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【閑話休題#35】有吉佐和子『日本の島々、昔と今』

こんにちは、三太です。

今回はこちらの作品を読みます。

毎月一冊、岩波文庫の本を読んでいます。
9月に読んでいたのが、この有吉佐和子『日本の島々、昔と今』でした。
はじめはnoteにまとめる気はなかったのですが、本書で取り上げられた離島の中に長崎の五島列島の福江島が出てきました。
ここは吉田修一『平成猿蟹合戦図』の真島美月という登場人物の出身地です。
また、映画「悪人」のエンディングを飾る灯台、大瀬崎灯台があるのもこの福江島でした。
島ってけっこう吉田修一作品とつながるなと感じたので、まとめてみることにしました。


あらすじ

本書は1979年から80年にかけての離島ルポルタージュです。
取り上げられる島は、
焼尻島・天売島
種子島
屋久島
福江島
対馬
波照間島
与那国島
隠岐
竹島
父島
択捉・国後・色丹・歯舞
尖閣列島
です。
有吉さんは主に漁業を中心に島の内情を探ります。
そのため島に着くとまず向かうのが漁業協同組合。
当時はオイルショックの影響が如実に出ている時代でした。
また、島で話を聞くだけでなく、様々な文献をもとにそれぞれの島の歴史もひもときます。

本の表紙の裏にある紹介文を引用します。

北は天売・焼尻へ、南は波照間・与那国へ飛び、種子島では鉄砲伝来とロケット基地を、隠岐ではイカ釣船の水揚や流人の歌を島詩に探る。八〇年当時の領有権、日韓大陸棚、二百カイリ問題とは?海も政治も激変したが日本はどこまで日本なのか。昔の問いは今も新しい。

感想

離島に行きたくなりました。
福江島については養殖漁業の話から始まり、遣唐使の航路上にあったということや、キリシタン弾圧の歴史があったということが述べられていました。
本書に出てくる島で自分が行ったことのあるのは隠岐だけでした。
そのときは隠岐で行われている牛突き(闘牛)を見に行くのが目的でした。(あとは当時島前高校が話題になっていたというのも少しあります)
牛突きはとても迫力があり面白かったです。
もう少し強烈だったのが、島へ向かうフェリーでした。
時期がお盆の真っ只中でちょうど帰省する人たちと重なってしまい、フェリーの中は本当に座る場所がありませんでした。
本当に探しに探し回ってようやく「本当はここ座っていいのかな?」と思うような入口のスペース(もちろん地べたです)に陣取ったのを覚えています。

少し自分の思い出に引っ張られましたが、本書で印象的なのは、有吉さんのたくましさです。
有吉さんはお酒が強く、漁民の人たちと酒を飲んで打ち解けます。
そして、どこでもランニングをします。
ランニングで漁協に訪れることもあります。
こういったエピソードが随所に見られ、とてもたくましい方だなと感じました。

今回はルポルタージュでしたが、離島文学というのも面白そうだなと感じました。
本書でも有吉佐和子『私は忘れない』(黒島)、同『海暗』(御蔵島)、林芙美子『浮雲』(屋久島)などが出てきます。

他にも調べてみると佐藤洋二郎『島の文学を歩く』という本もあり、離島文学を少し極めたくなりました。

秋の海島が文学語り出す


今回は有吉佐和子『日本の島々、昔と今』の紹介でした。
また近いうちに離島に行きたいです。
あるいは離島の本を読みたいです。
 
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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