りゅ

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最近の記事

純粋の小説~西村賢太の「私小説」~

 西村賢太という私小説作家がいた。彼は2022年の2月に死んだ。おそらく長年の不摂生が原因だ。そして彼が書いていた小説がもう書かれることはない。      彼の死をニュースで知った時、僕は自分でも意外なくらいに動揺した。彼の小説のいくつかを僕は読んでいた。しかし特別贔屓にしているわけではなかった。しかしそれでも彼の死は僕を困惑させた。というか死んではいけないと思った。若すぎる?もちろん日本の平均寿命からして、54歳で死ぬのは早すぎる。  ただそういう問題でなく、この作家がいま

    • 復職について

       この4月から僕は復職した。業務負担は多少軽くなったとは言え、休職前とほとんど同じ仕事をしている。今日(2022年8月7日)まで、約5か月働いてきた。今は、この仕事にとっては、時間的に余裕のある時期だ。この機会に、復職してどうだったか、何を考えているか、ということを書いておこうと思う。  まずは、働くということは、分かってはいたが、かなりハードだった。分かってはいた。それまで4年間働いてきたのだから。しかし、ここまでだったか。僕は丸1年休んでいた。もちろん、その間は全く忙しく

      • 休職について

         朝の仕事を終えて自分の席に戻ってきて机に突っ伏した。「ああ、もう無理だ」と思った。理屈でなくそう思った。思いたかった?今となっては分からない。しかしいつもなら、朝一番の仕事をしたら、スイッチが入って、その日は一日なんとかなる。しかし様子が違った。もう動けない。そのまま管理職のところに行って、今日は帰ります。と言った。明日からもしばらく休むという話もした。なぜそんなにスムーズに話が進んだのか。そうだ、忘れていた。それ以前に、一度面談していた。しんどいことはないか、辛くないか、

        • 2021年12月21日 ある飲み会の記録

          これは2021年12月21日に行われた、ある飲み会の音声を録音し、その音声をアプリで文字起こししたのち整理したものである。ほとんど意味不明の会話の中で一瞬意味がわかるようななんとも言えない雰囲気をお楽しみあれ。 登場人物・・・りゅ、ツチノコ(以下ツチ)、店員、客など (某県某市の居酒屋に入店する男二人。本日の二軒目。) りゅ「ツアー楽しむ」 ツチ「いいっすね」 りゅ「何食べる。どういう形がいい」 ツチ「それ」 りゅ「をねこれやっぱり。大根と思ってます」 ツチ「顔を上げて」

        純粋の小説~西村賢太の「私小説」~

          『中原昌也作業日誌 2004→2007』研究 〜中原昌也と627人の日々〜

           『中原昌也作業日誌 2004→2007』で、中原昌也が約三年半の間に、会ったり、電話したり、メールしたり等何らかのコミュニケーションをとったと明記してある人が何人いて、一番コミュニケーションをとった回数が多いのは誰なのかということを調べた。  そもそも、『中原昌也作業日誌 2004→2007』とは何なのか?この本は、作家・ミュージシャンの中原昌也が、3年半に渡って書き続けた日記を書籍化したものである。元々は、雑誌『EYE SCREAM』に、「親指王子ケイタイ日記」として連載

          『中原昌也作業日誌 2004→2007』研究 〜中原昌也と627人の日々〜

          太宰治の小説(ほとんど)全部読んでみた ~あるいは全集マラソンのすゝめ~

           皆さん、太宰治は好きですか。僕は嫌いでした。  なぜならなんか暗いから。なぜならなんかモテているから。なぜなら心中したから。なぜならそういうエピソードのあれこれありきで、彼の小説は評価されているのではないか、つまり、過大評価されているのではないか、と思っていたから。  しかしそれは偏見かもしれないと、ある日思った。  僕は「走れメロス」を中学校の授業で読んで、それから冷やかしで「人間失格」を読んで、なんとなく「斜陽」を読んで、という典型的(?)なルートをたどった。逆に言えば

          太宰治の小説(ほとんど)全部読んでみた ~あるいは全集マラソンのすゝめ~

          メモ 〜小島信夫『美濃」について〜

           今度小島信夫の『美濃』の読書会がオンラインであるので、そこで何を話すかということを自分なりに整理しておくため、文章にまとめておこうと思った。それでこの文章を書いている。この文章は、読書会の際にメモ代わりに使う。この文章がnoteにアップされている頃には、読書会は終わっているだろう。読書会の前にこの文章を公開してしまうのは、何か違う気がする。だから読書会が終わってから公開するつもりだ。  小島信夫の『美濃』は一応小説である。しかしあまり小説らしくない小説である。主人公というか

          メモ 〜小島信夫『美濃」について〜

          ツチノコとの出会いについて

           いよいよ書くことがないので今回は完全な内輪ネタです。僕にはツイッター上でもリアルでも仲良くしているツチノコという友人がいます。彼もnoteにたまに投稿していて、その中に僕と出会った日のことについて書いてある記事(https://note.com/tuchinonaka/n/n546f8fa80585)もあり、けっこういいねがついています。好きな記事で、僕は何度か読み返しています。何が良いって、そこに登場する僕はとっても良い感じなんです。すごく魅力的に書いてくれています。だか

