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スキーマ療法(対話のワーク)のススメ

 私は数年前から認知療法や認知行動療法、マインドフルネスなどを用いて心のセルフケアを継続していました。しかし、少し前からそれらの療法ではなく「スキーマ療法」に関する本を購入して読んでおり、一時期定期的に「対話のワーク」をする時間を持つ事にしていました。あまり知られていないと感じる療法なので、今現在悩んでいる方の一助になればと思い今回紹介させて頂きます。

 スキーマ療法の概論的な話は省略させて頂きます。wikipediaの記事を紹介しておきますが、他にも記事は色々とあるので興味のある方は調べてみることをお勧めします。
 宣伝ではありませんが、今回使用したのはこの「自分でできるスキーマ療法ワークBOOK」という書籍です。

1巻と2巻があり、それぞれ通して行う沢山のワークの内容が記載されています。本格的なスキーマ療法は2巻から始まりますが、前提知識として重要な要素が多く含まれているので、1巻から購入されることをお勧めします。
 
※注意
今回の記事はあくまで一当事者が経験した内容をまとめた記事ですので、内容の正確性につきましては各自ご判断頂ければと思います。またこの記事を読んで「スキーマ療法をやってみたい」と思った方は、既に医療機関または心理士のカウンセリングにかかっている場合、まずはそちらの方にご相談される事をお勧めします。

※追記
 スキーマ療法についてある程度概論から知りたい、という方には、下記にリンクを貼らせて頂いているくっぺ@復職さんのnoteがおすすめです。具体的なレッスンの体験談が章立てで詳しく記載されています。


スキーマ療法に対して今持っている印象

①認知行動療法の発展形
 
スキーマ療法は、大きな枠では認知行動療法(以下CBT)の仲間に入るかと思います。その発展形のようなものだとイメージして頂けると良いかなと思います。CBTの特徴やスキーマ療法との比較の話(そもそもスキーマってなんやねん、など)の個人的な意見については非常に長くなりますので、ここでは割愛します。CBTで自己治療あるいはカウンセラー等の支援を受けていたけれど、中々状況が進展せず行き詰りを感じている人の選択肢のひとつにスキーマ療法はなりえるのではないかと、実体験としては思います(それが選択肢の全てだとも思ってはいませんので、悪しからずです)。

②適応を選ぶ
 実際に自分がやってみて思いますが、まずCBTと比べて「しんどい…」と感じる事がとても多いです。なので、CBTと比較しても適応の幅は狭いように思います。例えばいわゆる急性期の時期にいきなりスキーマ療法をやってみて、上手くいく可能性がゼロとは言いませんが、かえって悪化するリスクも大きくなるのではないかと思います。この辺りは個々人の状態や状況によって千差万別だと思いますので、相談出来そうであれば主治医や心理士の先生に相談した方が良いと思います。私も主治医に相談した上で取り組みました。個人的には①体調が安定している ②合わないと思ったらすぐやめ(離れ)られる ③ある程度取り組む時間を余裕をもって確保できる この3点は必須ではないかと思っています。


余談:どうやってスキーマ療法を知ったのか

※読み飛ばし可。CBTを知らない方は分からない言葉もあるかとおもいますが、ご了承ください

 私は数年前にCBTを知り、心理士の方と共に自身の問題解決に取り組んでいました。そんな中で、どうしてもCBTのワーク(いわゆるコラム法)の中だけでは解決しきれない問題が残りました。それを心理士の先生に相談したところ

「それはあなたのスキーマに深くかかわった問題だから、CBTでは難しいかもしれない」

 という回答を頂きました。それがきっかけでスキーマについて調べ始め、スキーマに対する介入手段としてスキーマ療法があることを知った、という事がスキーマ療法に取り組んだきっかけになります。

対話のワークについて

 スキーマ療法は本来専門の心理士の方と共同で行うものかと思われますが、日本では専門に行える心理士さんが殆どいないと聞いています。国内では「伊藤絵美」という心理士の先生が認知行動療法やスキーマ療法その他諸々に関する一般向けの著書や訳本を精力的に出されていますが、その著書の中に上記のスキーマ療法のワークブックがあり、その中に記載されている沢山のワークの一つに「対話のワーク」というものがあります。個人的にはこのワークが最も重要で最も特徴的だと感じたので、自分が実際にどのようにやってみたかを含めて紹介させて頂きます。

