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在外国民審査違憲判決 最大判令4・5・25

 令和4年5月25日に出た、戦後11個目の法令違憲判決です。
YOUTUBEでは、平成17年9月14日在外選挙違憲判決との比較をしています。このnote記事では、令和4年5月25日在外国民審査違憲判決を深めため、判例の思考を追いかけやすいように、以下で整理しています。

以下の第1~第4のポイントを理解しておけばよいでしょう。「」で最高裁判決を引用しつつ、👨〈〉部分で私の解説を入れていきます。

第1 事案の概要
「1 本件は、国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民(以下「在外国民」という。)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査(以下「国民審査」という。)に係る審査権の行使が認められていないことの 適否等が争われている事案である。」

第2 争点
「国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、
憲法15条1項、79条2項、3項に違反する」か。


第3 争点に対する結論
「国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、
憲法15条1項、79条2項、3項に違反するものというべきである。」
 👨〈国民審査法という法律に関する違憲判決=法令違憲〉

第4 結論に至る理由 (以下、判旨の思考順序のとおり記載)
「国民審査の制度は、国民が最高裁判所の裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨のものである」👨〈国民審査は最高裁裁判官を罷免させる制度〉
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「憲法は、一切の法律、命令、規則又は 処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である(憲法 81条)などの最高裁判所の地位と権能に鑑み、この制度を設け、主権者である国民の権利として審査権を保障しているものである」👨〈国民審査権は国民の権利
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「そして、このように、審査権が 国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の権能の一内容である点において 選挙権と同様の性質を有することに加え、憲法が衆議院議員総選挙の際に国民審査 を行うこととしていることにも照らせば、憲法は、選挙権と同様に、国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障しているものと解するのが相当である。」
 👨〈国民審査権は選挙権と同様の性質で、選挙権同様国民に平等に保障〉
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「憲法の以上の趣旨に鑑みれば、国民の審査権又はその行使を制限することは原則として許されず、審査権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。そして、そのような制限をすることなしには国民審査の公正を確保しつつ審査権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められる場合でない限 り、上記のやむを得ない事由があるとはいえず、このような事由なしに審査権の行 使を制限することは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反するといわざるを 得ない。また、このことは、国が審査権の行使を可能にするための所要の立法措置 をとらないという不作為によって国民が審査権を行使することができない場合につ いても、同様である」👨〈やむを得ない事由がないと違憲という違憲審査基準を設定〉
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「在外国民は、前記2のとおり、現行法上、審査権の行使を認める規定を欠いている状態にあるため、審査権を行使することができないが、憲法によって審査権を保障されていることには変わりがないから、国民審査の公正を確保しつつ、在外国民の審査権の行使を可能にするための所要の立法措置をとることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められる場合に限り、当該立法措置をとらないことについ て、上記やむを得ない事由があるというべきである」。👨〈違憲審査基準の「やむを得ない事由」の中身を具体化〉
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「審査権と同様の性質を有する選挙権については、 平成10年公選法改正により在外選挙制度が創設され、平成17年大法廷判決を経て平成18年公選法改正がされた後、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選 挙区選出議員の選挙をも対象に含めた在外選挙制度の下で、現に複数回にわたり国政選挙が実施されていることも踏まえると、上記のような技術的な困難のほかに在外審査制度を創設すること自体について特段の制度的な制約があるとはいい難い。 そして、国民審査法16条1項が、点字による国民審査の投票を行う場合において は、記号式投票ではなく、自書式投票によることとしていることに鑑みても、在外審査制度において、上記のような技術的な困難を回避するために、現在の取扱いとは異なる投票用紙の調製や投票の方式等を採用する余地がないとは断じ難いところであり、具体的な方法等のいかんを問わず、国民審査の公正を確保しつつ、在外国民の審査権の行使を可能にするための立法措置をとることが、事実上不可能ないし著しく困難であるとは解されない」👨〈在外選挙は現に実施できており、技術的に見ても在外国民審査は不可能ではないと最高裁は判断〉
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「そうすると、在外審査制度の創設に当たり検討すべき課題があったとしても、在外国民の審査権の行使を可能にするための立法措置が何らとられていないことについて、やむを得ない事由があるとは到底いうことができない
👨〈上記違憲審査基準に事例をあてはめ、やむを得ない事由はないと最高裁は判断〉


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