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諸君、狂いたまえ!〜ポステコグルーと吉田松陰の共通点〜

 こんにちは。Mi2です。
 先日の某青戦は負けてしまいましたが、エモーショナルな内容で、色んな意味で歴史に残る試合となりましたね。
 私はあの試合を見て、9人になってもハイラインを崩さないポステコグルーから"狂気"を感じました。"狂気"と言えば、幕末の偉人、吉田松陰。そんな吉田松蔭を思い起こしていたら、あれあれ?ポスおじって吉田松陰っぽくね?という気がしてきました。
 そこで今回はポステコグルーと吉田松陰の類似点について、まとめてみようかと思います。まぁ、完全に思いつきなのですが、普段と別の角度からポステコグルーを理解できればと思っています。興味があればお付き合いください。

1 俺は俺を貫く。現状なんて関係ねぇぜ!
 まず、第1の類似点として、2人とも自分の主義は徹底的に貫くところがあります。それも置かれた状況等で、通常の人であれば手法を変えたりするところを彼らは一切変えません。
 ポステコグルーはこのことを今回の某青戦で示してくれましたね。2人退場という状況と最終ラインのメンバー(ダイアー、ホイビュアの急造CBとエメルソンの左SB)を考えると、ハイラインを維持することは難しいと考えるのが一般的ですが、ポステコグルーはあくまでハイラインにこだわりました。この判断には勝利への可能性より己の美学(哲学)を優先したという意見がありますが、ポステコグルーはあの状況でゴールを奪うにはハイラインが必要だったと本気で思っていると思います。そこを理解することがポステコグルーのフットボールを理解することに繋がるんじゃないかなと個人的に感じている部分です。

 一方、吉田松陰も置かれた状況とかは関係なく、どこまでも自分の主義主張を貫き通す人です。それを表すエピソードとして、老中間部詮勝暗殺計画があります。独断で日米修好通商条約を締結した大老井伊直弼の暗殺を水戸藩が計画していた頃、吉田松陰はその右腕の間部詮勝を暗殺しようと計画します。しかし、その頃はすでに条約締結で全国からの非難が大きくなっており、井伊直弼や間部詮勝の警備が厳しくなっていました。そのような状況を知っていた弟子の久坂玄瑞や高杉晋作らは「先生、今その計画を実行したら絶対失敗します。今は自重すべきです。」と反対すると吉田松陰は「は?なに合理的に考えてんだよ。お前ら、見損なったぞ!絶交だ!絶交!」とキレ散らかしています。吉田松陰は攘夷を推進するために井伊直弼や間部詮勝の暗殺は必須と考えており、どんな状況であろうと実行すべきものと考えていたんだろうと思います。

 こんな感じで2人とも自分の主義主張を絶対に崩さないところが似てるなと思います。たとえ側から見たら今それする?という状況でも関係ありませんし、本人達はそれが目的を達成するためにベストな選択だと本気で思っているんですよね。これも"狂気"のなせることだと思います。

2 志と個性で人を育てる
 次に2人の共通点として、志と個性を大切にして人を成長させるということがあります。
 ポステコグルーはアタッキング・フットボールという志を選手達に抱かせ、その成長を促しています。ポステコグルーが監督になった当初はアタッキング・フットボールが自身の志であることを父親のエピソードを出しながら、丁寧に説明していた記憶があります。
 また、ポステコグルーは選手の個性を大切にしてそれを否定せず、長所として伸ばそうとしているように感じます。これは先日の某青戦後の会見でロメロの退場について聞かれた時の回答にも表れています。以下の発言ってロメロの激しさを直そうとは思っていないですよね。

今シーズン、ロメロについては多くの賞賛を得ていましたが、今夜のレッドカードにフラストレーションはありますか?

彼はフィジカル野郎だ。それは彼の強みの一部であり、今日はやりすぎたとみなされたので、我々はそれを受け入れるだけだよ。

https://spurs.sc/archives/2023/11/every-word-ange-postecoglou-said-4

 吉田松陰も「志を立てて以て万事の源と為す」という言葉を残しているように、志を立てれば人は大きく成長するという考えでした。そんな吉田松陰は町医者の息子や足軽までも感化して、数々の歴史に名を残す志士や総理大臣を育ててきました。
 また、「人、賢愚ありといえども各々、一、二の才能なきはなし。備わらんことを一人に求むることかれ。小過を以て人を棄てては、大才は決して得るべからず」(訳:人には賢い者も愚かな者もいるが、才能のない人はいない。その人に備わっていないことを求めてはいけない。小さな欠点を見てその人を見捨てては、決して大きな才能を見出すことはできない。)という言葉も残しており、常にその人の長所を褒めて、本人に自覚を持たせて成長を促していました。これにはこんなエピソードがあります。ある日、桂小五郎が吉田松陰に高杉晋作は人の意見をあんまり聞かない頑固な奴なので注意してほしいと吉田松陰に頼みました。それに対して吉田松陰は「晋作のその頑固な性質は良い方に解釈すれば妥協を許さない個性だし、信念があるとも言える。これを妄りに矯正したら普通の人間になってしまう。晋作は突き抜けた方がいいと思うので、そこは変えない方がいいよ。」と言って、高杉晋作の欠点を個性として大切にしました。
 まぁ、この人は人を育てるというより、その人の良いところから自分が吸収したいし、一緒に成長したいと思ってる感じなのが独特ですけどね。

