Junichi Yoshimura

「消費文化理論から見るブランドと社会」プロジェクト進行中|『マーケティングと生活世界』…

Junichi Yoshimura

「消費文化理論から見るブランドと社会」プロジェクト進行中|『マーケティングと生活世界』(ミネルヴァ書房、2004年);『インターネットは流通と社会をどう変えたか』(中央経済社、2016年)|駒澤大学経済学部教授|マーケティング論・消費文化理論|「個人の見解」発信

最近の記事

94歳のゲイ 見る価値有りです

「94歳のゲイ」をみてきました。漠然と予想していたよりもかなり良い作品でした。ご本人のあり方はもちろんですが、時代背景、人と人との交流、コミュニティなど考えさせられることがたくさんありました。西成の炊き出しで立ったまま屋外で黙々と食事をする一人の高齢者の姿から映画は始まります。これが主人公の長谷忠さんです。 作品は、民放テレビ局(MBS)で放送されたものに新たなエピソードや映像が追加されて映画化されたもので、ソーシャルメディアの発達やミニシアター文化の定着などが優れたドキュ

    • 『消費文化理論から見るブランドと社会』が出版されました

      編集と執筆を担当した『消費文化理論から見るブランドと社会』(中央経済社、2024年)が発行されました。Amazonでも販売が開始されましたので、紹介させていただきます。 8名の執筆者からなる共著です。「消費文化」という用語は他の学問領域でも広く用いられている用語でもありますが、私たちはマーケティングと消費の関係を研究しているマーケティング・流通の研究者です。今回、マーケティング研究において2000年代に入って急速に注目されるようになった消費文化理論を用いて、現代社会における

      • PERFECT DAYSにおけるミニマリスト的世界観

        映画PERFECT DAYSを鑑賞してきました。この作品は、カンヌ国際映画賞で主演男優賞を獲得するなど前評判が高く、見に行かねばと思っていてようやく行くことができました。 作品の評価が分かれているらしい みなさんの作品への評価は必ずしも一様ではないようです。ネガティブな評価の代表として取り上げられているのが作家の平野啓一郎さんのXでのコメントですね。もっとも平野さんは、まとまった話を展開していません。どのような感想をお持ちなのか知りたいところです。 私は大変面白かったの

        • 編集作業終了 『消費文化理論から見るブランドと社会』3月刊

          『消費文化理論から見るブランドと社会』中央経済社(3月発行)の編集作業がすべて終了しました。白とブルーを基調としたカバーデザインも気に入っています。楽しみにしてください。8名の研究者で研究会を重ね、出版の準備をしてきました。いよいよ出版となるとそれなりに感慨があります。 様々なことが思い出されます。学会の後、ひっそりとした教室に集まって、研究会を開いたこと、新宿のコワーキングスペースで研究会をやって、そのまま懇親会に突入して楽しかったことなど。研究会前半では気心がしれたメン

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          「哀れなるものたち」を見ました

          先日、二子玉川の映画館で「哀れなるものたち」を見てきました。仕事が一区切りついたので、さて映画にでも出かけようということでこの作品へ。 私はまったくの事前情報なしで映画を見に行くことはありません。お金を払って、しかも一定時間を費やすわけですから、それほど冒険はしたくない派です。もっとも私自身の体調とかその時のモードによって、かなり好みは揺れるのですが。今回、事前情報としては、エマ・ストーンが出ている。画が美しそう。性表現が多いらしい。フェミニズム的な前向きの評価がなされてい

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          [映画]福田村事件をみる

          映画福田村事件は、1923年9月6日に起きた実際の事件から映画化されたストーリーだ。特定のエリアで、特定の時代で、特定の状況で、いわば極限状態で人はどう動くのかが描かれる。殺す人たち、殺される人たち、そしてなんとか事件を止めようとする人たち。 ラストの殺戮シーンは圧巻だったが、うまいのは前半だ。どんな人が殺す人で、どんな人が助けようとする人かが描かれていく。今回殺されるのは、特段善良な人々でも特段悪い人たちでもない。普通の人々だ。 森達也監督はドキュメンタリー作品を撮って

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          ロードアイランドそして消費文化理論

          2004年夏休みも終わりにさしかかる頃、私はアムトラックのキングストン駅に降り立ちました。駅には、ドラキア研究室一門のマークさんやジルさんが車で迎えにきてくれていました。マークは京都大学を卒業しており日本語が完璧で、ジルは不動産所有者で私用の住まいを手配してくれていました。駅からニューイングランドの森に入るとすぐにロードアイランド大学のキャンパスです。キャンパスの横を抜けるとやがて海が広がり、避暑地として名高いニューポートとの分岐点に出ます。そこを左折してノースキングスタウン

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          「658km、陽子の旅」は、日本版ノマドランドか?

          クロエ・ジャオ監督の「ノマドランド」は、格差が広がる中で取り残される底辺の側から現代社会を映し出した作品であった。同じくロードムービーの様式をとった熊切和嘉監督の「658km、陽子の旅」は、日本版ノマドランド的な味わいであった。ともに現代社会をテーマにしているだけに、どこか似ているようでもあるが、まったく異なる方向性を感じた。 ノマドランドでは、世界中を飛び回るエリートノマドだけではなく、下流に生きるものたちもやはりノマドとしてしか生きていくことができない現代社会の現実を描

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          私的消費研究史

          学部生時代に、マーケティング研究会というサークルに所属していました。年間に何度かグループで論文を書き、各地・各レベルで開催される大学生の討論大会に出るという活動をしていました。 部室棟の上層階から聞こえてくるハワイアン演奏の音を聞きながら、毎晩夜遅くまでミーティングをして論文を作っていました。2年生の時に執筆を任された論文の一節が「コンシューマリズム」でした。マクロな視点で消費について考えたり、アクティビズムを積極的に評価する今も続く私の研究姿勢は案外この最初の仕事と関わっ

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          noteをはじめました。使用者の気分を知っていた方が良いと思っているので、他の各種SNSも使っています。Twitterは、新聞やタイムラインを見ながら感じたことを、Instagramは、どこかに行った時に撮った写真を公開できる範囲で、そしてFacebookは、先輩研究者やかつての同僚に向けての業務報告として利用しています。すべてフォローしてくれている人もいますが、それぞれ発信している内容も違うし、みてくれている人も違います。もっとも、どれもこれも力の入らない、中途半端な発信で

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