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【ネタバレあり】無職転生-異世界行ったら本気だす-の未来の展開の考察-13 「ターニングポイント」について

無職転生ファンの皆さんこんにちは。
本稿では無職転生で強く印象に残るターニングポイントについて考察していきます。
まだ無職転生をお読みでない方は、ブラウザバックし、まず作品をお読みいただくことを強く推奨します。ネタバレなしで物語の展開をお楽しみください。非常に面白い物語展開で、また人生観について一考する作品です。
また本稿は物語の核心を衝いている内容ですので、原作未読の方はまずは原作をお読みください。
よろしくお願いします。

なお、別ページに考察するうえでの前提を載せていますので合わせてよろしければお読みください。




ターニングポイントについて

 ターニングポイントは、作中で5回発生しています。
 いずれも、主人公ルーデウスにとって文字通り転換点といえるような、人生の岐路となるような事件です。
 投稿順に追っていくとルーデウスの人生での転機という意味でのターニングポイントとなりますが、しかしターニングポイントの本質は六面世界にとっての岐路でもあるということが、最終話「エピローグ プロローグ・ゼロ」で明確となったと私は解しています。
 ターニングポイントが六面世界の物語本編(注:筆者仮称)でどのように影響があるのか、各ターニングポイントについて整理・考察していきます。

ターニングポイント

 ルーデウス10歳の甲龍歴417年に突如転移災害が発生する。ルーデウスは魔大陸に飛ばされ、なんの準備もなく着の身着のままも同然の中、現地調達で世界一周を強要された。
 投稿順に追っていくと、前後関係が不明な中で突如として起こった災害である。被害は甚大で災害の範囲内は人・モノ・動物が消え、まっさらになっていた。被害内にいた物体は別の場所に転移、また存在がなくなったと分かれており、消えた人は六面世界でも運命力といわれる力が比較的弱く、消えてしまっているようだ。領主のサウロスは転移の被害に遭い無事帰国するも責任を追及され処刑となり、ロアの町長フィリップ・ボレアス・グレイラットは転移先の紛争地帯の一国に飛ばされスパイの嫌疑をかけられることになり拷問のすえ獄中死した。
 転移災害の原因は不明のまま物語は進行し、途中ナナホシ等の推理が見られるが、無職転生のエピローグで初めて因果関係が判明した。
 転移災害の原因は、甲龍暦500年の過去改変の神子リリアが前回の世界線で篠原秋人と出会い、力を発揮した結果である。力自体は世界の抵抗力に遮られ拮抗していたが、前世の男が本来生まれることのないルーデウスに宿ったことで407年に誕生し、ロキシー、シルフィエット、エリスの3名の行動を変えたことで歴史が変わった。この微妙な変化が世界の抵抗力を弱め神子リリアの過去改変の力が上回り力が発現、起こったのが転移災害である。この「ルーデウスが変えた三人の微妙な歴史の変化」と、「転移災害で人物の生死や行動が一変した」ことの2つの事象があわさり、大きく歴史が変わった。のちのターニングポイントは、全てこのターニングポイントの転移災害が起因ともいえるか。

ターニングポイント2

 ルーデウスは「ターニングポイント」の直後にヒトガミに一方的に関わりをもたれ、中央大陸南部から中央大陸西部のアスラ王国領内へと抜ける赤竜の下顎でルーデウスとオルステッドは邂逅した。
 投稿順に追っていったところでは、オルステッドとヒトガミが敵対関係にありそれに巻き込まれたこと、オルステッドが時空間への干渉を匂わせるような言動をしていること、読者のメタ読みとしてルーデウスが前世の後悔を糧に最後まで生き抜くという目標とは別の、六面世界に将来関わっていくであろうことを示唆している。
 歪な六面世界の根本的要因となっている二者が初めてルーデウスの前に現れた。初代龍神の抵抗により不完全ながらも現在覇権を握っているヒトガミ、挑戦者のオルステッド、その狭間で、まさに偶然といえる存在であり本人の自覚無しに世界の命運を左右する強大な運命力をもち行動するルーデウスの異世界物語となっていく。

