【声劇台本】月が紅く満ちる夜に1

演者人数 5人用台本(男性3 女性2) ※兼役あり
時間 40 分
【説明】
 最強の妖怪、九尾が復活!狙われた尊子姫を、晴明、道満、頼光は守り切れるか⁈
 平安バトルファンタジー!

・誤字脱字などがあった場合、連絡いただけますと幸いです。
・アドリブ、改変は自由です。
・女性の声が出せるなら、男性が尊子や九尾をやっても大丈夫ですし、男性の声が出せるなら、晴明、頼光、道満を女性がやっても大丈夫です。
・商用、非商用問わず連絡不要。

【キャラクター説明】

晴明
安倍晴明(あべのせいめい) 日本最強の陰陽師。優しくて陽気、そしてイケメン。男女問わず人気者。20歳。男性。

道満
芦屋道満(あしや どうまん)晴明に並ぶ力を持つ陰陽師。知的で冷静、優れた観察眼を持つ。が、嫌味な所があるため女子人気は低い。20歳。男性

頼光
源頼光(みなもとのよりみつ) 剣の達人でその腕前は日本一。戦闘力は晴明や道満が認める程高い。帝に対する高い忠誠心をもつ。豪快な性格で、良くも悪くも物事を深く考えこまない。20歳。男性。

九尾
九尾(きゅうび) 中国、朝鮮、日本と渡り歩いてきた最強の妖狐。人肉が好物。残忍で狡猾な性格。200年前に空海と激戦を繰り広げた後、100年の時を経て発動した空海の封印術により封印される。詳細な年齢は不明(少なくとも、千年以上生きている事だけはわかっている)。女性

尊子
尊子(たかこ)日本一の美少女。皇族としての責任感と、困っている人を見捨てられない性格、そして高い霊的潜在能力を持つ。が、それらを九尾につけ込まれ、九尾の封印を知らずに解いてしまう。そして、九尾の体として狙われる。14歳。

【本編】
尊子:「─っと。」
九尾:「悪いねえ、尊子姫様。こんな事させちゃって。」
尊子:「大丈夫よ玉お姉ちゃん。困ってる民草を助けるのは皇族の責務ですもの。あと、尊子姫様じゃなくてたかちゃんね。いつも言ってるでしょ?」
九尾:「そうだったね、たかちゃん。──それにしてもたかちゃん、やっぱり悪いよ。私の周りの石を全て退けて、動けるようにしてほしいだなんて、女の子に頼むような事じゃないよ。それに、もう5年もやらせちゃてるし。」
尊子:「本当に気にしないで。私、嬉しいの。夢とは言え、こうやって皇族の責務を果たせているのだもの。──よし、これで動けるんじゃない?」
九尾:「──うん。いけるね。本当にありがとう、たかちゃん。何か御礼させて。」
尊子:「いらないわよ、御礼なんて。」
九尾:「いや、そういうわけには──。」
尊子:「わかったわ。じゃ、玉お姉ちゃんが1番好きな食べ物を私に教えて!夢から醒めたら食べるから。」
九尾:「わかったわ。私の1番好きな食べ物、それは──。」
尊子:「ふあーあ、、、、。なんでいいとこでさめちゃうかなあ、、、。ま、次の夢で聞き直せばいいだけよね。、、、って、なにかしらこのニオイ?、、、、きゃああああああああああ!!!!」
晴明(ナレーション):「尊子が目にしたのは──。人間の死体。その傍らには手紙が落ちていた。それには、血でこう書かれていた──。」
九尾:「私の1番好きな食べ物、それは人肉。好きなだけお食べ、たかちゃん。5年間、本当に迷惑かけたねえ。迷惑ついでに最後に一つだけ。次の紅い満月の夜に、貴方の体貰うね。それまで余生を楽しんでね!」
尊子(ナレーション):「100年ぶりに復活した九尾、そして狙われた尊子姫。この事態に、日本最強の陰陽師である安倍晴明に、彼と同等の力を持つ蘆屋道満。そして酒呑童子(しゅてんどうじ)討伐の雄、源頼光とその配下の四天王が勅命(ちょくめい)により招集された。」
晴明:「やあやあ、久しいですなあ道満殿に頼光殿。いつぶりでしょう?」
頼光:「おお晴明、久しいなあ。オレの官位授与式以来だから、半年ぶりだな。いやあ、相変わらず元気そうでなによりだ。」
