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解熱剤

時代劇を見られたことがあるだろうか。
ザッピング中に見かけたのではなく、見ようとして見たことが。


時代劇作品は基本的には『勧善懲悪』ものであり安心して見ていられる。
歴史上の人物をモデルとしているケースが多く史実は別として
日本におけるヒーローの原点を感じることができ
自分の中の正義感の存在を確かめることができる。

私は時代劇が好きである。

シリーズものとして展開されている作品もあり
物語の脚本傾向や中心人物の身分など、
カテゴライズは多岐にわたる。
ただ、今回この内訳について話し出すとキリがなくなるのと本回で言及したいこととは異なるので避けることにする。

今回は、私が試聴したあるシリーズ作品についての感想を中心にしたいと思う。
作品名については控えることにする。


構成、内容はいわゆるベタといわれる展開である。
城下町の露店で勤務する町娘が悪徳商人に縁談を持ちかけられすったもんだするが…
結局は「親分さん」が登場し、悪徳商人を成敗。
コトを丸く収め一件落着というものである。

その大筋のもと話は進むのだが
あるシーンで、貧乏人の町人が息を切らしながら全速力で親分さんのところまで事件発生を伝えにくる場面があった。

町人は口を大きく開け大声を出すところであったのだが

町人(役)の奥歯に治療痕、銀歯があった。

私は江戸のいち小市民であると錯覚さえしながら作品に熱中していたのだが、それが見えた途端急に冷めたのだ。
いや、醒めたと言うべきであろうか。

もちろん、銀歯そのものを嫌悪しているという主張ではない。
ルッキズムに近い主張をするつもりは毛頭ない。

このような【注意】を書かなくてはならないと意識している自分も嫌になってきているのだが、改めて別回にて論じたい。


視聴者を劇中に没入させるような
スター俳優の熱演、名演技。
一挙手一投足に魅了され、手に汗握りなぎら見つめていた画面。

ところが、作中に銀歯の存在を知覚した途端
液晶という境界が厚く重いものとして現れ、私と江戸の町とを分断した。

令和の時代にテレビを通じてフィクション作品を試聴しているという事実を痛感させられた。


ギャグやエッセンスとして散りばめられている『メタ』
それは時に作品をより印象的でオシャレにさせる技巧であるとは思う。

しかし、製作者の意図しないところから『メタ』を拾ってしまうと視聴者の熱を急速に減退させる。

主題を『メタ』とする稀有な作品もあるが。
※アニメ ポプテピピック を想像してほしい。


なにかの製作者になる際には
その受け手とやりとりする熱量、距離をどう保てるのか解熱剤としての要素を内包していないのか一考する必要があると感じた。


某解熱鎮痛剤のように
半分は優しさでできた人間になりたいと強く思う。
そんな2月中旬の夜。



よろしくどうぞ。

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