見出し画像

夫はね、

私と夫は高校時代からの付き合いで、
11年付き合った後ようやく結婚した。

高校2年の時に存在を知ったけど、
割りと無口で、それでいて話しかければ
ニコっと笑顔を見せる人だった。
それがとても魅力的な気がした。

対して私は誰とでもよく喋るタイプで、
男も女も関係ない。
なので、男女で賑やかに
していることが多かった。

後に聞くところ、
「嫌いなタイプの女」だったそうだ。

そんな2人が何故か付き合う事になった。

今となっては幼馴染みのような年月が経っている。

16歳から、まさか50歳の今も一緒に
いるとはね…
びっくり。

色々あった。
本当に色々あった。

無口なようでいて、
寝言は激しい方だった。

突然ムクッと起きて、布団の上を
まさぐり何かを探している。
起き上がった勢いに驚いて目が覚めた私に

「親イヌどこ行った?」

と聞いてきた。

「…知らない。」と返事をしたら

ニヤっと笑って夢だったことに気付き、
夢の内容を私に伝えながら
話し終えないうちにまた寝てしまった。

呑んだ後の寝言はしょっちゅうで、
ボソボソと聞こえる声に目を覚ますと、
隣の夫からだった。

「…えぇ、えぇ、ふぅーん。
あぁ~…はー、はー、はー、」

ひたすら相づちをうっている。

挙げ句、

「いやぁ~、
もう呑めませんよぉ~」と

満面の笑みを浮かべている。
どうやら先輩方と呑んでいるようだ。


そして、起きていても彼は
思いがけない事も口にする。

まだ結婚前、その当時好きだった
ラーメン屋に行き、いつものように
餃子とラーメンを頼んだ。
焼きたての餃子は熱いけど、やっぱり旨い。
半分だけ噛んだけど、
中の肉汁は逃したくなかった私は、
ギュッと口を結んで、その旨さを閉じ込めた。

その時、あの人はこう言った。

「ケツの穴みてーな口で
食ってんじゃねーよ!」

名言だな。と思った。
いつか、さんま御殿で、
「彼から言われた衝撃の一言」とか
あったら投稿してみようと思ってた。

ある時は、私のちょっとした一言に
カチンときたらしく、

「貴様…」と言った。

「貴様」なんて、真剣な顔で言われたのは
今のところ一度だけだ。
あまりの衝撃に笑ってしまった。

よく呑む人で、若い頃は
さんざん私に迷惑をかけた。
言葉でも、態度でも、行いも。

迷惑をかけるくせに心配性。


翌日になると前夜を思い出しては
後悔し、不安になり、
伏線の回収に私を同行させる。

「牛丼のゴミがあるんだよ。
金を払った覚えがない。
店に行って、昨夜、無銭飲食した奴が
居なかったか確認してくれ。」

…なんで私が?…

こんなことばっかりだった。



現在、
日頃の様子といえば、

出したものが仕舞えない。
なんでもとっておく。

いつも換気してんのか?と思う程、
引き出しが中途半端にあいている。

ちょっと注意されれぱ機嫌は最悪。
息子以上に厄介な不機嫌をさらす。
めんどくさい男のトップだ。

弱音を吐く奴は悪者か?と聞きたくなるほど
弱音に異常に敵対心をもっている。

「おはよう」と「おやすみ」が
言えるようになったのは
ほんの5、6年前だ。

私の優先順位をものすごく
低く見積もっている。


振り返れば振り返るほど、
…振り返るんじゃなかった。と悔やむくらい
沢山のことがあった。

夫婦関係で
深刻な状況も山ほどある。

それを現状維持にしていたりもする。


そういった生活の中、夫は
小学生の頃から始めたサッカーは
今でも続けている。
走れるってだけでも凄いと思ってしまう。

「50歳を機に、体を改善する!」と
パーソナルトレーナーの元で、
適度にいい筋力と筋肉、
そして13キロの減量を成功させた。

昔より呑みに出掛ける機会が減り、
家飲みが主だけど、
悪態を出す前に寝てしまう。

子どものことに一生懸命協力することが
増えた。
涙を見せる機会も増えた。

昨夜、夫の足取りが重かった。
この連日の暑さも体にきているのだろう。

「あー。なんか疲れた」と言った。

前なら、絶対口にしなかった。

それを聞いて、
「弱音が吐けるようになったか。」と
安堵した。

少しずつ、自分の弱いところを出せているのかもしれない。

自分に優しく、赦せるようになれば
人の弱いところも
きっと、もっと受け入れて
認めることができるようになる。

そう思った。

同じように、家族一人一人が
そうしていければいい。と思った。

夫の心が満たされると、巡り巡って、
家族に笑顔が増えることを
私は知っている。


だから、
今日は存分に満たそうと思っている!

今日は夫の
誕生日なもんで。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?