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声の知カラ

わが国では、発声については、家庭教育、乳幼児教育、義務教育、高等、専門教育
すべてを通じて独立してまったく行われていない。

音声言語医学博士・米山文明氏|「声と日本人」(平凡社選書)より

日本の政治家の国会答弁をテレビで見ていると、下を向いたまま、官僚の書いた作文をボソボ ソと読んでいる風景によく出会います。「こえ」は単調で、力がなく、ヒョロヒョロと飛んでは すぐに落ちるというイメージ。これでは、その「こえ」だけでなにか、聞く気がなくなってしまいます。 欧米では「ヴォイス・ティーチャー(声の先生)」という職業があって、その人達は、俳優だけではなく、さまざまな人達、特に営業のサラリーマンや企業の重役、教師、政治家を教えています。

演出家・鴻上尚史氏|「発声と身体のレッスン」(ちくま文庫)より

話すということは相手の話を記憶して理解し、自分の考えや思いをまとめて声に出すこと。脳 内の言葉を司る言語中枢、記憶を司る海馬、理解や思考を司る前頭葉・・など、脳のあらゆる部分が働かないとできません。ボケないためには人と話をすることが大事。それ以上に脳を鍛えるのが朗読です。

脳神経外科医・築山節氏|「脳を鍛える。心が潤う。朗読法」(主婦の友社)より

私たちは言葉を文字としてでなくまず音として、声として、耳と口を通して覚える。母親は生まれた瞬間から赤ん坊をあやす。その声は意味を伝えようとする言葉でなく、愛情を伴ったス キンシップとしての喃語だ。声は触覚的だ。声になった言葉は脳と同時にからだ全体に働きかける。

詩人・谷川俊太郎氏|「声の力 歌・語り・子ども」(岩波現代文庫)より

「おかげで、おやじが元気になってきたんです。」希望学のメンバーの何人かは、釜石を訪問するたびに、その方のお父さんからお話をうかがっていました。
(省略)
二度、三度とお話をうかがっているうち、だんだんと打ち解けてきます。とうとう、東大さんがまた来て話を聞いてくれるのを楽しみにするようになり、それが元気の源になったとおっしゃったのです。

社会学 研究所教授・玄田有史氏|「希望のつくり方」(岩波新書)より

「あなたは幸せですか?」というアンケートに対し「幸せです」と答える人が一番多い国がブ ラジルでした。何故だろうと調べているうちに幼少期の過ごし方が日本とブラジルでは全く違 うという考えに至ったのです。ブラジル人は自己表現力が非常に高く、会話する力、発信する力、思っていることを相手に伝えるのが上手いんです。それで、そのヒントを探るため私は会社員時代にブラジルへ留学しました。ブラジルの高校にも3ヶ月ぐらい通ってみたのですが、 授業にびっくりしました。日本の授業では9割は先生がしゃべり、1割が質問という形式ですが、ブラジルの授業では半分は生徒がしゃべっているのです。おしゃべりでなくディスカッシ ョン。ブラジルでは幼少期からこのようなディスカッションやプレゼンテーションを行いなが ら、自己表現力を身につけていたのです。私はこれを「社会で生きる力」と呼んでいます。

実業家・稲田大輔氏・メディアインタビューにて

※上記の引用元は末尾に列挙しました

7年間ほど声優を目指す人たちに関わったことがある。
それまで声優という職業には全く興味がなかった。
洋画を観たり、たまに面白いと思うアニメやゲームにハマって感動を受けたりするが、こと職業という観点では関心が薄かった。

しかし、住めば都であるように、業界も棲めば興味をひく。
なぜ声優を目指したのか、なぜ声優や役者業が続けられるのか。
出会った人たちのお話の中からさまざまなことを感じて想い描いた。

この独特とも思える業界の中で広報や営業のような仕事に携わり、彼らへの興味と同時に関心を持ったことが、声優になるために受けるレッスンだった。

ボイストレーニング、台本演技、エチュード、感情解放、マイクを通した発声法・・・など。
声優を目指す上に於いて習得すべきスキルも色々ある。

よその畑(業界)から来て初めて見るそのレッスンは「これって一般社会でもやるべきじゃない?」と素朴に思ったもの。

そもそも声優文化というのは日本発祥のひとつだと思う。古代から演劇は存在するし、俳優が声だけを演じることなど昔も今もある。その中を割って、声優という分野に特化したレッスンメソッドを開発したのは日本のはずだ。

で、そのレッスンを「一般社会でもやるべきじゃない?」具体的には教育の中も取り入れたらいいのに、と思う理由はたくさんある。このnoteを読んでくださっている方も冒頭の引用文をご覧いただき、それぞれに思うアイデアはあることでしょう。

ボイストレーニング(ボイトレ)といえば、一般に馴染みはない、必要ないものと関心を寄せない人も普通に多いと思う。あれは歌手や役者がやるものと。

最初にあげたいくつかの引用は、コロナで在宅ワークを余儀なくされた頃に読み漁ったりした本などから印象に残ったフレーズです。

子供たちにも、大人たちにも、今では高齢となった幾多の生き様を歩み刻んでこられた方たちにも。仕事、恋愛、健康、人付き合い、自分らしくかつ相手にも届く表現手法、総じて快活であるライフスタイルの礎のひとつにもなり得るという仮説をもってこれからも私なり綴っていきます。


参考(引用)資料
・書籍から

・動画から


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