見出し画像

VR ライフスタイルと結婚の両立

少し前に、コピーライターの Ryojin Sasaki 氏が Twitter に投稿した画像がとても秀悦だったので紹介します。

今、VRによって何が起こりつつあるかを的確に表した素晴らしい作品だと思います。

ネットの世界での出来事や人間関係の方が、その人にとって(リアルな世界でのそれよりも)重要、というケースはすでに起こりつつあります。オンラインゲームに「廃人」と呼ばれるまで没頭してしまう人、SNS上でのコミュニケーションがリアルの世界のコミュニケーションをはるかに凌駕してしまっているティーンエージャー、出会いサイトで意気投合していきなり結婚してしまうカップル。

そんな行動に、最初は多くの人たちが違和感を持ちますが、時代と共にそれが「普通」になっていくのが人間社会です。

VR(仮想現実)が社会に与えるインパクトに関しても、そんな目で見る必要があると感じています。

人類の進化の過程で、「言葉」と「文字」の発明は大きな意味を持ちました。「言葉」により人類は、他の動物を大きく上回るコミュニケーション能力を得たし、「文字」は人間に文明を与えました。

19世紀中頃には、ラジオ・テレビ・電話が発明され、それが人々の生活や仕事の仕方に大きな影響を与えました。

20世紀の後半には、携帯電話とインターネットが発明され、それが21世紀になってスマートフォンという形になり、私たちのライフスタイルを大きく変えました。

VRも、スマートフォンと同じような(ひょっとするとそれ以上の)影響を人類のライフスタイルに影響を与えると思います。

VRのエンターテイメント・デバイスとしてのポテンシャルは、VR Zoneの「ハネチャリ」などを体験して実感していましたが、やはり家庭でも手軽に使える Oculus Go を手に入れて、ライフスタイルへのインパクトの大きさを実感しました。

Oculus Go を入手してもっとも感じたのは、その没入感の強さです。「ピントが合わない、解像度が低い、コンテンツが不十分」などの欠点がありながらも、没入感の強さは絶大で、パソコンやスマホとは比較になりません。

私は、ただでさえ、「パソコンやスマホばから見ている」と妻に指摘されているのに、これに 没入感の強い VR が加わったら、本当に夫婦の会話がなくなってしまうと感じました。つまり、VRと結婚の両立はとても難しいのです

Oculus Go は、ピントのズレが耐えられないので(メルカリで)売却してしまいましたが、この手の欠点が解消された VR が手軽に入手できるようになる日も遠くないと思います。

そうなると、VRによりエンターテイメントの幅が大きく広がり、VRビジネスが大きく花開くというプラスの面もありますが、VRの世界に入ったまま何時間も帰って来ない人が増え、「VR離婚」の増加、VRのやりすぎによる肥満や運動不足(VR肥満)、不登校や失業などもマイナス面も必ず増えて、社会問題になることは明らかです。

そして電車の中など公共な場でVRを楽しむ人が現れ、それが新たな社会の歪みを生み出すでしょう。今や電車に乗っている人の多くがスマホを操作していますが、それが VR に変わる様子を想像して見てください。(参照:Man causes chaos playing VR game on daily commute)。

VRの場合、他人から覗き見される心配がないので、電車の中で隣に座っている人がアダルトコンテンツを楽しんでいる可能性だって十分にあるのです。

ちなみに、先日、「2033年までに世界で行われる性行為の10分の1がアンドロイドを相手としたものになる」との調査予測を紹介する記事(ロシア初のセックスドール・ホテル モスクワで開業へ)を読みましたが、私はその役目を果たすのはアンドロイドではなく、 VR だと思います。

進化したVRは視覚と聴覚だけでなく、五感全てに刺激を与えるようになります。そう考えれば、VRによる性体験のクオリティが現実のものを超える日は決して遠くなく(おそらく3~5年)、それが先進国の婚姻率の低下や少子化に与える影響(VR少子化)は少なくないと思います。

こうやって VR について考えていると、ようやく(当時はピント来なかった)Facebook による Oculus の買収の理由が見えてきます。Mark Zuckerberg には、VR が人類のライフスタイルに与えるだろうインパクトをあの時点で的確に認識し、そのイノベーションを自ら起こす立場になることこそが、Facebook のビジネスを継続的に成長させる鍵になると判断したのです。

この記事は、メルマガ「週刊 Life is beautiful」(2018年6月19日号)からの引用です。毎週火曜日、米国のIT事情やベンチャー市場、および、米国と日本の違いなどについて書いています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?