見出し画像

きょう心にしみた言葉・2023年3月13日

「ひとり」でいることの意味、「ひとり」で立つことのしみじみとした喜び。そういうものを理解するようになったら、他人と群れなくてもこの世はそんな怖いものではなくなります。ひとりでいる時間を楽しむこともできるでしょうし、ひとりだけの世界をさらに豊かにすることもできる。「孤独」の寂しさに苦しむより、むしろ自分が自分自身であるという満たされた感覚が生まれてくるかもしれない。そうなればしめたもので、人間というものがずいぶん強く生きられる存在だということがわかるようになる。

「わたしが死について語るなら」(山折哲雄・著、ポプラ社)

今年92歳になる宗教学の大家、山折哲雄さんは、学生時代から何度も大病を患い、死の淵をさまよいました。生と死をめぐる山折さんの深い思索の底流には、死と向き合った壮絶な体験があります。引用した著書「わたしが死について語るなら」は、子ども向けに刊行された「未来のおとなたちへ語る 私が死について語るなら」を、内容をほとんどそのままに年長者向けに編集し直したという異例の作品です。平易な言葉で綴られた透徹した文章は、世代を超えて訴求することを実感します。冒頭の文章の後に、山折さんはこうも書いています。「困ったことに、いつのまにか日本では、友だちがたくさんいることの方がいいというふうになっているらしい」「しかし、本当は『ひとり』でいることが好きな子どもだっているわけで、そういう子が『みんな一緒に』を強要されたら立つ瀬がないし、たまったものではありません」。山折さんは、ひとりは怖くない、ひとりはあなただけではない、と丁寧に語りかけています。大人も救われる言葉です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?