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日常(c)

こじんまりとして落ち着く『居酒屋たかやなぎ』に 週に1回は行く。

おかみさんの手作りお惣菜が美味いから。揚げだし豆腐、だし巻き卵、煮物、コロッケ。どれもこれも美味い。

バイトのあかりちゃんが可愛いから。あかりちゃんは話しかければかまってくれるし、うまくあしらってくれるからいい。あかりちゃんに惚れているわけではないが好きなふりをしている。
なぜって?
うーん、そういうことにすると楽しいからかな。
あかりちゃんも僕が本当に自分のことを好きなわけじゃないことをわかっていると思う。

美味しいものを食べて楽しく話して、その間さびしさは忘れて過ごす。
家に帰っても誰もいないし。
彼女はいない。

彼女が出来ると僕の家に彼女の持ち物が置かれるようになる。シャンプーとか色々。観葉植物を置いた人もいた。何なんだろうな…。
痕跡を残される、それがとても不快。だから、一人。

さびしいと思う日もある。だからといって彼女がほしいとは思わない。
恋人がいても家族がいてもさびしさはあるんだろうと思う。

一年に一歳年をとり、老いていく。平等なこと。
人間はさびしさを感じる生き物。
平等なこと。

昔の彼女が置いていった観葉植物は背が伸びて元気でいる。
僕も毎日さびしさを食べて元気に生きている。
これが僕の日常。



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