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サイケンはカンガエテイマスカ?

2023年12月21日
精密検査は午後の予約だった。

受け取っていた紹介状とCD-ROMは自宅に置いていった。人間ドックと同じクリニックで受診するなら要らないか。って思っただけのこと。必要だったと後から知る。

街はクリスマスムード一色。お店の可愛い装飾やキラキラに心が踊る。ちょうど前週いつも行くお店からプレセールの案内を受け取ったばかり。これから精密検査に行くのに「検査受診のご褒美にあのニット見にいこ~♡混まないうちにあそこで早い夕飯食べて帰ろ!お腹すいてきたかも」なんて検査後のことしか考えずワクワクして向かった。検査受診のご褒美ってなんだ?(笑) もちろんここまでのタスクを2つ終えたことも含まれる。

「検査着に着替えてまずはエコーからしますね」

▼乳腺エコー
いつもより長く同じ場所をじっくり見ている印象があった。そして恐らく人間ドックの時の画像と比較をしている様子が伺えた。何も口にされないがただ真剣な目差し。上目遣いで画面を覗いてみるが素人が判るはずもなく目を閉じた。眠くなる。

次は▼マンモグラフィ
指示のままに動き一つ一つこなしていく。
早く終わって欲しいので淡々と。あっという間に終了。

次は細胞診かな…と待合室にいたら診察室に呼ばれる。わたしの胸だと思われるレントゲン写真のようなものを見せられ説明を受ける。

「ここにあるこのポツポツした点。これが石灰化なんですが、悪性かもしれなくて今回検査対象になっていました。ごめんなさい、このクリニックではこれ以上の検査が出来ないのですが、今日改めて見たらやっぱり状態が良くないので、さらに次の検査を受けてもらいたいから大きな病院を紹介しますね」

は?石灰化ってなんですか?だった。
わたしは石灰化というもので引っ掛かったのか…。先生は胸の石灰化について丁寧に教えてくださった。

へぇ、そう…なんだ。

「なるべく早めにみてもらった方がいいので病院を決めましょう。ダメな日はありますか?」と先生。

え?そんなレベル?

病院候補を探してくれながら「ところで
サイケンはカンガエテイマスカ?
最後でまた今回のように紹介になったら身体の負担が増えるし時間がかかるもんねぇ…」と先生。

あれこれ立て続けに決め事が進んでいって頭が追い付いてなかったが、目がパチクリして一気に頭が冴えた。

は?サイケンって何ですか?

"再建"なんだと思ったが心が追いつかない。嫌だ、気持ちが先立ち口にしていた。涙が少しだけ浮かんだ。手がキュッとなった。

先生は淡々と仰った「もし悪性で胸を切除した場合、胸を再び自分のお腹や背中の組織だったり、モノを入れて作ることが出来ますが、そういったご希望はありますか?」

私がなぜそんなことを考えないといけないのかわからない。「先生、そんな痛くもしこりもない胸の再建なんて考えたこともないです!私の胸の状態はそんな事を考えないといけないほど良くないのですか?」冷静を保ちつつも少しだけ怒り口調になっていたと思う。

「そうですねぇ、もちろんこれからちゃんと検査していって判ることですが、次の病院では悪性と言われる可能性がある事も覚悟して行ってくださいね」先生は優しい口調でハッキリそう仰った。

へぇ…なんで?全く他人事だった。
あまりにもの急展開に自分事としてとらえられず、ふーん何言ってんの?と言った感じ。涙は出なかったが身体の力は抜けていた。

次の病院は1月9日で決定した。望めば再建まで行える病院だそう。ねじ込んで予約を入れてくれた雰囲気にそんなに悪いの?と不安が募る。

お会計待ちの受付でわたしは力が抜けたままどこかまだ他人事の気分で待っていた。看護師さんが次の病院への紹介状を届けてくれて「こんなに早く次の病院が予約できて良かったですね」と。
良かったのか?…な。全くピンとこない。

検査が終わったら街に繰り出す気満々だったわたしだったが、そんな気分はもうとっくになくなっていた。お腹もすいてない。

キラキラ輝く街のイルミネーションが眩しすぎて、わたしは目を伏せて帰路に着いた。





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