道満:「、、、、2週間前に、貴様の家で開かれた陰陽師の会合であっているハズだが、、、?」
晴明:「え?あー、、、、そう、、、でしたっけか、、、?」
道満:「はあ、、、。まあどうでもよい。作戦会議、さっさと始めるぞ。」
頼光:「作戦なんていらんよ。オレと四天王の5人だけで真っ向から返り討ちにしてくれる。」
道満:「作戦がいらんのではなく、作戦を理解できないの間違いだろ、脳筋。」
頼光:「俺たち5人なら、ゴチャゴチャ考えずとも真っ向から勝てると言っておるのだよ。悪鬼(あっき)・酒呑童子とその一団を叩き潰した時みたくな。」
晴明:「貴方方5人が図抜けた強者なのは、道満殿もよくよく存じておいでですとも。しかしながら、今回ばかりはそうもいきますまいよ。」
頼光:「そんなに強いというのか?九尾とやらは?」
道満:「まさか貴様、弘法大師(こうぼうだいし)殿の記録書を読んでないのか?まさか、持参してないとは言わないよな?」
頼光:「おう。読んでおらんし、持ってきておらんぞ。」
道満:「、、、やる気があるのか?貴様。」
晴明:「頼光殿!私、持参しておりますから!一緒に読みましょう!」
頼光:「すまんな、晴明。」
道満:「はあ、、、。まあいい。まずは簡単に概要から。九尾は大唐(もろこし)、高麗(こうらい)、日の本(ひのもと)と渡り歩いてきた最強の妖狐。人肉を好み、性格は残忍で狡猾。200年前に弘法大師殿と激戦を繰り広げた後、100年の時を経て発動した封印術により封印された。」
頼光:「そんな恐ろしい化け狐に、尊子姫様は御身(おんみ)を狙われていらっしゃるのか、、、。おいたわしや。」
道満:「九尾は数多(あまた)の術を使うが、その中でも特筆すべきは結界術と、「百鬼夜行(ひゃっきやこう)」だな。」
頼光:「結界術?どんな結界だ?」
晴明:「こちらの記述をご覧下さい、頼光殿。九尾は、縦横共に2尺程の黒い結界を張るそうです。結界内は禍々しい九尾の霊力で満ち、それが九尾の筋力と霊力が上げるそうです。」
頼光:「2尺?ずいぶんと小さいな。」
晴明:「その点については、こちらに記述があります。」
頼光:「あぁ確かに。なになに、、、「皆は口々に2尺程の結界だと言っているが、信じられぬ。中で戦った私からすれば、壁の厚さからして170丈(じょう)あり、縦横共に、850丈はあった。」、、、。でかいな、、、壊せんのか?」
道満:「結界は、弘法大師殿ですら、拳ほどの穴しか開けられなかったらしい。」
晴明:「私と道満殿が一緒になって解析・破壊を行っても、せいぜいが凹みを入れられる程度でしょう。弘法大師殿がやったような貫通は、絶対にムリです。」
頼光:「そうか、、、。それは難儀な。して、もう一つの「百鬼夜行」とは?」
道満:「「百鬼夜行」とは、九尾が従えている大量の妖怪を召喚し、攻撃対象に一時にけしかける技だ。しかも、九尾の霊力で一体一体強化されている。九尾の必殺技と言える技だ。」
晴明:「逃げ場のない結界に閉じ込め、百鬼夜行で押しつぶす。それが九尾の必勝の方程式でしょうなあ。」
頼光:「ふむ。しかし、百鬼なのだろう?一人頭10数匹倒せばよいだけであろう?そこまで脅威とは感じんが。」
晴明:「えーっと、頼光殿。それは、、、、。」
道満:「「百鬼夜行」の「百鬼」とは、それぐらい多いという意味であり、本当に百体こっきりという意味ではない。そんな事も知らんのか。」
晴明:「ほら、ここに記述があります。「「百鬼夜行」により召喚された妖怪共を、試しに数えてみたが、400から数えるのをやめた。」と。」
頼光:「あー、確かに。(ていうか数えたのか、、、。400まで。)」
道満:「全く、端くれとはいえ、この様な学のない者が源氏とはな、、、。泉下(せんか)の清和帝(せいわてい)や嵯峨帝(さがてい)も泣いておられる。」
