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心筋梗塞-御代替わり-入院(7)

5月9日

その日の朝は晴れていた。もう治りかけているのかなと思うくらい痛みもなかったので、病院に行って検査し終わったらその足で会社に向かう、そんなイメージで紹介状を持って出かける。

駅まで出て、病院へは、病院行きのバスに乗るか歩いて行くか調子次第で判断しようと思った。家を出たと同時に、春のそよ風が気持ちよい感じだったので、緑道を通って歩いて行くことにした。それが午前8時19分。

病院に向かう緑道の道すがら、芽吹き始めた木々の葉に初夏を感じたり、時々木々の間から差し込む陽に春の華やぎを感じたりする。緑の風も心地よい。

やがて病院に着こうかとする少し手前の橋の上で、胸に変な圧迫感を覚える。何だこれは、変だなとおもいつつ、そこから歩いて約5分、ようやく病院の正面玄関に到着する。それが、午前8時52分。

15年程前に人間ドックで診察に来て以来のことなので、当然ながら受付システムも変わってしまっている。外来受付の人に紹介状を見せ、どうしたらよいかを聞くと、紹介状を確認の上、循環器科の窓口を教えられる。

その窓口で紹介状を見せ、そこで少し待つ。そうこうするうち、「〇〇さーん、〇番の部屋にお入りください」との呼び出しがある。

担当医師は私を椅子に座らせ、心電図を眺めながらフムフムとうなずく。おもむろに、私のほうを向いて、そこに横になって仰向けになって下さいという。聴診器で心音を聞くのが目的らしい。一通り聴診が終わると、服を元通りにして元の椅子に座ることを勧められる。

診察結果は

そして、いよいよ診察結果の告知へ。

担当医師が言うには、「紹介状を書かれたときから約2週間が経っているけど、その間は大丈夫でしたか」とのことだったので、「最初の症状が出たときは痛かったけど、別の病院で痛み止めを出して貰っていたので、とりあえず痛みは引いています」と答える。「ただ、今朝、病院に来るとき少し胸に圧迫感はありました」とも答えた。

そして、診察結果が言われる。「心筋梗塞だったようですね」と過去形で言われた。言われた途端、私の頭の中では、「へぇ、それじゃもう治ったのかな」「やっぱり心筋梗塞だったか」との思いがよぎり、「それじゃ、午後から会社に出れるな」と思い担当医師にその旨を尋ねた。

そうすると、担当医師は、「心筋梗塞が出ているので、詳しい検査をやります」という。私としては、過去形の表現もあったので治っているはずだから、まぁそんなに検査に時間はかかるまいと思い、「昼過ぎにはその検査終わりますかね」と質問。

「そうですねぇ~」と言われたので安心し、かつ、控室で待ってて下さい、とのことだったので、控室に出て、会社には「午後には検査が終了するので、15時頃には会社に着くと思う」との電話を入れる。これが、9時40分頃。

拉致誘拐?

電話を入れている最中に、年配の看護師さんが控室を行ったり来たりしながら「〇〇さーん」と何度も連呼する。電話を急ぎ切って、「はい、〇〇ですが」と言うと、「何やってるんですか!」とすごい剣幕で怒られる。

「何って、会社に電話入れていたんですけど・・・」と言うと、「こっちへ来て下さい」と少し離れたところにおいてあった車椅子のところに連れていかれ、座るように言われる。「大げさだなぁ」と思う間もなく、私が乗った車椅子をどこかを目指してものすごい速さで押す、というか走る。拉致誘拐かと錯覚するくらい。

後でわかったことだが、WHOの調査では急性心筋梗塞による死亡例は、80%が発症より24時間以内、その60%は病院到着前でだそうな。ちなみに専門施設のある病院到着後の死亡率は5-10%とのこと。すごい剣幕の理由が分かった。(だが、私は、発症からすでに12日が経過している。でも心筋梗塞であるのは間違いないとのこと。「だった」の意味は何だったのだろうか。)

・・・心筋梗塞-御代替わり-入院(8)に続く

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