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島根県益田市に移住した大庭 周さんのLOCAL MATCH STORY 〜「誰でもいい」から「あなたじゃなきゃダメ」に変化〜

自己紹介
大庭 周(おおば しゅう)

静岡県裾野市出身
一般社団法人 豊かな暮らしラボラトリー 職員 1996年生まれ。
鹿児島県出身・静岡県育ち。
大学卒業後に株式会社LIXILに入社するも、営業スタイルに疑問を感じると同時に後悔のない生き方をしたいという思いから今年3月に退社。
現在は、“居場所づくり“と”ひとづくり“を行う「(一社)豊かな暮らしラボラトリー」の職員として島根県益田市にて活動中。東京にあるソーシャルバーPORTOで日替わり店長を複業にしながら、これからの生き方について考える「生き博」の東京・静岡の代表を務めている。最近では、益田を舞台に大人の楽しいが集う「オトナ楽団」を展開中

直近のインタビュー記事です。
https://u-29.com/2020/09/22/shuohba/

私が移住した地域はこんなところ

皆さん、"過疎”という言葉をご存知でしょうか。
実は、私が住んでいる島根県益田市は”過疎”発祥の地とされています。
人口が4万5千人の街で、市街地には萩・石見空港があります。
ここ益田市は益田市と美都町・匹見町が合併したため、島根県で最大面積の市町村となっており、商業施設が立ち並ぶエリアもあれば、海や川・山に囲まれた自然豊かなエリアもあります。
そのため、都会的な生活もあれば、人と人との繋がりを確かめられる生活を送ることができ、特産のメロンや日本海で獲れた地魚をお裾分けする文化が残っています。
ただ、益田市には、映画館などの娯楽施設がほとんどありません。
だからこそ、「ないならば自分たちで楽しみを作る」精神を多くの人が持っていて、自然を生かしたアウトドアのイベントを企画したり、近所の人同士でご飯会を開催するなど自分たちで暮らしを豊かにする姿勢があるように感じます。

家から見える日本海

写真:家から見える日本海

蛍の季節の様子

写真:蛍の季節の様子

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なぜ移住しようと考えたのか

大学を機に上京し、住宅設備機器の大手で2年間、サッシの営業マンとして働いていました。東京で働いている中で、人口密度の高さとは真逆の人間関係の希薄さや営業成績の数字のために働くことに違和感を感じ始めました。そんな時に、これからの生き方について考えるトーク&交流イベント「生き方見本市(現:生き博)」と出会いました。
私はこのイベントに参加するまで、自分が将来どういった生き方を描いていきたいのか全く考えておらず、そこで話すゲストの姿に感動し、自分もそうなりたいと強く思いました。
そして、「人とのつながり」こそが自分の大事にしているものだと気付きました。そこから、SNSだけの繋がりになっていた友人や連絡をとっていなかった親友と連絡を取り始め、ご飯に行ったり、一緒にイベントをしたりと精力的に動き始めました。
益田市と最初に出会ったのは、見本市に登壇してくれた友人が私を誘ってくれたことがきっかけでした。一昨年の3月に初めて訪れるまでは、島根に足を運んだことがなく、島根は「何もない」「田舎」というイメージでした。しかし、実際に訪れると、現地の人がとても温かく迎え入れてくださり、
私がやりたいことを話し始めると、「いいね!やってみんちゃい!」と背中を押してくれました。
まだ移住もしていない私を応援してくれる人がいることがとても嬉しく、またここに来たいなと思うようになりました。

移住するまでこんなことありました

それから半年後、益田に来るよう勧めてくれた友人から「来春から一緒に仕事をしないか」と誘いを受けました。
当時、営業成績のために働くことに違和感を強く感じていたため、このままこの会社で働くことが自分にとって必要なのか分からなくなっていました。
それと同時に、「人のためになることがしたい」「後悔しない生き方を歩みたい」と思い始め、私を必要してくれる益田市に移住することに決めました。
益田に移住すること、東京を離れることは最後まで悩みました。
それは、東京にいる友人や静岡の家族に会う頻度が減る寂しさが強くあったからです。
しかし、益田市内に萩・石見空港から羽田空港への直行便があったことで、
1ヶ月に1回は東京へ帰れるのではと考え始めると、移住への不安が薄れてきました。