頼光:「おい道満、さっきからケンカ売っておるのか?」
道満:「これは驚いた。ケンカを売られている事を解する頭があったのか。」
頼光:「貴様!」
晴明:「頼光殿!落ち着きなされ。道満殿も、嫌味な言い方は慎みなされ。」
頼光:「わかっておる!─ん?今思ったのだが、九尾の言うことを信じて良いのか?本当に、月が紅く満ちる夜に来るのか?」
道満:「ほう。貴様にしては鋭い。結論から言う。─その点に関しては大丈夫だ。安心していい。」
頼光:「なぜそう言える?(ん?今、さりげなくバカにされたような、、、。)」
晴明:「月が紅く満ちる夜は、妖怪の霊力も人間の霊力も最も安定するのです。そのような時でなければ、体を乗っ取るなど、いかに九尾といえどもムリなのです。」
頼光:「そうか、それは安心した。─それにしてもだ、結界術と「百鬼夜行」はどう対処する?」
道満:「悔しいが対処法が思い浮かばん。」
晴明:「私もです。難儀ですなあ、、、。」
九尾(ナレーション):「三人が頭を抱えたその時だった。」
尊子:「失礼します。」
頼光:「!」(3人同時に)
道満:「!」(3人同時に)
晴明:「!」(3人同時に)
尊子:「道満様と晴明様はお初におめにかかります。頼光様はお久しゅうございます。私、尊子と申します。此度は私の護衛、感謝申し上げます。」
頼光:「おお、これは姫様!お久しゅうございますなあ。いつぶりでしょう?」
尊子:「土グモ討伐の報告の時以来ですから、3年ぶりにございます。」
頼光:「ああ、もうそんなにたちますか、、、、。時の流れは速いですなあ!」
道満:「お初におめにかかります。蘆屋道満と申します。(九尾に狙われているというのに、気丈なものだ。さすがは今上(きんじょう)の娘か。)」
晴明:「お初におめにかかります。安倍晴明と申します。(日の本一の美少女と聞いていたが、、、。確かに、これは納得。)」
頼光:「姫様、此度(こたび)は災難でしたな。しかしご安心ください。邪悪なる九尾を、必ずや打ち倒しますゆえ。」
尊子:「そのことでお話ししたいことがあります。」
頼光:「はっ。何なりと。」
尊子:「ここまでご足労いただき申し訳ないのですが、私を守る必要はございません。」
頼光:「はい?姫様?」
道満:「、、、。」
晴明:「、、、どういう意味ですかな?。」
尊子:「此度の件、そもそも私が愚かなのです。なぜ同じ夢の続きを5年間も見続けるのか?疑問に思うべきでした。そして誰かに相談すべきでした。そうすれば、こんなことには、、、。夢とはいえ、皇族としての責務を果たす機会だと考え、なんの疑問も持たなかった愚かな私の責任なのです。」
道満:「確かにおっしゃる通り。誰かに相談していただきたかった。そうすれば、このようなことにはなっていませんでしたな。ええ、その通り。」
頼光:「道満、貴様!違います、姫様。姫様のそのお優しきお心を、利用した九尾が悪いのです。」
晴明:「その通りです。そもそも、九尾の幻術下にあっては、致し方のない事です。拒否のしようがない。」
尊子:「いえ、私は断ることができました。現に、体調の悪い日は、その旨伝えると、そこで夢は終わったのですから、、、。」
頼光:「それは、、、」
道満:「ほう、それはすごいですなあ。封印中とはいえ、九尾の幻術下にあって自由意志があったとは。そして5年かかったとはいえ、弘法大師殿の封印を解いたという事実。姫様の霊的な潜在能力の高さは、私や晴明並みですな。姫様はよき陰陽師になれますぞ。まあ、妖怪共に付け込まれぬよう、お人好しな性格をどうにかするか、注意深くなっていただく必要はありますが。」
頼光:「道満!無礼であろう!姫様、この馬鹿者の口にする事を、本気にしてはなりませんぞ。」
道満:「事実を言ったまでだ。」
頼光:「なっ!」
尊子:「よいのです頼光様。本当のことですから。」
