記憶 #シロクマ文芸部
新しい傘を買ってもらうと
雨の日が来るのが待ち遠しかった
新しいスカートを買ってもらうと
何だかお姫様になれたような気がした
川底で控えめに光る
何の変哲もない小石のような
記憶の残滓が
ひと粒 ふた粒 と
数えられる程度にあって
そこからささやかな温もりを
届けてくる
使い込んで穴の空いた傘を
手放すのは何だか悲しかった
小さくなってしまったスカートの模様は
いつまでも忘れられなかった
バラなんかよりずっと細かく棘で
ちくん いてて と
すぐ忘れてしまうような
そんな痛みは
柔らかな記憶に変わって
モザイク模様を描き出す
新しい年がやってくると
わけもなくソワソワした
お年玉のせいなのかもしれないけれど
お年玉をもらえなくなっても
やっぱりほのかに嬉しいのだから
新しい年の初めに
希望が持てることのありがたさは
温もり以上のものだと
いつまでも
覚えていなくてはいけない
⌘
小牧部長、今週もありがとうございます。
今年の初め、は、やっぱり詩にしました。
いつもそうですが、お題をもらうと、一つの言葉が浮かんできます。今回は「新しい傘」でした。傘っていう言葉も物もとっても好きです。
いただいたサポートは毎年娘の誕生日前後に行っている、こどもたちのための非営利機関へのドネーションの一部とさせていただく予定です。私の気持ちとあなたのやさしさをミックスしていっしょにドネーションいたします。