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きょう心にしみた言葉・2024年2月19日

日本では「素直」という英語には訳すことのできない「よい子」を示す言葉があるが、このような子どもはアメリカでは下手をすると「アグレッション」のなさすぎる悪い子に分類されるだろう。

日本では競争は悪であるかごとく教えながら、受験競争にだけは勝ってほしいと言うのだから、子どもたちが歪んでいくのも無理はない。

「子どもと悪」(河合隼雄・著 岩波書店)

臨床心理学、ユング心理学の第一人者の河合隼雄さんの著書は、大人たちがつくる「善悪」の基準が、子どもたちをどれほど苦しめているのかを様々な観点から論考しています。
例えば、アメリカで「アグレッシブ」という言葉は、子どもを評価する意味で使われることが多いのに、日本では「攻撃的」と訳されて否定的な意味合いを持つことが多いと河合さんは指摘します。「競争」にしても、個性を競わせるのではなく、すべての子どもを一様に序列づけるシステムの中で、出来る限りに上をめざす競争であり、それが、子どもたちの自由と創造性を奪っているといいます。

ウソにも、人生を面白くするためのウソと虚偽のウソがあるのに、人生を面白くするためのウソもいけないと押し付けている…。
「いじめは悪」だと単純なスローガンにしてしまうと、いじめを「チクル」ことが子どもの「悪」になり、子どもはふたつの「悪」の間で苦しむ…。
内緒の約束で「いじめ」の事実を聞かされたカウンセラーも、対応を間違えば、「悪」になってしまう…。

人間は善いことも悪いこともする存在であり、断罪を急ぐのではなく、その行為の向こうにある存在を奥深く見つめること。その大切さが繰り返し述べられています。
この本は最後にこんな文章で結ばれています。

悪を拒否しようと思いつつ、それをせざるを得ない存在として、大人も子どももその自覚の上に立つことによって、相互の交流を感じるだろう。そのような過程のなかで、悪が善に変容することさえ体験することになるだろう。




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