頼光:「しかし姫様!」
晴明:「まあまあ、落ち着きなされよ頼光殿。道満殿も、先刻言ったハズですぞ。「嫌味な言い方は慎みなされ」と。─しかし姫、われらの護衛無しに、どう九尾に対処なさるおつもりでしょう?」
九尾(ナレーション):「頼光の問いに、尊子は涙を流しながら答えた。」
尊子:「毒を飲み、自ら命をたちます。」
晴明:「姫!それだけはなりませぬ!」
頼光:「そうですぞ、姫様!そんな事をなされては、天子様が悲しまれます!私も天子様にあわせる顔がありませぬ!なにとぞ御考え直しを!」
尊子:「しかし、これしか方法がないのです。皇族の私の尻ぬぐいを、守るべき大事な民草である皆様に押し付けるような事はあってはならないのです。民を守るのが責務の皇族が、民に守られ、民の命を危険にさらすような事はあってはならないのです。」
頼光:「しかし姫様、それでh」
道満:「「毒を飲む」ですか。名案ですなあ。是非ともやっていただきたい。」(頼光の「それでh」にかぶせるように)
晴明:「道満殿!何を!」
頼光:「貴様!いい加減にせい!」
道満:「九尾に寿命があるならば。」
尊子:「、、、え、、、?」
道満:「九尾に寿命はありませぬ。今の九尾は、自身の霊力で構成した霊体で存在しています。今回姫の体が手にできないとしても、九尾は霊体として永久に生きていられます。では、そんな九尾がなぜ姫の体を狙うか?それは、姫の持つ、高い霊的潜在能力を九尾が欲する故。姫の体を手にすれば、そのまま自分の潜在能力にできますからな。」
尊子:「そ、そんな、、、。」
道満:「よって、姫の案はわずかな時間稼ぎぐらいにしかなりません。九尾からすれば、気が向いた時に、何処へでも行って、霊的潜在能力の高い者を見つければよいのですからなあ。それこそ、姫の守りたい民草が狙われるやも知れませぬが、、、。まあ、それでも良いとおっしゃるのでれば、毒でも何でもお好きな様に。私は止めませぬ。」
九尾(ナレーション):「自身の見通しの甘さを突きつけられた姫。姫は泣きながら道満に問う。」
尊子:「、、、では、、では、、、私はどうすれば、、。」
道満:「何もしないでいただきたい。素人に下手に手を出されて、状況が悪化しては、勝てるものも勝てません故。」
尊子:「、、はい、、。わかり、、、ました、、。」
頼光:「道満!貴様!!!!姫様のお心がわからんのか?!自身のお命より、我々の命を優先するお優しさ!皇族としての責任感!貴様に人の心はないのか?!」
道満:「優しさ?責任感?そのような精神論でどうこうなる相手ならば、200年前に弘法大師殿が勝っている。」
頼光:「おのれ道満!もう容赦せん!姫様への無礼な物言いのみならず、姫様のお心を踏みつけにするその態度!誰が許してもオレが許さん!!!!ここで斬ってくれる!おい綱(つな)、金時(きんとき)、貞光(さだみつ)、季武(すえたけ)!誰ぞでもいい!ここへ参り、姫様をお庭にでもお連れせい!」
尊子:「いけませぬ!頼光様!」
頼光:「よいのです、姫様。あの様な人の心がわからぬうつけ者、斬った方が世の為です。ささっ、どうぞここからご退室くださいませ。」
道満:「面白い、、、!やってみろ。」
九尾(ナレーション):「その時、晴明が叫んだ。」
晴明:「落ち着きなされ!」
頼光:「!」(3人同時に)
尊子:「!」(3人同時に)
道満:「!」(3人同時に)
九尾(ナレーション):「晴明の声に気をとられる三人。晴明は優しく語りかける。」
晴明:「心配いりませんよ、姫。ここにはこの晴明と、道満(どうまん)殿、頼光(よりみつ)殿にその配下の四天王が集まってるんですから。崇徳院(すとくいん)が、道真(みちざね)公と将門(まさかど)公を引き連れて、攻めてこようが負けません。ですから涙をお止めください、可愛いお顔が台無しですよ?」
尊子:「か、かわいい、、、//はい、、、//」