 このように、2人の教育理念というか指導理念というかは似ていると思います。

3 陽明学的アプローチ
 これはまず陽明学について軽く説明します。陽明学は、中国の明代の哲学者王陽明によって発展させられた思想体系です。陽明学は、中国の儒教思想の一派であり、知識、道徳、自己啓発、心の哲学に焦点を当てています。同じく儒教思想の一派である朱子学(江戸時代の日本ではこちらが主流)では、全ての原理原則は古典を学ぶことによって習得できると言っており、座学を重視します。一方、陽明学は理解するということは実践するということと一緒なんだよと言っており、行動を重視します。

 吉田松陰は、中国の陽明学に影響を受け、知行合一という概念を重要視しました。この考え方によれば、知識と行動は一体化されるべきということです。完全な余談ですが、この人は陽明学の考えをもとに黒船を知るために黒船に乗り込んでみよう!といったクレイジーな行動を起こしています。

 ポステコグルーがスパーズの監督に就任した際、普段Jリーグを見なくなってしまった私はポステコグルーがどんな人か知りたくて、Twitterで流れてくるポステコグルーに関するブログを片っ端から読み漁っていました。その中で印象的だったのはマリノスサポのakiraさんという方が書いた「アンジェ・ポステコグルーと“畳み人”」という記事です。とても参考になるブログなので、まだ読んだことがない方にはぜひ読んでみていただきたいです。

 これを読むとポステコグルーの戦術の落とし込みへのアプローチがこの陽明学っぽいなと思う部分があります。ポステコグルーは目指すべきフットボール像のイメージを伝えるのみで、具体的にそれを戦術や指導に落とし込むのはコーチが行うそうです。つまり選手たちはトレーニングを通してポステコグルーの目指すフットボールを理解していきます。実践と理解を同時に行っているということです。
 また、陽明学には致良知という実践法があります。人間は、生まれたときから心と体(理)は一体であり、心があとから付け加わったものではないというものです。そのため、王陽明はその心が私欲により曇っていなければ、心の本来のあり方が理と合致すると言っています。以前、ポステコグルーは自身のコーチングについて、下記のように語っています。 

現代のコーチングは、選手に何をすべきかを教えることではありません。本当に成功したいのなら、選手たちに信じさせて、選手たち自身が決断できるようにしなければなりません。

私は細かい管理はしません。私はスタッフの上に立って彼らの行動を監視しているわけではありません。選手やコーチには、仕事やプレーをする決断をしてもらいたいんです。人々に何をすべきかを伝えるのはとても簡単で、ほとんどの場合、彼らはそれを実行してくれます。しかし、誰かに何かを信じてもらい、そのように決意してもらうことができれば、本当に強力なんです。

https://spurs.sc/archives/2023/09/ange-postecoglou-beliefs-of-an-elite-manager4

つまり、ポステコグルーの信奉するアタッキング・フットボールを信じることができれば、選手達は戦局に応じて柔軟に適切に判断ができるようになるということです。選手達の心の本来のあり方はアタッキング・フットボールであり、それは理(プレー)と合致する、この状態をポステコグルーを作り出したいんだろうなと思ってます。

4 まとめ
 衝撃の某青戦の中、なんとなく浮かんできたポステコグルーは吉田松陰説について書いてみましたが、ちゃんと整理できているかは謎です。吉田松陰はかなりのクレイジー野郎で落ち着いた雰囲気のポステコグルーとは対照的な印象の持ち主です。しかし、ポステコグルーにも"狂気"的な部分があり、そこを理解するとよりあの愛すべきヒゲオヤジへの理解が深まるような気がします。
 シーズンはまだ半分もいっていないところです。前途には様々な困難がありますが、チームがこの敗戦をどう乗り越えて行くのか、とても楽しみです。スパーズを応援する楽しさが蘇っている現状に感謝しつつ、これからも良い時も悪い時もスパーズを見続けていきたいなと思います。
 今回は以上です。お読みいただき、ありがとうございました!COYS!

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