          ツチノコとの出会いについて

          笑うな 〜チャールズ・ブコウスキー『パルプ』の凄味〜

           おもしろいものは好きですか?  世の中にはたくさんのおもしろいものがありますね。例えばとっとこハム太郎。あれはものすごくおもしろいです。まずはネズミが喋っているというのが良い。1年も経たずに死ぬ運命を背負っていながら、理性を保っている。円滑にコミュニケーションをとり、友人関係を築き、恋人とファックし、子孫繁栄を目指す。とっとこハム太郎は人生の縮図だ。その意味で画期的かつおもしろい。誰が見てもおもしろい。強盗犯にナイフを突きつけられながら見てもおもしろい。お漏らししながら見て

          笑うな 〜チャールズ・ブコウスキー『パルプ』の凄味〜

          村上春樹とあたしンち

           中原昌也についての文章を書いていたら、全体の8割がコピペか引用、残り2割は寿司の射精風景という全く意味不明の怪物が出来上がってしまい、やはり僕にはまだ中原昌也に太刀打ちすることはできなかったと途方に暮れたのち、文章というものが分からなくなった。  そこでバランスをとるために、思いっきり個人的な文章を書くことにする。高低差で脳が破裂すればいいと思う。僕と村上春樹の小説についての話だ。  僕が小説を読むようになったきっかけは、大学3年の冬に村上春樹の『ノルウェイの森』を読んだこ

          村上春樹とあたしンち

          中原昌也の小説はなぜ面白くないのか?

           皆さんは文章を読むのが好きだろうか、僕は大好きだ。文章を読むといいことがたくさんある。例えば、知識が増える。文章を読むことで、自分が今まで知らなかったことをたくさん知ることができる。例えば、新聞。毎日読むことで、世の中で起こった様々なニュースを知り、深く理解することができ、世間一般的に見て恥ずかしくない常識と良識を備えた素晴らしい人格者になることが容易にできるのだ。新聞を読んでさえいれば、社会人として失格という烙印を押される心配もなく、心身ともに健康な快活ライフを比較的安価

          中原昌也の小説はなぜ面白くないのか?

          事割れ 〜猫田道子「うわさのベーコン」を読んで〜

           「うわさのベーコン」という小説をご存知だろうか。  「うわさのベーコン」は猫田道子の書いた小説である。タイトルを見れば分かる通り、小説には「ベーコン」はおろか「ベーコンのうわさ」すら一切出てこない。  この小説は変だ。この小説について話そうとすると意識にもやがかかったようになりうまくいかない。この文章も何度も書き直している。どうしても無駄話をしてしまって「うわさのベーコン」にたどり着けない。だからすぐ本題に入ろうと思って、「うわさのベーコン」という言葉をとりあえず書いてから

          事割れ 〜猫田道子「うわさのベーコン」を読んで〜

          食われる〜遠野遥の小説、「教育」を中心に〜

           遠野遥は女だと思った。  『文藝』、文藝賞発表号の表紙に「かか」宇佐見りんと並んだその名前を見たときのことだ。「改良」遠野遥。それだけ見て、これは間違いなく変な小説で、そして著者はなんとなく小山田浩子みたいな感じの雰囲気の女性だと思った。興味をもってTwitterで調べると、アカウントがあった。目元が髪で隠れたイケメン、好きなタレントの画像かと思ったら本人だった。男だ。遠野遥は男だった。  なんで女性だと思い込んだのだろうと不思議に思ったが別に不思議ではない。「遥(はるか)

          食われる〜遠野遥の小説、「教育」を中心に〜

          人間っていいなー吉村萬壱の小説世界ー

           吉村萬壱は日本を代表する小説家であるがそう思っている人はあまりいない。たぶん気持ち悪い小説ばかり書いているからだろう。この文章を書いている今は平日の午前9時で、涼しい風が外から入ってきて大変素晴らしい。しかし窓の外から「ぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽぽぽぽぽぽ」という正体不明の機械鳥の声のような音がずっと鳴っている。急にこんなことを書かれると読んでくれているあなた(僕はまだ「読者」って偉そうな感じがして使えない)は、不快だろうか。こわいかな。そういう不愉快を積み重ねるのも吉村萬

          人間っていいなー吉村萬壱の小説世界ー

          愛と勝利ー『死の棘』、『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』を読んでー

           引用する。  「ノモトとかネモトとかいう男を知っているか。自動車の運転手を知っているか。なんて言ったっけ、そうそうツムラという大学生を知っているか。あなたはまぬけだから、なんにも知らないだろう。みんなあいつの男の名前だよ。まだまだ教えてやろうか」  とほかにいろいろな男の名前を挙げるから、私は妻が刑事に見えてきて、  「こわいよう、こわいよう。手錠をはめられるう!助けてください、手錠をはめられるう!」  と大きな声を出した。  「ばかなことを言いなさんな」  と妻がおさえ

          愛と勝利ー『死の棘』、『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』を読んでー

          激ヤバの深遠ー大江健三郎『個人的な体験』を読んでー

           こんなにイラついたのに最後まで読んだ小説は初めてだ。  大江健三郎の『個人的な体験』は、僕が初めて最後まで読み切った、氏の長編小説である。以前『万延元年のフットボール』を読もうとしたことがあったが、その時は最後まで読めなかった。他に読んだのは、「死者の奢り」と、あと障害者に性的奉仕をする看護婦(あえて「婦」と書く)の話……とか、要は、僕はほとんど大江健三郎の小説を読んだことがなかった。  だからこの感想は大江文学に精通した者のそれではないということを、明記しておく。  まず

          激ヤバの深遠ー大江健三郎『個人的な体験』を読んでー