晴明:「頼光殿、お気持ちはわかりますが、道満殿を欠いては勝てませんぞ。そうなって得をするのは九尾のみ。姫の事を思うなら、こらえてくだされ。」
頼光:「、、、わかった。」
晴明:「道満殿、九尾の性質と姫の案を照らし合わせ、意見を述べただけなのはわかっています。あの弘法大師(こうぼうだいし)殿ですら、やっとやっと引き分けたという事実を重く捉え、お気持ちがピリつくのもわかります。しかしながら、あまりにも無礼な物言いと態度ではありませんか?聡明な貴方に、姫のお心がわからぬわけがありますまいに。」
道満:「、、、、。大変申し訳ありませんでした、姫。九尾を倒した後、いかなる処分も、甘んじてお受けいたす所存。誠に失礼いたしました。」
尊子:「い、いえ。私の方こそ、軽率な事を口にし、申し訳ありませんでした。」
晴明:「ふう。─しかしまあ、あれですな。道満殿はこれを機に女子(おなご)に対する振る舞いを身につけるべきですな!」
頼光:「そんなのだから女子(おなご)からの人気が低いのだぞ、道満。」
晴明:「頼光殿の言うとおり!」
道満:「貴様ら、、、。狐狩りの後に狩るぞ。」
頼光:「面白い!忘れるなよ?その言葉。」
晴明:「おー怖い怖い。─とまあ、こんな感じです、姫。誰も九尾に負けることなぞ考えておりません。ですから毒を飲むなど、そのような事はお辞めください。姫のお心は、しかと伝わりましたから。この晴明に、姫の可愛い笑顔を守らせてください。姫には、指一本触れさせはしません。そして、必ずや九尾を討ち取ります。もちろん、誰一人として死にませぬ。お約束いたします。」
尊子:「可愛い笑顔、、、//コホン。わかりました。─それでは改めまして、此度の私の護衛、よろしくお願いします。」
晴明:「はっ。」
道満:「仰せのままに。」
頼光:「御意。」

九尾:(ナレーション)「そして、数日が経ち、月が紅く満ちる夜が訪れた」
道満:「(今晩、九尾が襲ってくる、、、ハズ、、だよな?)」
頼光:「その時、晴明は当代の陰陽頭(おんようのかみ)に対して、こう口にしたのですよ。「我が陰陽術は日の本一!」と。」
尊子:「まあ可愛らしい。」
晴明:「こ、9つの時の、は、話ですから、、、。」
道満:「(なぜこうも緊張感がない?)」
尊子:「晴明様のお話、もっと聞かせてくださいまし。」
晴明:「ひ、姫、か、勘弁してください。」
道満:「その顔で、女を大量にたらし込んできた話でもしたらどうだ?」
尊子:「─へえ。」
晴明:「ど、道満殿?!」
道満:「やっと多少は緊張感のある顔になったな。今夜は、九尾が襲ってくる夜だぞ。ふぬけた顔はやめろ!」
頼光:「そうピリつくな。貴様ら二人が張った結界に、なんの反応もないのだ。それに力めばよいというものでもなかろう。」
晴明:「そうですとも。設定した木札を持たぬ者が、今夜屋敷に入った場合、音がなる結界を張り、その木札を持っているのは外で警護している頼光殿の四天王の皆様方のみ。今のところ特n」
九尾:「木札というのは、これか?」(晴明の「今のところ特n」にかぶせるように。)
晴明(ナレーション):「声と同時に、血まみれの木札が部屋に飛び込んできた。」
尊子:「きゃああああ!」(4人同時に)
頼光:「!」(4人同時に)
道満:「!」(4人同時に)
晴明:「な!」(4人同時に)
九尾:「4人ともバカみたいにぶら下げておるから、何かと思えば、、、そうか、「許可証」の類いであったか。全く、結界を解除せずともよかったのう。まあ、すぐに解除できたから、さしてどうという事はなかったが。─さて、たかちゃん、体を貰いに来たわ。」
晴明:「来たか!姫、ここは危険です。ここより離れ、お隠れください。」
尊子:「は、はい!」
九尾:「無駄じゃよ。どこにいようと、霊力を探知すれば、居場所なぞ即刻わかる。」
頼光:「おい!貴様!!」