ターニングポイント3

 魔法都市ラノアに居を構え、妻を娶り、また懐妊と喜ばしい出来事が続く中起こった。ギースの速達便が届き、救援要請がかかる。現地の状況が不明なまま、身重な妻の傍にいるか家族を助けに行くか悩みぬいた結果、救援へと向かう。ナナホシに転移魔法陣の存在を聞き、遭難していたロキシーを間一髪のところで無事救助した。
 この一連の動きは、ヒトガミがルーデウスとロキシーを断固として接触させず、(当時のヒトガミの感覚では)ルーデウスは殺すにも手こずりそうで確実ではないと判断したためロキシーを狙うという目的である。web版第三十六話「すれ違い」から続いており、ヒトガミの口ぶりではヒトガミが操作していないとルーデウスとロキシーは自然と出会い結ばれていたようである。web版第六十五話「推薦状」でルーデウスをラノアに向かわせなかった場合、母ゼニスの救出とロキシーとの再会もあり、パウロと顔を合わせたくないとゴネるエリナリーゼと共に向かっていたとみるべきか。
 ヒトガミにとって想定外が複数起こり、夢であってくれと思えるような結果となった。ギースが救援要請を出したこと、ナナホシがルーデウスに転移魔法陣の所在を教えたこと、迷宮内でなぜかルーデウスがロキシーの所在をカンでつかんだことである。これらの不測の事態がなかった場合ヒトガミの謀殺は達成していた。
 (カンはもう理屈で論じようがないので)特にギースの要請の手紙は、これがなければあの時点で向かうこともしていなかった。その手紙も当時のギースの独断で送ったようで、ヒトガミはもちろんパウロにも相談抜きに送っていた。この頃ロキシーはまだ迷宮で遭難する前で、長期戦になると踏みギースはルーデウスに救援要請を出したようだ。この流れからいくと、ヒトガミはギースに「ロキシーを亡き者にしたい」という思惑は伝えていなかったようであるが。ヒトガミは、ギースにルーデウスと大森林で会うように導いており、またそれよりも前のギースの故郷が滅ぶより前から接触していたが、この時はギースの友人であるゼニスを救出することもあり他人にバラされる恐れがあるとギースを信用しきっていなかったのか、操り切れないと判断したのか、はたまた未来視にも映っていなかったのかはわからない。
 また意外かわからないが、油断の多いヒトガミがほぼロキシーを謀殺できるだろうと思われる時点でもルーデウスをベガリット大陸に向かわせようとさせなかった。事実転移魔法陣で間に合ってしまった。万一転移魔法陣等の当時の裏ワザを使われると間に合ってしまう可能性があると思っていたからか、また上記のようにギースを御し切れず油断できない程度には焦燥感があったからであろうか。

ターニングポイント4

 ヒトガミの「お願い」を聞き地下室の様子を見にいってしまった結果、ロキシーが死亡した世界線の約50年後の未来のルーデウス改め老デウスが、過去転移を使い、「お願い」を聞いた直後のルーデウスの前に姿を現し、ヒトガミの正体を暴きロキシーの死を回避させた。
 ヒトガミが転移災害直後になぜルーデウスに接触したかが、老デウスを介して判明する。
 このあとヒトガミがネタ晴らしをしており、ロキシーを狙った理由は、ルーデウスと彼女の子がヒトガミを封印する核となる人物が誕生するからとのことである。
 また、この結果を招いたのも結局は謀殺が成功したヒトガミの油断ともいえる。ヒトガミは老デウスにネタ晴らしをする必要はなく、ただ自分が優越感に浸り気持ちよくなりたいために老デウスにバラした。もし老デウスにネタ晴らししなかった場合、老デウスにあの異様なまでの執着はなく過去転移にまで至らなかったと思われるし、ヒトガミを憎悪するかもわからなかった。歴史上に過去転移ができた人物がどれだけいたのかでもあるが、指折り数える程度だと老デウスがその境地に至る可能性がないと判断したというべきであるが、しかし運命力の強さから直接・間接的にも処理することができないようである以上、軽率でありやるべきではなかったといえる。せめてやるなら死の間際であろう。

