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【一般TCG理論】こんな言い訳のために戦っているわけじゃない

第3弾の一般TCG理論です。
今回は自分がついやってしまう、よくない(と思っている)プレイとその心理について紹介します。

1. 一貫性のあるプレイとサンクコスト効果

「一貫性のあるプレイ」はTCGでよく挙げられる言葉です。ゲームのなかである目的を達成するためにプレイしているのならばそれに反する行為はしない、ということです。
例えばコンボを目指すのか、ミッドレンジで殴り切るのか、相手を捌き切ってから勝つのか、こちらが押し込んでいくのか、決めたプランからブレずに動くことが大事だという考え方です。

この考え方、非常に重要であると同時に非常に危険な考え方だと私は思っています。

それがサンクコストバイアスです。
サンクコストバイアスとは、これまでにかけたコストを失いたくないという心理バイアスです。
例えば以下のような状況を考えてみましょう。

あなたは、70キロほど離れた街で開催される、バスケットボールの試合を観戦する計画を立てました。あなたはすでに前売りチケットを50ドル(約5500円)で購入しています。ところが、試合当日の天候は吹雪で試合会場に行くのはとても大変です。さて、あなたはどうしますか。

1:試合会場に行く
2:暖かいあなたの家でテレビ観戦する

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多くの人が1を選ぶでしょう。もしもこれが50ドルではなく5000ドルだったりすればなおのことでしょう。しかし金額がいくらであってもこれからの体験には影響がありません。すでに失ったコストはこれからの体験にまったく影響がないにもかかわらず、人間の決断には大きな影響を及ぼします。
これをサンクコスト効果と呼びます。

2. サンクコスト効果の言い訳になる一貫性

一貫性のあるプレイという言葉を言い訳に、こんなプレイをした経験があるのではないでしょうか。
「さっき打ち消しをケアしたから、今回もケアしないと一貫性がない」
「殴り切るプランにしたのだから、ここでオールインすべきだ」
この考え方は一貫性のあるプレイのためには重要ですが、一方で非常にサンクコスト効果の影響を受けやすい考え方です。
本当はこのままずるずる行くと負けてしまうと感じながらも、一貫性を持たせようと打ち消しをケアし続けてしまったことはないでしょうか?
打点の高いカードを引けていないのに、殴り切ることに執着し続けていないでしょうか?

重要なのは、今このときどういう状況で、次に何を引く可能性が高いかという現状の評価だけであり、過去のプレイは本来関係ないはずです。

そもそもカードゲームというお互いに不確実性の高いゲームにおいて一貫性を保ち続けることは非常に困難です。多くの人が一貫性を保つことの重要性を説きながら、一方で状況に合わせて柔軟に動くことの重要性を語ります。
まずこの矛盾を自覚しなければ、合理的な判断をしているようで実は心理バイアスに依存した判断を下してしまうでしょう。

3. プライドにつけ込む一貫性

さらにこの一貫性という言葉は、ミスを隠したいという心理にもつけ込んできます。
最適なプレイではないプレイをしてしまったとき、こんなことを言ってしまったことはないでしょうか。
「○○の可能性を踏まえてこのようにした。前のターンそうしたのだから○○がある前提で動くべき」
まるで一貫性を持たせるために論理的な言葉を使っているようで、その実、ただ自分のミスを認めたくない、恥ずかしいという気持ちから言い訳に使ってしまったことはないでしょうか?
私は数えきれないほどあります!

こういった人間の心理的な動きに対して、「一貫性」というまるで心理的な要素の感じられないロジカルな響きはこのうえなく甘美に聞こえるでしょう。この蠱惑的な響きに負けない冷静さが無ければ一貫性は手に入れられないのです。

4. 一貫性のあるプレイをするために

ここまで考えたときに、では一貫性のあるプレイはどうすればできるのか?という疑問が出てきます。

先述のとおり、そもそも運に大きく左右されるカードゲームにおいて、一貫性を保つことは無理があります。その不確実性の中で一貫性を手に入れようとすると、それは再現性を高めることによって得られるのではないでしょうか。

デッキ構築から始まり、マリガン、各ターンのプレイにおいて、勝利できる試合の流れを自分が想定している動きとして再現することが結果的に一貫性につながるのです。
「この対面は○○を通して勝つ」「このカードは通しても問題ないように○○をプレイして勝つ」といったように自らのゲームプランを再現する力が一貫性には求められるのです。

しかし、私はつい一貫性は「自らの再現力の結果」ではなく、心構えのように解釈し、さまざまな心理バイアスの言い訳に一貫性という言葉を使ってしまいます。
間違ったゲームプランに一貫性をむりやり当てはめた結果は無残な敗北だけでしょう。一貫性のあるプレイをするためには試合前に十分な準備が必要なのです。

単体のカードをこのようにプレイしたから次からもプレイを統一する、というような行き当たりばったりな一貫性ではなく、自分が描いたゲームプランにするために普段ならやらないプレイも行って実現していくこととゲームプランを再現するためにプレイの意思決定基準を明確にすることが一貫性のあるプレイだと私は考えています。

5. さいごに

いかがだったでしょうか。
自分で書いていて、ここまで考えておきながらなぜ自分は言い訳につかってしまうのだろうかと、自らの心の弱さに辟易してしまいました。

一貫性という言葉はプロの方ほどよく使うイメージがありますが、私のような自称中級者程度の人間とはかなり解釈が異なる部分だと感じているので、今回の記事を読んで、そんなことないけどな、みたいなコメントもあるかもしれません。
もしそう感じた方がいればぜひアンサーとなる記事を書いていただければ嬉しいです。

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