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8.擬態~「変な家2」

 飼っている猫が仏間の隅を意味ありげに見つめている。パーテションの隙間からいつもと違う気配を感じる。金縛りにあったとき胸の上を動物が歩いていた感触があり、あまりにも生々しかった・・・
 私たちは程度の差こそあれ日常に奇異を経験している。そして一々気にしてもしょうがないという理由で些細なことと片付ける。

 かつて霊は「お盆のお墓」など非日常から連れてきてしまうものだった。それが菌などと同様に見えずとも、そこいらにいる存在に近接してきているという指摘がある。確かに出入りが多く、地域の絆が息づいていた時代、家に非日常は入り込みずらかった。
 
 さて「変な家2」雨穴(著)には11の間取りが出てくる。1章は誘導に従い推理できた。2章は家相上の指摘をじっくりと読めた。そして中盤からは糸を引く気持ち悪さが滲み出てくる。そう言えば「沖縄で墓とは死後の家であり、胎内である」と思い出す。そうして暗然とした感覚に読後は包まれる。雨穴氏の外見は一種異常であるが、それは誰しもが持つ闇を具象している。

 なお短いタイトルは稚拙さを漂わせていて、読み手は上から目線で読みがちになる。それが作家の張り巡らせた罠とも気づかずに。
(500文字)

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