ターニングポイント5

 ルーデウス一派と七大列強第三位闘神バーディガーディが戦い、尽力戦の末ルーデウス一派がバーディガーディを撃退し、またオルステッドが膨大な魔力を消費したが、これまでのループで遭遇したことがない闘神アレクサンダーと戦い、こちらは軍門に下した。
 オルステッドは魔力温存のために、第二次ラプラス戦役を回避するため、別の世界線では魔神ラプラスを出生まもなく殺害している。生まれる場所は未来のシーローン共和国内で、シーローン共和国を創ったパックス・シーローンの存命を最優先事項としていた。しかしシーローン王国の内乱で彼は死亡し、ラプラスの出生先が不明となり、殺害が非常に困難となる。事前に殺害できなければ第二次ラプラス戦役が勃発することは確定といえるほど濃厚であるようだ。第二次ラプラス戦役を経ていると魔力を膨大に消費するためオルステッドは今ループは失敗だ、と明言していた。(web版第二百十一話参照)「捨て回(※)」にしようと思っていたかはわからない。
(※)ゲーマーなら「実況パワフルプロ野球」に代表されるサクセスストーリーやそのシステムに近いゲームであったり、周回性のある育成モードのアプリゲームをプレイした人なら理解しやすいと思われる。要は何回も似た展開の中で確率の最適解を引き当てるため途中で失敗したと思ったら諦め、やり直して効率化を図ること。オルステッドの場合確率の最適解の代わりに展開の最適解となる。
 オルステッドは失敗を過去のループで何度も経験しているが、少なくともどうなるかの観測はしているようで、ヒトガミの「お願い」を聞いた老デウスの世界線でも同様らしい。何もしないということはないと思われるが、どことなく本気ではない心持ちになっていたと思われる。(第二百二十八話冒頭参照)
 しかし、そんなオルステッドの諦観をルーデウスは覆した。オルステッドは無制限ともいえるループを強制され、「失敗しても次のループがある、そこでやり直す」という判断を数えきれないほど行ってきた特殊な環境下からか、第二次ラプラス戦役の発生が確定すると膨大な魔力を消耗するためヒトガミに勝てないと思っている。またオルステッドは、龍王全員に対し剣呑な雰囲気を隠さなかった。(web版第二百二十九話)これは別の世界線の中で起こった出来事が起因しているのか、それとも同族に対し無間地獄のような境遇に追いやられた憎しみなのか、どういった理由で絶縁しているのかはわからない。
 ルーデウスは、後悔はもうしたくないという信念から、いかな逆境にも諦めず自分なりに建設的に対策を講じてきた。そんなルーデウスの姿勢にオルステッドは心動かされたこと、これまで存在しなかったルーデウスやナナホシが以降のループにも存在するか不明であること、呪いにより人と意思疎通ができなかった中で、その影響から外れたルーデウスとナナホシが突如として現れたことから、これまでのループで対峙したことがなかった闘神アレクサンダーと戦い、このループでヒトガミとの戦いに決着をつけなければならないのだろうと決意を固めているようである。これまでオルステッドは闘神アレクサンダーと遭遇したことがない、と言っていたが、裏を返せばこれまでのルーデウスがいない世界線では、ヒトガミが抱くオルステッドの脅威などその程度としか感じておらず本気で対処していなかったともいえる。
 今後の展開次第だが、オルステッドにとって展開が芳しくなく苦難の時が訪れる可能性がある。ヒトガミは自分が封印されることを良しとせず本気で抵抗し、ルーデウスがいない間は自分の思い通りにならないことから陰謀の芽を育てている。またヒトガミにとって一番の脅威であるララ・グレイラットも健在であることから、これらを排除するために必要な力を育て、結集しようとするからである。
 オルステッドは、ヒトガミとの決戦のため魔力をできる限り温存しようとするが、ヒトガミの本気の妨害で大きく消耗すると考えられる。他のループであればヒトガミ打倒が叶わないと判断したら「捨て回」とみて結果の観測を主に行ったと思われる。これまでのループでは「もう無理」という判断が働くような状況でも、無の世界突入までの展開次第となるだろう。そのカギを握るのはラプラスとロステリーナであろうと思われる。
 これまでのルーデウスの行動はオルステッドの別世界線の結末で得た知識によるものである。これからの物語は、佳境を迎えるほど未知の道のりとなる。オルステッドが「どうなるか」を分析し、「どうするか」を絶えず行う、諦めないということを決意させた転換点であると考える。

 前世の男が異世界行って本気出してたら周りの人間も本気だしてきたといえます。
 ターニングポイントの主語が最終話まで読了すると、「ルーデウス」以外にも「六面世界」が増えるというのも、読者を惹きつけるよい仕掛けだと思います。また私のように一気読みした人間は、感想返しなどの背景も知らないことがほとんどの方だと思いますので、無職転生編が序章的位置づけで一気に時空間が広がった感覚になります。

 以上が「ターニングポイント」についての考察でした。
 お読みいただきありがとうございました。 


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