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濁り、沈澱、上澄み(裏)

ありとあらゆる食べ物を口に放り込み飲み込む。そして全部吐く。後悔と罪悪感にひどく苦しめられるがやめることができない。泣きながら食べ泣きながら吐く。このことは誰にも言っていない。

夜、薬がなくては眠ることが出来ない。胸がざわざわしとても不安になる。自分が衝動的に何かをしそうになる。薬を飲むと落ち着くし眠ることができる。

私の体も心もおかしくなってしまった。心身ともに健康で元気だったのに、いつからかこんな状態になっていた。 

夫は気づいているのか気づいていないのかわからない。
気づいているのならば、愛情のカケラでもあれば、何か言ってくるものじゃないだろうか……。


毎日、体は重くだるいが、フローリングの床を拭く。窓ガラスも拭く。
毎日きれいにしていても、くすみ、濁っていく。

私と夫はお互いを思いやる愛情深い家族にはなれなかった。
結婚した当初やこの家を買った時は愛情はあったと思うが錯覚だったのかもしれない。

今は夫とは会話もない。私は何を話したらいいかわからない。

夫は男の子が欲しかったんだと思う。
我が子とキャッチボールをしたりゲームをしたり、そういうことに憧れていたのだと思う、でも、それは叶わず、傷ついたのかもしれない。


自分の理想通りの人生を歩めている人はどれくらいいるのだろうか。
理想と現実、どこかで折り合いをつけて生きていくしかないが、私達は傷ついたことにこだわっている。


人は変化をおそれるという、たとえ悪い状態にいても。
だから私は停滞し、とどまっている。

夫は私と離婚してこの家も売却してまた新しい人生を始めることができるのに、しない。
何かを捨てれば、スペースができて、風が流れ込むかもしれない、新しい出会いもあるかもしれない。

離婚したら、私が困るから言い出せないのかな。
確かに私は実家にはもう戻れないし、経済的に自立をしていない。
私は何も持っていない。

自分も苦しいし夫も苦しいのだろう、死ぬまでこの生活が続くのかと思うとますます憂鬱になる。
息ができなくなる前に、自分も、夫も解放したい。 

離婚して、私は行ったことがない街に暮らす。仕事を見つけてアパートを借りる。
仕事は選ばないしボロい安アパートでいい。
なんとかなりそうな気がする。
何も持っていないということは、なんて自由なんだろう。
私が決めさえすれば、いいんだ。
私の人生は私に決定権があるんだから。


離婚届に記入して置いておけばいいし、夫名義のこの家は夫が売却すればいい。

簡単なことだ。

家の中を隅々まできれいにし、全ての窓を開け、風をいれる。
乾いた風がよどんだ空気を洗い流した。





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