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小雪|2023.11.22-2023.12.6

日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。

11月23日(木) アイヌ料理の調理体験 「ポロトキッチン」

白老のウポポイで、アイヌ料理の調理体験「ポロトキッチン」に母と一緒に参加する。博物館ではどのように食の体験を実施しているのか興味があって、いつか参加してみたいと思っていたのが、ようやく叶った。

11月のメニューはチェプオハウ(鮭と野菜のスープ)とチポロラタシケプ(イクラとジャガイモのあえもの)、シプツケプメシ(イナキビごはん)、ボツボツ(カボチャと豆の混ぜ煮)風蒸しパン。デザートはアレンジ料理だけど、他はよく知られている料理だ。

最初に、季節の食材の紹介があり、秋の食材としてはイナキビ、シケレペ、ジャガイモ、そして鮭。鮭はシペ(本当の食べもの)やカムイチェプ(神の魚)と呼ばれるとのこと。こうやって意味を説明されると、本当に特別な魚なんだなと思う。

オハウもラタシケプもシンプルな料理で、講師の教育普及の方は情報提供少なめだったけど、やっぱり、実際につくって食べることで、気づくことがある。

ひとつは、野菜の切り方と器。野菜はできるだけ大きめに切ってくださいと言われて、その理由は汁が染みるのが美味しいからということだったけど、最後にアイヌの木鉢に盛り付けてみると、やっぱり大きく切った野菜がしっくりくる。講師の方がアイヌの人に教えてもらったときにも「大胆に行け(切れ)」と言われたそう。

もうひとつは、チポロニナプ(イクラつぶし器)の注ぎ口。この器、博物館で展示されていて、どうして注ぎ口ついてるんだろうと思ったけど、実際にイクラをつぶしてみてわかった。これは注ぎ口いるわ。というか、イクラをつぶすっていうのは、油を絞るっていうイメージなんだなとわかる。

あとは油の重要さ。イナキビごはんには油を入れて炊き、オハウには最後に油をひとまわしする。チポロラタシケプには、絞りたてのイクラの油が入る。とにかく、料理に油が入る。アイヌの人が獣の脂や魚の油を調味料として使うというのは、知識として知っていたけれど、こうやっていくつも料理をつくって、それら全てに油(今回はサラダ油だったけど)を入れるという体験をしたことで、アイヌ料理と油のつながりが実感できた。そして、シンプルな料理だからこそ、油が甘みだということもわかり、実際身体もあったまった。魚の油は、冬の間に不足しがちなビタミン類の摂取にもつながる。

蒸しパンに入っていたシケレペは、私自身は大好きで、香辛料として料理に独特なアクセントをつけるもの、というイメージだった。ただ、講師の方の話では、シケレペはアイヌの人でも苦手な人が多く、一方、薬としての役割もあるので、料理に混ぜ込んで食べやすくしている、という側面もあるとのことだった。

チェプオハウの鮭は「主食」に恥じない量で、関西ではなかなか食べる機会のない北海道の鮭を思う存分食べられて、本当に大満足。参加費は一人1500円、つくって食べて知る体験としては破格だし、ウポポイ内でランチを食べるということを考えてもリーズナブル。いつも満席というわけではないみたい。せっかくなら、多くの人に体験してみて欲しい。

11月27日(月) 小雪の買い出しと無花果の酵素シロップ

スマイル阪神に小雪の買い出し。葉物がかなりワサワサしてきた。小松菜、ホウレン草、水菜などの葉野菜はもとより、大根、蕪、人参にも葉がついている。白菜も充実、島ひとつ占領。今年はまだ食べていないとバターナッツカボチャを買おうとしたら、ずいぶん大きく育っていて、値段も大きくなっていた。早いうちの小さいのが、使いやすいし、買いやすい。香り柑橘は酢橘、カボスから柚子に移行している。柚子は本当にものによって香りが全然違うので、ひとつひとつかいで、香りのいいものを探す。同じ柑橘でも柚子の香りははっきりと冬の香りがする。

そして、ついに無花果が売り場から消えた。8月の頭に並び始め、11月の終わりまで。4ヶ月も食べ続けられるのは、本当に産地ならでは。はしりの頃の瑞々しく、さわやかな感じから、徐々に水分が抜けて、味が凝縮し、円熟味が増していくけれども、最後の最後には、温度が足りずに熟しきれなかったのか、切ってみると思わぬ未熟で初々しいものもあったりして、「人」生ならぬ、「無花果」生も様々だなと思わされる。この3年間、無花果を食べ続けてきて、やはり生で食べるのが一番美味しいと思いつつあるけれど、生感を維持しながら無花果を保存する方法として、名残も名残のタイミングで酵素シロップを試してみる。好きになれそうなら、来年もう少しちゃんと試していこう。

11月30日(木) 山椒酒のソーダ割り

夕食後、お風呂の合間に、山椒酒を炭酸水で割ったものを飲む。何年も前に実山椒をホワイトリカーにつけたものを、少し前に発掘した。これを炭酸水で割って飲むと不思議なことに、ハイボールのような味になる。山椒のピリッとした刺激も微かに残っている。山のハイボールとでも名付けたい。意外と和食の食中酒になりそう。

12月4日(月) 実験料理でエノキのスパゲッティ

夕食はひとり。ネギの青いところがたくさん残っていたので、フライパンに引いて、鶏モモを上に乗せて、ワインを入れて蓋をして蒸す。ソースはつくったことのないものにチャレンジと、豆乳と粒マスタードのソースをつくったが、ちょっとはずれ。ネギの焼いたのと粒マスタードの酸味が合わなかったような気がする。鍋のネギとポン酢は合うのに。でも、ひとりの時には、大胆に失敗できるからいい。とはいえ、2皿目のパスタは確実に美味しくして終わらせたいと思う。エノキを使い切りたくて、つくったことのないエノキのパスタにする。パスタはスパゲッティを選ぶ。大量のエノキをバターで蒸す。パンチェッタも薄切りして入れる。水分が出てきたところに、パスタの茹で汁を入れて、豆乳も少し入れて、クリーミーに。香味野菜としてニラも少し入れ、茹で上がったスパゲッティとバターをひとかけらを入れてあえる。これは成功。パンチェッタの旨味も吸い込んだエノキが豆乳ソースで麺と一体化している。カサ増し効果もある。美味い麺が足された感じ。昔、レジデンスに来ていたエジプト人のアーティストが「今日、ものすごいナチュラルな麺を食べた」と言っていて、よく聞くとエノキのことだったのを思い出した。ナチュラルな美味い麺入りスパゲッティ。

12月6日(水) 利休会記を読み解く会

6年ぶりに、半澤鶴子先生の講習に行く。千葉の東金ではなく、京都の八瀬に。南方録を読み、利休会記をもとにお料理をつくっていただく。6年前と変わらずに、淡々と魚を捌く鶴子先生に再会して、自分自身が変化していることに気づく。


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