という枠の中で、振り幅の広い役を演じてきたお陰で、異名も付きましたし(笑)、60歳を過ぎてもまだ主演をやらせてくれる。それはもう応援してくださる皆さんに感謝ですよね。そして今回の『テイオーの長い休日』は、これまでの役者人生の集大成みたいな作品だと思っていて、2時間ドラマの印象もある人も、バラエティ番組の印象を持っている方も、新しい船越英一郎を見せられると思うので、ぜひ試しに見てほしいですね」

【リーズンルッカ’s EYE】船越英一郎を深く知るためのQ&A

Q .いま、船越さんがもっともハマっているコトとは?

 A. 「犬」ですね。僕は子どもの頃、犬がいる生活をしていたんですが、東京に出て一人暮らしをしてから飼うことはなくなり、今後も飼うことはないだろうとまで思っていました。ただ一昨年の夏に、ロケ合間のホームセンターで衝撃的な出会いをしまして。
 
ペットショップで、とあるロングコートチワワと目が合ったとき、電流が走ってしまったんです。すぐに「連れて帰らなきゃ」と。名前はレオで、手塚治虫先生の『ジャングル大帝』から取りました。もともと、ペットを溺愛するっていう感覚がわからなくて、なんで撮った写真を周りの人に見せたがるのかなと思っていたぐらいなんですが、いま一番誰よりも僕が見せています(笑)。

<編集後記>

「あなたの記事、読みましたよ」
取材が始まる前、こんなことを言ってくれた。もちろん、自分をインタビューする人物が、がどんな文章を書いているのか、チェックする人は多々いるはずだ。だが、改めてこう言ってくれる人は少なく、なんなら40年以上もの経歴がある俳優から言われることに、非常に驚いたし、嬉しさも込み上げてきた。いまだ、この日の船越さんとの時間は、鮮明に脳裏に焼き付いている。

<マネージャー談>

実は意外とフジテレビでの連続ドラマの主演は今回が初になります!只今絶賛撮影中ですが、コメディから最後にはほろっと泣けるそんなドラマに仕上がっています!毎話、歴代の2時間ドラマを彷彿とさせるキャラクターも登場し、色々な楽しみ方ができる仕掛けが沢山あるドラマです!1話の火災調査官の撮影の時は当時から関わっているスタッフが「歳はとっているはずなのに全く一緒だ!」と盛り上がっていました(笑)土曜日の夜に家族と観るのにぴったりなドラマです。是非ご覧ください!
 
<番組詳細>

【プロフィール】
船越英一郎(ふなこし・えいいちろう)
1960年生まれ、神奈川県出身。1982年、ドラマ『父の恋人』(TBS系)で俳優デビュー。以来、役者の道を歩み続け、2時間ドラマの主演においては欠かせぬ存在となる。それ以外にも、教養番組やバラエティー番組においての司会、ナビゲーター役としても活躍。6月3日(土)より、フジテレビ系列にて初の主演ドラマ『テイオーの長い休日』がスタートする。

取材・文/東田俊介
写真/村松巨規

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