エンジニアのための経済学(1)

【この記事は、メルマガ「週刊 Life is Beautiful」(http://www.mag2.com/m/0001323030.html )に掲載している連載コラム「エンジニアのための経済学」を抜き出したものです。】

理科系の学生や、若手のエンジニアには、「コーポレートガバナンス」などの言葉を聞くと、「そんな話には興味がない」「私にはまったく縁のない話だ」と拒絶反応を起こしてしまう人も多いと思う。私もそんなエンジニアの一人だった。

しかし、26歳の時に渡米し、40歳の時に自分でベンチャー企業を起こすなどの経験を通じて学んだことは、資本主義社会の中で働くすべての人にとって、ある程度の経済学・経営学を理解しておくことはとても大切だということ。

経済学に興味が全くない人も、経営とはほど遠い仕事をしている人でも、自分の職場や日本の社会に対して色々な不満は疑問は持っているはずだ。

・同じ仕事をしている人たちの中に正社員と派遣社員の二種類がいるのはなぜなのか
・役にも立たない仕事をしている上司がなぜ自分より良い給料をもらっているのか
・自分が働く職場には無駄が多いのになぜ誰も直そうとしないのか
・なぜ日本の学生は3年生から就職活動に専念しなければならないのか
・なぜ日本の政府は大企業ばかり優遇するのか
・なぜホリエモンは逮捕されたのに、同じ時期に同じような粉飾決済をした日興コーディアル証券からはだれも逮捕者が出なかったのか

などなどである。

もちろん、そういう疑問は放置したまま、時々居酒屋で上司や会社の愚痴をこぼしながら生きて行くというのも一つの選択肢である。

しかし、日本がGNPで中国に抜かれ、国内でも終身雇用制が徐々に崩壊しつつある今、それではいざという時に、判断材料が乏しすぎて冷静な判断ができなくなってしまうと思う。

「いざという時」とは、具体的には以下のようなものである。

・突然解雇を言い渡される
・働いていた会社が倒産する
・働いていた会社が外資系の会社に吸収合併され、外人の上司がやってくる
・実家で小さな工務店を経営している父親が倒れ、経営を引き継ぐように頼まれる
・尊敬していた上司が、別会社を作る事になり、そこに誘われる
・学生時代の友達が作ったベンチャー企業に誘われる
・「どうしても作りたい」と思うものを見つけたのに、会社は作らせてくれない。

当然、答えは一つではないし、「正解」なんてものはない。しかし、「ここは思い切って転職すべきか」などの人生にとって大きな決断を迫られた時に、冷静で合理的な判断が出来るかどうかは、普段から「会社とは何か」「成功する会社に必要なものは何か」を考えていたかどうかで大きな差がつく。

そんな意味でも、「いつかは自分でベンチャー企業を起こしてみたい」人はもちろんのこと、「自分は自分の会社を始めるつもりもベンチャー企業に転職するつもりもない」人も経済や経営に目を向けるべきであると思う。

(つづく)

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