移住後のライフスタイル

昨年4月から益田で暮らし始めましたが、当初は市内中心部のシェアハウスで共同生活を送っていました。
しかし、移住前から空き家暮らしや人と人の繋がりを感じられる生活ができる環境を求めていたので、昨年9月から日本海が一望できる空き家での暮らしを始めました。
夏季は海風があるものの暑く、冬季は日本海の海風や降雪により寒い日が続きますが、朝は6時〜7時の間に起きるようにしています。繁忙期を除き、残業はないため、帰宅後すぐに夕飯を済ませると、あとは自分の自由時間なので、友人たちとオンラインで話したり、勉強会を受けたり、読書をしたり、複業のライターの仕事をしたりと余白時間を楽しんでいます。

移住してわかった地方暮らしの魅力

東京での生活と益田に引越しをしてからの生活で変わったことがあります。
それは、“通勤手段の変化”と“人とのつながりを感じられる生活”を味わえることです。
東京では電車で通勤していたため、駅まで徒歩で向かい、満員電車に揺られながら会社に向かっていました。
一方、益田では、車での通勤のため自分の好きな音楽を流しながら出勤できるため、会社に行くまでのストレスが軽減されたように感じます。
また、今住んでいる鎌手地区は、もともと漁師町として栄えていたこともあるのか、近所同士の表裏のない人付き合いがあります。隣の家に住んでいる方から刺身をいただいたり、玄関引戸の開閉が重いときに元建具屋で働いていたおじいちゃんが直してくれたりと、人の温かさを感じながら生活をしています。
都会暮らしは、物質的な豊かさが良いところですが、田舎暮らしは自分で生活を作っている感覚を得られるのがいいなと思います。

定期ご飯会

写真:道端で出会ったことがきっかけで始まった地域のおばあちゃんとの定期的なご飯会の様子

移住先での住まいについて

職場の同僚が知り合い経由で家を探してくださったので、自分で家を探すことはありませんでした。
今住んでいる場所は、50歩くらい歩けば日本海が広がっている海沿いの場所です。
築年数は45年、1階が6畳の部屋が3部屋、2階が4畳~6畳の部屋が4部屋があり、キッチン、トイレ、洗面所、浴室があります。
駐車場は、近くの駐車スペースがあるため、無料でそこに停めています。
現在の家賃は2万円ですが、会社から家賃補助が出ているため、
自分で支払うのは差額分と水道・光熱費のみなので、都会で暮らしているときよりも固定費は抑えられていると思います。
24歳で二階建ての一軒家に住んでいるのは、珍しいのではないでしょうか。

添付①(現在住んでいる住居の前で)

写真:現在住んでいる住居の前で

移住先でのお金事情について

東京時代の収入の方が今の仕事での収入よりも良いですが、
通勤にかかる費用や家賃、食費といった支出は今の生活の方が低くなっており、毎月貯金ができています。現在住んでいる空き家は、家賃が2万円。
東京時代は、1Kのアパートで家賃6万円だったことを考えると、固定費が下がりましたし、24歳で一軒家に住むことは都会では難しいことを踏まえると、同世代ではできない貴重な経験ができています。また、車での通勤のため、飲酒をする機会が格段に減り、ほとんど自炊しています。
帰宅途中に地元のスーパー キヌヤで新鮮な野菜や魚を購入し、今まで作ったことがなかった料理にも挑戦しています。
家賃などの光熱費や交通費で浮いた分は、旅行や自己投資に充てています。
東京でソーシャルバーの店長を複業でやっているので、その飛行機代や現地での友人との会食代に使用したり、暮らしを充実させるためにコンポストやDIYキットを購入したりと、今までとは異なるお金の使い方をしています。
収入は少なくなりましたが、時間や心の余裕が出来たことで、
モノの消費だけではなく、ヒトやコトへ消費する場面が増えたように思います。

添付②(東京有楽町にあるソーシャルバーでの様子)

写真:有楽町にあるソーシャルバーでの様子

移住先での暮らしで困ったこと

移住して困ったことは、大きくはありませんが、
挙げるとすれば、空き家暮らしだからこその家の寒さ・設備の不具合と衣料品のお店が少ないことです。
ただ、家の寒さに関しては、仕事先の方からストーブをいただいたり、
水道管が破裂した・水が出ないといったトラブルが起きたときは、大家さんや近所の方がすぐに助けてくださるので、そういった部分でも人の温かさを感じています。
衣料品を購入できるお店が少ない問題は、車で2時間ほどかけて広島市にあるアウトレットモールに行けば解消されます。市内にお店がないことは不便かと思いがちですが、私はドライブが趣味であり、広島には益田にないお店が多くあるので、良い気分転換として捉えています。