九尾:「ん?」
頼光:「オレの部下に何をしおった!」
九尾:「ああ、あの雑魚共か?お前の部下であったか。テキトーにひねらせてもらった。運が良ければ、生きておるかもなあ?」
頼光:「な!バカにしおって、、、!」
晴明:「落ち着きなされ。頼光殿。(しかし、二人で張った結界の解除に、気がつかなかったとは、、、。)」
道満:「(やはり九尾、結界術の腕前は規格外だ。)」
九尾:「ふむ。貴様らごとき、ここで潰してもよいのだが、、、、。冥土の土産だ。貴様らに見せてやろう、「本物」の結界術を。」
尊子(ナレーション):「そう言って、九尾が手を叩いた。瞬間、三人は結界へと誘(いざな)われた。」
頼光:「ここが、九尾の結界内か、、、。」
道満:「(なんと禍々しき霊力。)」
晴明:「(記録書通り、ですな。)」
九尾:「まずは1人。」
尊子(ナレーション):「そう九尾が発した刹那、九尾の拳が、頼光の顔面を捉えた。───閃光の如き速度───頼光は吹き飛ばされた。」
晴明:「頼光殿!」
道満:「(速い!)」
九尾:「(読みながら指を鳴らす)そこの2人、何を呆けておる?」 
晴明:「は?───グッ!」
道満:「ッ───ガッ、、、!」
尊子(ナレーション):「九尾が指を鳴らした瞬間、大小様々な石が、二人の頭上より野分け(のわけ)の如き勢いで降り注いだ。数多の石礫(いしつぶて)が、二人を飲み込んだ。」
九尾:「こんなものか、、、。先程の4人の方がまだ楽しめたな。まあよい、姫の体をいただくとす、、、ッ!!」
尊子(ナレーション):「瞬間、殺気を感じ、横に飛んだ九尾だったが遅かった。頼光の刀、「童子切(どうじぎり)」により、九尾の右手の指が、地に落ちた。」
頼光:「チッ!腕を狙うたんだがな!次こそ落としてくれよう!」
九尾:「!!なぜ生きておる。」
頼光:「ハッ、それより腕の心配でもせい!」
九尾:「(速い!)」
尊子(ナレーション):「九尾は4本の尻尾を伸ばして頼光を迎撃した。が、」
頼光:「らっああああ!」
尊子(ナレーション):「全て斬り落とされ、そして」
頼光:「貰った!」
九尾:「グッ、、、!」
頼光:「ふぅ。ヨシ、狙い通り。次は右腕を斬り落とす。その次は尻尾全部貰う!九尾!覚悟せい!」
九尾:「、、、貴様。名は、、、頼光で相違ないな?」
頼光:「!そうだ。」
九尾:「よいか頼光、よく聞け。妾は大唐(もろこし)、高麗(こうらい)、日の本と1000年以上渡り歩いてきた。が、貴様ほどの剣の名手は初めて見た。剣術においては、貴様が1番じゃ。」
頼光:「これは光栄。まさか九尾に認められるとは。」
九尾:「そんな貴様に一つ悲しき知らせじゃ。先刻、貴様が落とした妾の指と尾、それに腕じゃが──。ほれこの通り、一瞬で治ってしまったぞ?」
頼光:「!!それが悲しき知らせか?逆よ、嬉しき知らせよ!それでこそ斬りがいがあるというもの!幾度でも斬ってくれる!」
九尾:「はっ。頼光、貴様、狂っておるな。」
頼光:「それも褒め言葉として受け取っておく。────それより九尾、そっちこそ、何をぼーっとしておる?」
九尾:「何?ガッ!ゴフッ!グッ!」
尊子(ナレーション):「刹那、帯電した無数の氷塊(ひょうかい)が九尾を襲った。」
晴明:「あれしきで我々を倒せるとでも?」
道満:「人間を舐めるなよ、九尾。」
九尾:「、、、生きておったか、、、。貴様ら、名は?」
晴明:「安倍晴明。」
道満:「芦屋道満。」
九尾:「晴明に道満か。──侮って悪かったな。認めよう、貴様ら3人は強い。この手応え、弘法大師(こうぼうだいし)戦以来じゃ。」
晴明:「そりゃあどうも。あの九尾に、伝説の弘法大師と並べていただけるとは。」
九尾:「そこで貴様らに提案じゃが──。貴様ら、妾の麾下(きか)に入らぬか?」
晴明:「、、、は?」
道満:「、、、、ん?」
頼光:「どういう意味だ?」
