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経済学は「科学」である

最近は、昼まで寝てしまい、すっかり病院のデイケアへも行かなくなってしまった。入院している、重い統合失調症の友達からも、会いにゆかないので、心配される始末である。
さて、今回は、前回の「経済学は俗学である」という、マルクス経済学中心の記事に対して、「科学」としての、非マルクス経済学について書いてみようと思う。
前回の記事に登場していただいた、浅田彰氏の京都大学での師匠に、佐和隆光という人がいる。ぼくが、名前を知ったのは、入学したときに大学の決まりで、佐和隆光が編集した、日本経済新聞社から出ている、「経済学用語辞典」を買うことになったからだった。浅田彰氏は、佐和隆光のもとで、今回お話しする、理論経済学(ミクロ経済学+マクロ経済学)を専攻されていたようである。とはいっても、ぼくには、難しいことはわからないので、佐和隆光の、「佐和教授はじめての経済講義」(日本経済新聞社)を読みながら、読者と一緒に学び直したい、と思う。
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「はじめての経済講義」によると、科学哲学者カール・ポパーは、新古典派経済学(ミクロ経済学)やケインズ経済学(マクロ経済学)を「科学」として認めたそうだ。一方でマルクス経済学は、「非科学」である、と判断した。ミクロ経済学の主体が、企業・個人といった集合体なのに対し、マクロ経済学の主体は、一国全体である。
科学について、佐和は、ニュートン力学が、科学のひな型を作った、とする。「理論から出発して、演えき(論理)的に、ある命題(たとえば惑星の運動に関する)を導きます。その命題が現実のデータと整合的(ニュートン力学が導く惑星の運動に関する法則が、惑星の運動に関する観測データと一致する)ならば、理論は「確証」(confirm)されたことになります。逆に、理論から導かれた命題とデータがくいちがえば、理論はデータにより「反証」(refuse)されたことになります。いったん反証された理論は、「擬」と断定され、葬り去られることにならざるを得ません。確証を積み重ねれば、その論理の「確からしさ」が高まりますが、だからといって、理論が「真」であることが示されるわけではありません。理論をデータと照らし合わせることを「検証」(verify)といいます。」

その上で、経済学の命題も、これに当てはまるのではないか、という。

「さて、「家計が所得制約のもとで効用を最大化する」との仮説、「限界効用は逓減する」との仮説のもとに、「財に対する需要曲線は右下がりである」といった命題が導かれます。たとえば、「牛肉に対する需要曲線は右下がりである」という命題は、データと照らし合わせて検証することができそうですよね。一般に、データと照らし合わせて検証することのできる(検証可能な)命題のことを「有意味」(significant)な命題といいます。有意味な命題を導くことができる仮説の体系のことを「科学」といいます。逆に、有意味な命題を導くことのできない仮説のことを「非科学」といいます。」

ここで、ポパーの価値判断が出てくる。

「科学哲学者カール・ポパー(1902~1994)は、新古典派経済学やケインズ経済学のことを部分工学(piecemeal engineering)と呼び、上記の意味での「科学」としての合格点を与えたのです。工学とは、なんらかの目標を達成するための手段を考案し、その手段の効果を数量的に評価する知的営みのことを意味します。たとえば、「金利を下げれば、民間企業の設備投資が増える」という命題は、まさしく部分工学的であると同時に、過去の時系列データに照らし合わせて、その真偽を確かめる(検証する)ことができます。」

一方で、マルクス経済学が非科学という話だが、

「他方、ポパーにより「非科学」の烙印を押されたのが、ほかでもないマルクス経済学だったのです。なぜそうなのかというと、マルクス経済学は「資本主義の歴史的法則」を解明しようとするのですが、歴史に法則などあり得るはずがない、とポパーはいうのです。実際、社会研究の科学・非科学の「線引き」をしたポパーの著書の題名が『歴史主義の貧困』だったのです。歴史主義(hisitoricism)とは、歴史の必然的な法則を発見したかのようにいうイデオロギーのことを意味します。しかし、マルクスのとなえた「資本主義の歴史的法則」(生産関係と生産力の矛盾により、資本主義は必ず崩壊する)は、資本主義ではなく社会主義の崩壊により(一時的にせよ)「反証」されたかのようです。」

引用ばかりの記事になってしまったが、科学といっても、福島原発事故をみれば判るように、それが絶対的だという信仰は打ち捨てなければならず、グローバリぜ―ションなど、マルクス問題も山積しているのである。バランスよく学んでゆきたい。


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