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初!note

書こうかどうしようか、迷い続けていたのですが、そして、noteを使いこなせるか全く自信がないのだけど、書いてみます。3日坊主になったらごめんね。

2020年2月のある朝。昨日までは毎日歩き続けていた夫が、ベッドから一歩も動けなくなっていた。
というより、上半身はベッドに仰向け、下半身は床。つまり、ベッドから床に足を下ろしたところで、激痛が走ったのだろう、上半身がそのままベッドに倒れ込み、動けなくなっていたのだ。

夫の様子を見に寝室に入ったところで、そんなことになっていたので、驚くよりも先に、まずはベッドに体を戻した。背中と腰が痛い、立てないという。でも本人は病院には絶対に行かない、という。

5日間様子を見守ったが、一向に回復する兆しはない。遂に「今日は救急車を呼びます」と有無を言わせず、病院に運んだ。

診断の結果は、腰椎圧迫骨折だった。院長から入院の手続きの説明を受けていた時、夫はストレッチャーから降りようとし、帰ると言い出した。それを見た院長は、
「これは大部屋では無理ですね、個室になります。身体拘束もせざるを得ないなあ」
と言われた。夫のわずかな行動に異常を認めた院長ならもしかして、何かわかるかもしれないと、私はすがるような気持ちで聞いた。
「ここで認知症の検査はできますか?」

院内に神経内科があるという。すぐに骨のレントゲン以外に脳のCT検査もしてくれることになった。

数日後、担当医からCTスキャンの画像が示された。
「前頭側頭型認知症です、ほら、ここもここも委縮があるよね。これは人格が破綻してゆく行動異常型、まあ、我が道をゆく、神経系の病気です」。
その日から、一気に暮らしの風景が変わった。夫は要介護4となった。介護ベッドやヘルパーの手配などを済ませ、自宅療養の体制も整えた。

3週間ほどで退院。「このまま寝たきりになってしまうのか」と心細くなっていたが、往診してくれた医者の言葉に心底たまげた。
「痛みが取れたら歩けますよ」
幻覚、幻想を口にする夫が動き出したら何が起こるのだろう。医者の言葉のとおり、夫は回復し自力で歩けるようになった。そして事件は起きた。事件などというと大げさに聞こえるかもしれないが、家族からしたら大事件だった。マンション管理組合からの苦情に都度頭を下げ、次から次と対策に追われた。

夫は、自分で食事をする、排泄、歩く、不快感を表す、言葉に反応する、そして、しゃべり続ける。何の意味もない(と受け取れる)言葉をいかに大切なことであるかのように話し続ける。しかし理性的に、理知的に判断する機能は失ってしまった。
夫の食事の支度をし、髭を剃り、入れ歯を洗う生活も2年目になったある日、ふと、気がついたのだ。自我が破綻しているにも関わらずしゃべり続ける夫は、もしかして、生き神様になったのではないか。
生き神、というと、予言のようなメッセージを告げる存在、と思っていたが、そうではなく、時間も空間も、今自分がどこにいるのかなども認知せず、ただただ右脳から生み出されるカオスの言葉の海のなかに存在している夫。この世界の中にありながら世界のどこにも属していない存在。

ニコニコしゃべり続ける夫は、自分の脳が委縮していることすら理解していない。夫は生き神様になった。

そっか。生き神様って、こういうことなのか。ご機嫌だとニコニコ、不機嫌だと怒りを露わにするけど、ただそこにいるだけ。

この人とともに最期まで生きてゆこう。この人がここにいてくれたことに心から感謝を送ろう。今なら夫との日々を綴ることができる。そんな思いをもってnoteを始めてみます。

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