九尾:「どうもこうも、そのままじゃよ。貴様らを妾の麾下にしたいのじゃ。貴様ら程の猛者がおれば、大唐、高麗、日の本のみならず、大越(だいえつ)も、天竺(てんじく)も、暹羅(しゃむ)すらも支配できよう。それに、妾なら貴様らの寿命も数百年は延ばせる。延ばした寿命で研鑽を積み、さらなる達人となるがよい。どうじゃ?悪い話ではあるまい?」
尊子(ナレーション):「思いがけぬ九尾からの提案。それに対し、3人は同時に即答した。」
頼光:「断る!」
道満:「ごめん被る。」
晴明:「却下だ!」
九尾:「、、、なぜじゃ?」
頼光:「数百年間、剣の鍛錬ができるのは魅力的だが、、、大恩ある天子様を裏切るわけにはいかんのでな!」
道満:「妖怪の配下など、想像しただけで吐き気がする!2度と口にするなよ。」
晴明:「女子との誓いを違えるような、最低な男にだけはならん!九尾、お主は必ず討つ!」
九尾:「そうか、、、。残念じゃな。」
道満:「それに」
九尾:「?それに?」
道満:「今ので確信した。九尾、貴様、相当消耗しているな?我ら3人だけではない、頼光の四天王達にも削られたな?先程、雑魚などと偉そうに言っていたが、あの4人が何もできずに負けるわけがない。」
九尾:「、、はっ。何を世迷言を。」
晴明:「世迷言ではないぞ。先程の石礫(いしつぶて)による攻撃、あの速さと質量による攻撃にしては威力が低かった。そして今の提案。見た目は無傷でも、あの4人からの反撃と、我々の攻撃で消耗していると解するのが妥当。」
頼光:「それでこそオレの部下!そういえば、オレへの打撃も思ったよりは軽かったな!歯が数本折れたぐらいだ。」
晴明:「(それはあなたの頑丈さがおかしいのですよ、頼光殿。)」
道満:「これでもまだ違うと言うか?九尾。」
九尾:「、、、、。(こやつら、、、鋭い、、。)どうとでも取るが良い。────先程も言ったが、貴様らは強い。そうそう出会わぬ達人共じゃ。」
尊子(ナレーション):「九尾は深く息を吸い、一息に叫んだ」
九尾:「その力に敬意を表し!全力でもって貴様らを叩き潰す!「百鬼夜行」!!!(パンと手を叩く)」
尊子(ナレーション):「九尾の叫びに呼応し、地から空から、無数の妖怪が現れた。」
晴明:「きたか!」
道満:「ここからが本番、だな。」
頼光:「何匹でも斬ってくれる!」
九尾:「物共、そ奴らを喰らい尽くせ!」
尊子(ナレーション):「九尾の号令と同時に、妖怪の群れが3人に一斉に襲いかかった。」
頼光:「はあっ!」
道満:「ふんっ!」
晴明:「らあっ!」
九尾:「200年前に弘法大師に使った時よりも、質も数も上じゃ!凌げるものなら凌いでみよ!!」
尊子(ナレーション):「3人は奮闘した。襲いくる妖怪を次から次へと薙ぎ払った。しかし───」
晴明:「グッ、、、!」
道満:「ガハッ、、、!」
頼光:「ギッ、、、!」
尊子(ナレーション):「多勢に無勢。3人は徐々に押され、そして───」
九尾:「(手を叩いて)「百鬼夜行」解除。───妾の提案に乗っておれば、妖怪のエサになどという、つまらぬ最期を迎えずに済んだであろうに。下らぬ意地と心中せずに済んだであろうに。」
尊子(ナレーション):「結界内に残ったのは、九尾のみであった。」
九尾:「さて、、、姫の体をいただくとするか。姫の居場所は、、、ここじゃな。(指を鳴らす)」
九尾:「お待たせしたわね、たかちゃん。」
尊子:「え、、、⁈皆様は?晴明様は⁈道満様は⁈頼光様は⁈」
九尾:「妖怪共の腹の中よ。」
尊子:「そ、そんな、、、。嫌ッ!晴明様ッ!晴明様ッ!嫌ぁああああああ!」
九尾:「ふん。嫌でもなんでも、これが現実。さあたかちゃん、その体、私にちょうだい。」
尊子:「嫌ぁあああああ!」
尊子(ナレーション):「その瞬間、血飛沫があがり、右腕が大きく空を舞った。──九尾の右腕が、斬り落とされた。」
