スピリチュアル研究家の読書録

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最近の記事

22真偽不明、具体策なき警告書~「私が見た未来」

 人は時に第六感を通じて未来を知ることはあるが、妄念に過ぎない場合もある。そして不幸な未来が見えたとして結果を変えられないのであれば苦痛でしかない。「私が見た未来」たつき諒(著)を読みあとがきの言葉が深く心に刺さった。  本書は商品として市場に出回っている出版物であり営利を目的としている。その上で出版社は「売れされすればよい」という考えなのか、「警告」が主目的なのか今一つわからない。また不幸な未来を回避できたなら本書はデマだったと見られることになるが、それで作家を守れるのか

    • 21この手で選ぶ未来~「奇想天外不思議をどうぞ」

       たどたどしく意思を主張できるようになった子供が小銭を握りしめ駄菓子屋に行く。それは彼が一人で接する商社会である。店に着きずらりと並ぶ菓子を見つめ、傍らに親はいない。そんな時に見上げる店主は無条件に優しい存在とは限らない。怖さが入り混じりながらも、目の前の未知のチョコを一つ手に取り、小銭と引き換えて自己のものとする。簿記の「菓子5/現金5」【「自分で選ぶ未来5/菓子5」】が成立した瞬間である。  「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」のオープニングテーマを何度か聞いているうちに、これは深

      • 20.商いとポジショニング~「タピオカ屋はどこへいったのか?」

         私が住む地方都市でも振り返ればタピオカに前後して高級食パンのブームがあった。コロナ感染症流行下で外食を控えていたころに唐揚げ屋があれよあれよと増えていき、それに前後しておにぎり屋を見かけるようになった。それらは今後どう変遷していくと予想されるのか。  「タピオカ屋はどこへいったのか?」菅原由一(著)は元税理士で現在はコンサルタント業を営む著者により浅く広く商売のコツが書かれている。ソロ活、多様性、サードスペース、既婚者マッチングなど近年の変化を物語る言葉を思い浮かべながら

        • 19 霊能者という仮面の下~「霊と金」スピリチュアル・ビジネスの構造

           光射すところに必ず影が生じる。スピリチュアルという言葉が世に認知され普及していった20年ほど前、その言葉は物質偏重に対するアンチ・テーゼで古来からの精神性に回帰しようという響きがあった。対して現代はどうか。一種いかがわしさがある。ちなみに言えば秋祭りの境内に立つお化け屋敷やサーカス小屋の猥雑さは縁日の華でもあり、いかがわしいだけでは罪はなく魅惑でもあり、法外な料金が加味された時に悪質性が問われる。  スピリチュアルの本来の意味が霊性とか精神性だとすると、現在巷で言われてい

        22真偽不明、具体策なき警告書~「私が見た未来」

          18 得失を帳簿記入するとき冷静になる~「熊撃ちの女」

           「熊撃ちの女」安藤薮太(著)を読むと狩猟は本来ギャンブル性の強い営みであり、獲物を獲得する確率を上げるのが猟師の知恵であり技術なのだと理解できる。つまりギャンブルとは食欲などの根源的な欲求というより食料調達の確実性・効率性を問う思索領域の活性化ではないだろうか。  つまり株にのめり込む、投機性の強い事業漬けの生活を送る、スマホガチャにハマるなどの症例も報酬を過剰に求めるという点で中毒性がある。いずれにせよ相手が猛獣か否かという差異はあっても呼吸を荒げ冷静さを欠けば取り返しの

          18 得失を帳簿記入するとき冷静になる~「熊撃ちの女」

          17縁:世界に与え、受け取るもの~「世にも奇妙な君物語」

           市役所へ行く。「期末の3月中にお支払いできないのは心苦しいのですが、結論から言えば今はお支払いできません。来月の16日まで待っていただけますか。」と市民税の納付担当者に伝える。彼女が訊き返してきたのは「来月16日が給料日なのですか」ということだった。ギャンブラーを自任していた過去の愚かさを噛み締める。  ところで宝くじ高額当選者の言葉を調査していた時に「寄付をするつもりで買ったら当たった。」と言うのがあった。それは見返りを求めず人助けをすることを日常的にしている人の言い回し

          17縁:世界に与え、受け取るもの~「世にも奇妙な君物語」

          16 心の穏やかさと瞑想日誌~「はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿」

           運という捉えどころのないものをよくしようとするより、縁つまり対人関係をよくする方が確実だとして、そのためにはどうすればよいのか。  そこで対人関係をよくするには心の穏やかさを保つことだと考えて、1日5分の瞑想と、3行程度の瞑想日誌を付け始めてから2週間が経過する。どちらかと言えば日記の効果かもしれないが以前より姿勢がよくなった。そして、肺の圧迫が除かれ呼吸が深くなっているように感じる。東洋思想的に言う「心身一如」で、1日5分間の瞑想にさえ呼吸を深め心身を安定させる効果がある

          16 心の穏やかさと瞑想日誌~「はぐれ宮司の事故物件お祓い事件簿」

          15値千金の清涼感~「正直不動産」

           私は今まで一度も嘘をついたことがない□はい□いいえ  例えば採用試験などで上記のような問いに出くわしたことはないだろうか。当たり前に考えれば一度も嘘をついたことがない人はいない。しかし試験に受かりたい一心で、あるいは今後嘘をつかなければ辻褄が合うと考え、はいと答える場合がある。この問いをライ・スケールと呼び、診断そのものの信頼性をはかる目的がある。これに多く触れれば信頼性が揺らぎ、自分を偽って見せる人物だと評価される。問題は、この設問の意図を知ってしまえば嘘つきでも引っか

