舞台「ハイキュー 進化の夏」の進化がすごい

 私、マンガやアニメ、小説や映画とともに、舞台も楽しみます。最近はマンガ原作の舞台が増えたことで楽しさが倍増しています。もちろんマンガ、アニメ、小説は面白いですが、舞台という多くの人が関わることで公演ごとに姿を変え進化していきます。その中でも、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!! 進化の夏」はすごかった。


 舞台がおもしろいのは、二度として同じ「作品」がないこと。生身の役者のぶつかり合いでできる舞台は、公演の間に少しずつ変わります。さらに同じ脚本と演出家の公演でも、公演ごとに少しずつ姿を変える。その違いがわかったとき、舞台をみる楽しみはより大きくなります。

進化ポイント1 女性キャラクターの登場

 今回の舞台は、夏合宿。青葉城西高校にまけた烏野高校のバレーボール部は、さらになる力をもとめて、東京の高校による夏合宿に加わります。

メンバーは、かつて烏野高校と練習試合をやった音駒高校と、さらに東京の強豪校、梟谷高校です。(原作ではさらに森然高校がいましたが、舞台ではおそらく人数の関係でカットされたよう)。ここで烏野高校のメンバーはそれぞれ新しい技術を手に入れ、新たな戦いに挑みます。

 このエピソードをやるとわかったとき、きっとファンの心にはこんな思いが浮かび上がったでしょう。「マネージャー、どうするの?」

 これまでのエピソードでは、マネージャーが出てくるシーンは、女性の役者は舞台に現れず。ほかのキャラクターが「マネージャーに話しかけている」の体で、マネージャーがいることだけが示されていました。

「ミュージカル テニスの王子様」(テニミュ)の成功からいわれていた、マンガやアニメ、ゲームを舞台化した「2・5次元舞台」のセオリーは、「女性キャラと男性キャラの舞台上での絡みはタブー」というもの。舞台の観客は、作品や演劇そのものが好きな人に加え、役者が好きで、役者(およびその役者が演じるキャラクター)との疑似恋愛も期待しているからです。

テニミュでは、原作にいた女性の監督やクラスメートは舞台上から姿をけし、唯一女性の監督がオーダーなどを伝えるときに声で出演していたぐらいでした。
しかしハイキュー!!の夏合宿エピソードとなれば、原作のその前後でマネージャー、清水潔子と谷地仁花がいきいきと物語を導きます。

「NARUTO」や「青のエクソシスト」の舞台では不可欠なキャラクターが女性ということもあり、女性の役者が女性キャラとして舞台に上がっていました。しかし、男性のキャラクターが中心でかつ、女性ファンが多い作品では、演出側にも葛藤があったのではないでしょうか。

私自身は、舞台でこのエピソードをやると知ったとき、梟谷や音駒が出てくるのがうれしい一方「マネージャーが、いないとちょっとしんどいよなー」「やるなら誰がやるのだろう」と興味津々でした。

 結果的に、女性の役者を同じ舞台に乗せたのは大成功だったと思います。ただ単に、かっこいい男性の役者の活躍を見せるだけなく、きっちり物語を舞台の上で展開し、なおかつストーリーを知らない観客もおいていきぼりにしない。
 もともと谷地さんは、作品のなかでバレーボールの初心者向けにバレーボールとは、バレーの技とはを監督らから説明を受ける役割を担っており、谷地さんらを通じて読者は「バレーとは何か」をより知ることができます。
 舞台ではその役割がさらに強化。彼女の疑問に対してほかのキャラクターが応えることで、ひいては観客への説明にもつながっています。

で、この谷地さんの役者がうまかった。せりふなどは少しずつ変わってはいるものの、弱気な子が少しずつ仲間に加わって一歩踏みだし、さらに自分の力で仲間に貢献するーーバレーボールおよび原作のなかで自然とおこるプロセスをコートの外でも実現していました。
 もちろん先輩の潔子さんも素敵です。3年生メンバーとの近そうで近すぎない距離感がうまくでていました。
 そしてなんといってもダークホースは、2年生の田中選手のお姉さん。この人、実はいろいろなキープレーヤーなのですが、演出上はほかの人にも置き換えられるので、出演ないかな、と持っていたのでうれしいサプライズでした。
ぜひこの先も公演が続くなら、ぜひ3人ともでてほしいです。

進化2 音楽とダンスの進化が止まらない

 もうひとつ進化していたのは歌、音楽とダンスです。
ハイキューの舞台はミュージカルではないので、必ずしも上演中ずっと歌って踊っているわけではありません。でも、要所要所でチームを表現する歌、音楽、ダンスは不可欠。
 舞台上に複数のチームやグループが登場するとき、それぞれのグループに違った音楽やテーマを与えることで差別化するのは、ミュージカル「ウエストサイドストーリー」からの伝統で、テニミュにもしっかり引き継がれました。そしてハイキューにも影響を与えています。

今回初登場の梟谷高校(私、好きな学校のひとつです)。音駒高校は、ゲーム風、猫のような動きという演出で、では梟谷はどうくるかなと思ったら、なんとラテン風でした。
 これ、物語の展開上、烏野高校のメンバーがブラジルのチームがかつてやったシンクロ攻撃を取得するからなのかなと思ったのですが、登場シーンでもラテンのサンバ風の音楽に合わせてだったので、私の中では暫定的に梟谷高校の校歌=ラテン系、としました。
 これは梟谷のキャプテン、木兎光太郎がラテン気質のキャラクターとして描かれてるからだと思われます。すでに登場した高校にくわえ、梟谷でこのような展開があったことで俄然この先の学校が気になります。
・・・にしてもテニミュみたいに、チームライブとかやらないですかね?青葉城西と梟谷はいきたいのですが。

ほかにもいろいろ進化ポイントはあります。原作そのものが、どのキャラクターも殺さず無駄にせず描いているので、舞台でもピックアップやすいのでしょう。この先の進化も期待できるので、「所詮はマンガ原作でしょ」と思っている舞台ファンはみないと損ではないでしょうか。



おまけ
※この下は、いわゆる「BL」を許容できる人のみごらんください。

 BLからやおいまでおよそコンテンツであれば何でも嗜みますが、唯一避けてきたのはいわゆるこの分野で「なまもの」といわれるもの。(というかこれすら最近のドラマで揺らぎつつあります)。

 なので舞台をみるときは、基本的に「BL・やおい妄想回路」を切るのですが「ハイキュー!! 進化の夏」は無理でした。
事前にpixivの感想で「兎木と黒尾の求愛ダンスがやばい」とかかれている方がいて、なんのことかと思って観にいったのですが、、、、、想像以上に求愛ダンスでした。
 いやね、梟谷のモチーフがフクロウで、ダンスの手の動きとかどことなく鳥類っぽいものを感じさせるのがいけないのか。それともその感想に納得してしまう私がいけないのか。とにかく、求愛ダンスでした。そしてね、ネコなのに黒尾もそれにちゃんと応えようとしているのがまた、なんとも。
 もちろん、お互いそれぞれのチームのキャプテンで、背番号1番で。だからペアになったと思うのですよ。ちょうど役者の身長も同じぐらいでペアにしやすかっただろうし。それにしてもね、pixivでかかれた感想はどんぴしゃでした。
 一回それに目がいくともうそこから抜け出せず。物語の展開を知っているからこそ、ふとしたときに「やっぱりぼっくろ尊い」と思考が飛んでいました。だめですね。ほんと、役者の方々、演出家の方々、ごめんなさい。



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