対話のワークの手順について

 実際にどんな風にワークを行うかというと、まずはじめに自分の頭の中で2人の人を想像します。それぞれ「ヘルシーさん」「スキーマ」さんとでもしておきます。「ヘルシーさん」はいわゆるカウンセリング役の人で、「スキーマさん」に対して書籍に記載されているような様々な質問を投げかけます。その質問にどんどん答えていく形で対話を進めていきます。

 私のやり方ですが、対話はパソコンで文字入力しながら進めています。イメージとしてはドラマの台本を書くような感じでしょうか?文の頭に「へ:」や「ス:」をつけて、順番に会話を重ねていきます。完全に余談ですが、自分の中でキャラ付けをしたかったのもあってヘルシーさんは敬語で、スキーマさんは非敬語で会話をしていくようにしていました。

<参考例>
へ:こんにちは、よろしくお願いします  
 ス:こんにちは
へ:今日の気分はどうですか?  
 ス:あまり良くないね。
 へ:そうですか。眠れるようになると良いですね

 ※あくまで参考です。実際はワークで設定されている質問をここからドンドン重ねていきます。これをwordなりメモ帳あるいは手書きノートで書いていきます。

※自分で自分と会話するテキストを書き連ねていると「自分やばい人に見られないか…大丈夫か…」という何とも言えない不安が最初湧きますが、そのうち慣れますので大丈夫です。

 このように対話のワークを進めていくと、やがて「自分が普段無意識に言語化や意識化を避けていること」にぶち当たることがあります。そこにぶち当たれるのは、比較的客観的な立場で自分に言葉を投げかけてくれる「ヘルシーさん」がいるからです。その「ヘルシーさん」の問いに対してどう答えるか。あるいは、答えられないのか。「スキーマさん」が答えられない場合、「ヘルシーさん」が少し話題の矛先を変えるなどして対話を継続していきます。そのうちに、自分の中でも思いもよらない方向に対話の内容が変わっていくことがあります。たまに泥沼になりそうな事もあるので、やりすぎ注意でもあると感じますが。なので、私は行う場合は週に1回だけとワークを行う頻度をあえて制限しています。とはいえやはりプロのカウンセラーではないので、自己流で進めていると途中で答えに行き詰まり、中々そこから先に進めないこともあります。しかし、不思議な事に「ここまでは分かって、ここからは答えを出せないんだ」という事が文字化されると、それをやる前と比べて気持ちが楽になっていることがあるんです。自分で自分をカウンセリングしているような感じでしょうか。

 例えば余裕のない時に、「ああ、自分は疲れているな」とか、「今すごくイライラしているな」という事を自覚すらできずに調子が悪くなることがあると思います。それを一歩立ち止まって「自分は今こういう状態なんだな」と気付くだけで楽に感じることがあります。何というか、それに近い感覚なんですよね。毎回そうではありませんが、気長に続けると徐々に視界が開けるような心地よい感覚があります。テキストでは、この「対話のワーク」で自分のスキーマの輪郭の解像度が少し上がった状態(私見)で、更に次のワークに進み具体的な対策を講じていくという流れになっています。

おわりに

 個人的には、認知行動療法よりも自力で行うにはハードルが高く、時間もかかり、尚且つ侵襲(辛くなる、トラウマが蘇る等)のリスクも高いと思っています。「専門のカウンセラーに相談して治療を受けられそうならそうした方が良い」というのがスキーマ療法に対する私の意見です。ただ国内でスキーマ療法に精通している心理士の方はそれほど多くはいないらしいという事と、何よりカウンセリングにかかる費用ってけっこう高いんです。勿論専門家に見てもらった方が良いのは間違いないですが、中々経済的に厳しい方も多いはずです。そのような方の選択肢として、自分でワークブックを手に取ってやってみるという方法もあると思います。
 CBTやマインドフルネスだけでは中々気分が改善しない…という方は、一度試してみても良いかもしれません。ただし無理には行わない事と、ワークブックは必ず手元に置いて、順番に進めていった方が良いと思います。そして注意書きとして冒頭にも記述しましたが、主治医または担当の心理士がいらっしゃる場合は、必ず事前に相談したうえで行って下さい。

 スキーマ療法はその字の如く「自分の認知の根っこ」に触れる療法だと理解しているので、ある意味負担や反動も大きくなりやすいです(過程でトラウマが蘇ることもあります)。合う合わないはあるという前提で、興味のある方は一度試してみてはいかがでしょうか。

 私のnoteでは、心理療法を独学でやってみる方向けに自身が過去に取り組んでみた心理療法の感想や気付いたポイントなどを記事にしていきたいと思いますので、興味のある方はまた読んで頂ければ幸いです。それでは。

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