          15値千金の清涼感~「正直不動産」

          14 運より縁を大切にする~「半グレ」

           最近、ギャンブルの強さと運の強さは根本的に違うのだと考えるようになってきた。そして本屋を歩いてたところ「半グレ」草下シンヤ(著)という書籍が目についた。    主人公は一般の家庭に育った常識家であり際立った個性の持ち主ではない。焦りを抱えたまま入社したイベント会社において、生来の慎重さや勤勉さにより企業の堅実な発展に寄与をしていく。しかし実務の中で振り込め詐欺などに関わる中でいびつな価値観を吸収していく。彼自身がブラックな働き方を強いられているというより、入社先が反社会的

          14 運より縁を大切にする~「半グレ」

          13生かされている意味を問う~『役に立たない人生相談2 好きなようにやればいい。』

           座標感覚を失い泳ぎ続けるような日々の中で、しばし仰向けになり波間に漂う。そんな風に揺蕩(たゆた)うことができたなら少しは楽になれる。不意に自己以上の大きな力を持つ存在を認めた時に「何のために生きるのか」という問いが「どう生きていこうか」とゆっくりと変換されるように。  「冥界からの電話」佐藤愛子(著)はミステリー的なタイトルであるが、真実を突き詰めるわけでもなく分類上は随筆だろう。知人医師が体験する死者からの電話は肝心な部分が要領を得ない。しかし2度目に読んだとき、この本

          13生かされている意味を問う~『役に立たない人生相談2 好きなようにやればいい。』

          12小さくても与える生き方を継続する~「より少ない生き方 ものを手放して豊かになる」

           開運に関する本を1週で50冊読み続けると、何かを得ることだけを考える方法には無理があることがわかってくる。あえて言えば、迷信を実践することで仮に臨時収入を得たとしても、本質から遠ざかることが怖い。    有形無形とを問わず何かを得る時には、それと釣り合う何かを失うことが道理である。逆に何かを失う時は、それと釣り合う何かを得る時でもある。得失が即時とは限らないのでわかりにくいが、長く繫栄する企業や一族は徳を積み続けている。徳とは言い換えれば高貴なる者の務め、つまりは自分が無償

          12小さくても与える生き方を継続する~「より少ない生き方 ものを手放して豊かになる」

          11オトクな話と豊かさの騙し絵~『ガラクタ捨てれば自分が見える』

           ありがとうを年齢×1万回言えば奇跡が起こるという開運法を耳にしたことがある。それは白けた気持ちになる話で、本当に感謝をしているなら行動で示せよと感じる。また、「貰えるものなら一円でも多く手にしたい」という人に待っている未来とは幸福だろうか。「自分だけが過分な報酬を得た上で欲望のままに散財する先」に幸福があるわけがない。(参考文献:「タルムード」)  配当金が売り上げの半分以下で、他の賭け事に比べ予測の要素が小さいために「愚か者に課せられた税金」という呼称が宝くじにはある。

          11オトクな話と豊かさの騙し絵~『ガラクタ捨てれば自分が見える』

          10仕事の中に好きを見つける~「ただいま神様当番」

           「好きを仕事にする」ーいかにもキャッチコピー的な響きで実際にそうできればよいが、好きであっても仕事にしたなら面倒な部分が発生するのではないか。スピリチュアル風な言い回しが流行する昨今、「仕事の中に好きを見つける」という台詞を登場人物に言わせる本作は手堅い人生観に裏打ちされている。「ただいま神様当番」青山美智子(著)。  思わぬ拾い物をした縁で神様当番をすることになった主人公の面々が神様と繰り広げるバトルが面白い。悲しいかな人は立場や義務によって、自分の意にそぐわぬものを

          10仕事の中に好きを見つける~「ただいま神様当番」

          9.擬態~「変な家2」

           飼っている猫が仏間の隅を意味ありげに見つめている。パーテションの隙間からいつもと違う気配を感じる。金縛りにあったとき胸の上を動物が歩いていた感触があり、あまりにも生々しかった・・・  私たちは程度の差はあれ日常から怪異を経験している。そして一々気にしてもしょうがないという理由で些細なことと片付ける。  かつて霊は「お盆のお墓」など非日常から連れてきてしまうものだった。それが菌などと同様に見えずとも、そこいらにいる存在に近接してきているという指摘がある。確かに出入りが多く、

          8 高貴なる者の務め~「自律神経がすべて解決してくれる 」

           占いを有料で行わないゲッターズ飯田氏を近くに見た時、オーラも感じない代わりに占い師特有のいかがわしさも感じなかった。占い師の中には客に不安になることを言い放ち依存させる者も少なからずいるが、彼の本質は研究家気質の作家なのだと感じた。「運が悪いと言って幸運になれた人はいない」という言葉から「運」をコントロールしているという自負を感じた。  占いよりも、「私は幸運になる」と決意をすることが重要であるのなら、占い師とは顧客に「幸福への決意を提供する」存在だと言える。往々にして

          8 高貴なる者の務め~「自律神経がすべて解決してくれる 」

          7.魂の階層の踊り場~「占」

           探偵への依頼で多い案件は不倫調査だという。それで女性スタッフを雇う必要があると本職から聞いた。では占いで多い依頼は何か。これも同様で若年から中年女性の人に言いにくい悩みで、金銭以外の問題とすれば道ならぬ恋なのである。では危険ではあるが相性も互いの運気もよければ応援するべきか。それでトラブルに発展した場合、過失は誰にあるのか。止めてほしいのか、応援してほしいのか。止めるべきなのか。応援するべきなのか。    「占」木内昇(著)を読むと、占いを受ける側はもちろん、占いをする側

          7.魂の階層の踊り場~「占」