九尾:「!!!グァアアアアッ!!!」
頼光:「言った通り、右腕貰ったぞ。九尾!」
尊子(ナレーション):「横っ飛びに飛びながら、声がした方に九尾が向くとそこには」
頼光:「悪いな九尾!姫様と約束したのだ。指一本姫様には触れさせぬ。」
道満:「貴様を必ず倒す。」
晴明:「そして、誰一人死なぬ!!!」
尊子(ナレーション):「百鬼夜行に飲まれたはずの3人が、満身創痍ながらも、立っていた。」
九尾:「なっ、、、!」
尊子:「晴明様!!道満様!!頼光様!!」
頼光:「姫様、ご心配おかけしましたな!しかしながら、追い詰めたとはいえ、ここはまだ危のうございます。お下がりくださいませ。」
尊子:「はい!」
道満:「キズが回復しないな、九尾。わかるだろう?年貢の納め時だ。」
九尾:「何故だ、、、?何故生きておる?この目で確かに見た!貴様らは、確かに百鬼夜行に飲まれたハズ!」
晴明:「簡単な話さ、九尾。キモはその百鬼夜行。まずは私と道満殿で、お主の結界を解析・破壊し凹みをいれる。その凹みに3人で逃げ込み、結界で閉じる。そして、お主が結界を解除するまでその中で過ごす。」
道満:「九尾、貴様の目には、我らが百鬼夜行に飲まれたように見えたであろう?結界を埋め尽くす程の妖怪を召喚する「百鬼夜行」、そこをつかせて貰った。」
九尾:「バカな、そんな偽装に妾が引っかかるワケが、、、。」
晴明:「平時なら、な。頼光殿の四天王達、我々3人との連戦、そして「百鬼夜行」の使用。あそこまで疲労したお主なら騙せる!」
道満:「言ったハズだぞ、九尾。人間を舐めるな。」
九尾:「クソッ!」
頼光:「遅い!」
尊子(ナレーション):「九尾は全ての尾で反撃を試みたが、頼光に全て叩き斬られた。」
道満:「諦めろ。」
晴明:「九尾、覚悟!!!」
九尾:「クソッ!クソがああああああ!!!!」
尊子(ナレーション):「晴明と道満が同時に放った大量の呪符により、九尾は切り刻まれた。1000年以上生きた最強の妖狐・九尾、ここに散る。」
晴明:「ふぅ、、、、。ふぅ、、、。」
頼光:「ハァッ、、、!ハァッ、、、!」
道満:「なんとか勝った、、、な、、、。」
尊子:「晴明様!!晴明様!!!」
晴明:「イデデデデ!姫、勘弁してください!全身ズタボロなんですから!」
尊子:「あっ、、、申し訳ありません、、、。」
頼光:「お熱い事で。」
道満:「惚気なら他でやれ。」
尊子:「の、惚気だなんて//」
晴明:「二人とも、からかうのはおやめ下さい。──時に頼光殿、その、四天王の皆様のことですが、、、。」
頼光:「あぁ、心配いらんさ。あ奴らのしぶとさはオレが1番知っておるからな。」
道満:「何を根拠に、、、。」
九尾(報告係):「報告いたします!」
晴明:「ん?」
九尾(報告係):「頼光様配下の四天王の皆様が、重傷で倒れていらっしゃるところを通りがかった陰陽師が発見!至急、医療系陰陽師の詰所(つめしょ)に運び治療致しました所、先程全員目を覚まされました!」
尊子:「まあ!」
頼光:「流石はオレの部下!」
道満:「、、、ふぅ。」(ほっとしたように息を吐く)。
晴明:「かないませんな。」
九尾(報告係):「しかしながら、、、。」
尊子:「しかしながら?」
九尾(報告係):「目を覚まされた途端、全員が口々に、「殿に助太刀いたす!」「もう一太刀入れてくれる!」等々叫び、飛び上がってこちらに戻ろうとする有様!さらに、抑えようとする陰陽師や武士を次から次へと薙ぎ払う始末!皆様の姿をお見せしなければ、最早収まりがつきません!」
頼光:「流石はオレの部下!」
尊子:「えぇ、、、。」
道満:「、、、あの4人、人間か?」
晴明:「はは、、本当にかないませんな、、、。」

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