移住後の活動内容について

一般社団法人豊かな暮らしラボラトリー(通称:ユタラボ)の職員として働いています。
ユタラボは「豊かな暮らしを、すべてのひとに」というビジョンを掲げており、主に人材育成や教育・地域コミュニティ支援など、多岐にわたる活動を展開しています。
地域の大人との対話を通じて、自分のこれからについて考える「益田版カタリ場」や、高校生や大人が学校(職場)と家庭以外で自分らしく居られる場所「サードプレイス」の運営を行っています。
その他に、益田20地区の公民館へのサポートや企業説明会の企画・運営、高校の課題探究の伴走など、活動は多岐に亘ります。
ユタラボでの活動を通じて、私自身の価値観が大きく変わりました。
今までは、幸せの基準がモノやお金で測っていましたが、やりたいことを実現できる環境や人との繋がりを感じられる生活といった軸もあるのだと感じました。
東京と比べると金銭的には低いかもしれませんが、仕事のやりがいや暮らしを楽しんでいる人、想いを形にできている人は多くいるように思います。

オトナ楽団①

写真:地域の方とのカレー会を開催した1回目の「オトナ楽団」

今後のプラン

本業で小中高生が自分の興味や関心からマイプロジェクトに発展させているのを見てきたものの、自分自身はこの街に来てから何も出来ていないとモヤモヤしていました。
島根だからできること、大人が楽しんでいる姿を作りたい。
子どもがいる前でも大人だって楽しんでも遊んでもいいじゃんという風土を築いていきたいという思いから『オトナ学団』と名付け、昨年11月から個人での活動も広げています。
今住んでいる地域の人と一緒に海が見えるところでカレーを食べたり、
自分たちの街をカメラで写真を撮りながら歩くフォトウォークを開催したりと仕事や家庭以外の大人の楽しみを作る機会を作りました。
その活動を今後はこの益田を中心に広げ、自分たちで楽しみを作っていける人々がこのオトナ楽団をきっかけに生まれたらいいなと考えています。

添付④フォトウォークを開催した様子

写真:フォトウォークを開催した様子

地方で活動して分かった面白さ、やりがい

地方で活動する上での面白さは、自分が必要とされていると感じる瞬間が多いことです。
東京にいた時は、カメラで写真を撮影できたり、コミュニティやイベントを運営できる人は多くいて、自分がやらなくてもいいのではと悩む瞬間が何度もありました。
しかし、島根に来てからは、地元の人から「カメラで撮影して欲しい、撮り方を教えて欲しい」という声や「こんなことを一緒にしたい」という声をいただくようになりました。
「誰でもいい」から「あなたじゃなきゃダメ」に変化したことで、自分を必要としてくれる方のためによりスキルを磨いたり、知識を深めようと努力する自分がいて、自己有用感が高まりました。
都会で活躍しようという思いを持ちながら、もがく日々を送っていた自分にとって、地方で暮らす・活動する中で、「自分をきっかけに人生が上向く人を生み出したい」という自分の叶えたい目標を定めることができた気がします。

移住検討している方へメッセージ

移住したい場所が決まっている方は、その場所に行ってみてほしいです。
ホームページや写真だけでは伝わらない魅力が多くあるので、実際に自分で体感することでその土地が自分に合っているのかを確かめてほしいと思います。
移住をすると、友人や気軽に話せる人や暮らしに困ったときに頼れる人がいることが大切になってくるので、特に移住したい場所が決まっていない方は、まず地方を拠点に活動している友人がいる場所に行くことをおすすめします。
あとは、移住したい理由を明確に持っておくと良いと思います。
自分自身がどんな暮らしを描きたいのか、どんな生き方を歩みたいのか。
それに合った場所が地方にはありますし、移住が目的になってしまうと移住後に悩んでしまったり、その決断に後悔を覚える可能性もあります。
移住をすることは大きな決断ですが、「自分がどうありたいのか」が全てです。この記事を読んでいただいた方全員が「豊かな暮らし」を手に入れられますように。

(終わり) 執筆時期:2020年12月

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