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ライフリンク・メディア報道・2023-2024 年末年始③

下野新聞秋田魁新報埼玉新聞千葉日報伊勢新聞などは、2023年12月に連載記事「うつをこえて 自殺を防ぐために」を掲載しました。筆者は、日本自殺予防学会理事長、張賢徳さんです。自殺対策の歴史を振り返り、ライフリンクの取り組みを評価しました。

1998年に到来した年間自殺者3万人時代。研究者の一部には「一過性の現象かもしれない」との楽観的な見方もあったが、事態は甘くなかった。2012年に3万人を割り込むまで、14年間も続くことになる。

この状況をなんとかしないといけない。しかし当時、国による組織的な自殺対策はなかった。民間団体の活動も限られていた。その一つが日本自殺予防学会だが、98年当時は会員が200人に満たない弱小学会だった。
国の自殺対策が大きく動き出したのは06年。超党派の議員立法で自殺対策基本法が成立したのだ。背景にはNPO法人自殺対策支援センターライフリンクによる10万人署名をはじめとする精力的な活動があった。

縦割り行政の壁を突破できたのは、この法律が超党派の議員立法だからだと思う。そして、議員を動かした力が、NPO法人自殺対策支援センターライフリンクによる10万人署名だった。彼らは自殺を社会的問題と位置付け、予防には貧困や失業などの社会的要因を踏まえた総合的な対策が必要だと訴えた。
自殺予防には二つのアプローチがある。一つは社会的要因を重視し、それに働きかけるポピュレーションアプローチ。公衆衛生アプローチとも呼ぶ。もう一つはうつ病など自殺リスクが高い人に直接働きかけるハイリスクアプローチだ。
自殺対策基本法は前者を重視している。後者では厚労省が大きな成果を上げた。05年に立ち上げた戦略研究で、自殺未遂者に多職種のスタッフで継続ケアを実施すると再度の自殺行動が減ることを証明した。

ポピュレーションアプローチは社会全体を良くする対策。ハイリスクアプローチは本当に困っている個人への対策。双方を共に進めることが理想だ。日本では自殺対策基本法の誕生でさまざまな対策が一気に動き出し、双方の歯車がかみ合い出した。法律の力に感謝している。

ライフリンクと連携して自殺対策を進める東京都足立区の取り組みが、季刊誌「毎日フォーラム」秋号で紹介されました。足立区で自殺対策をけん引してきた馬場優子部長のインタビュー記事も掲載されました。

東京都足立区は、2009年にNPO法人自殺対策支援センターライフリンクと協定を締結し、全国の先がけとなる自殺対策を進めてきた。区長のもとに全庁の組織が一体となった自殺対策戦略会議を置き、ハローワークでのワンストップ相談や、区民や職員等の立場からSOSに気づき、つなぐ「ゲートキーパー」の育成、学校現場での「SOSの出し方等教育」などきめ細かな対策を切れ目なく打ち続けている。こうした「オール足立の自殺対策」の礎を築き、今も現場で指揮を執るのが、衛生部長の馬場優子さんだ。自殺対策に携わって15年以上になる馬場さんに、現状の課題と展望を聞いた。

2008年5月、東京都の自殺対策市区町村説明会において清水康之・ライフリンク代表の講演で「自殺は追い込まれた末の死であり、個人が選択した訳ではない。自殺は防げる」という言葉に衝撃を受け、自殺者が多い足立区として自殺対策に取り組んでみようと決意しました。

区長も清水康之・ライフリンク代表の話を聞いて自殺への認識が大きく変わったといいます。当時、区長は自身のブログに、自殺は覚悟の死で他人が踏み込めない領域と考えていたが、自殺した人の約7割が生前に相談窓口を訪れていたことを知り、自分の思い込みを恥じた、という趣旨をつづられていました。区長が先頭に立ってくれたことで、全庁一丸「オール足立の自殺対策」への道筋ができました。成果も確実に表れました。

講演に来られた東京自殺防止センターの西原由記子さん(故人)から「自殺は孤立の病ですが、自殺対策の担当者が孤立してはいけません」と言われました。まさに、その通りだと思います。担当者自らが孤立することがないように、常に周りの職員や上司と共通認識が持てるように、コミュニケーションをとりながら進めることが重要だと考えます。

写真は、富山市のガラス美術館にて。


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