2.親切な人~「怪談和尚 妖異の声」

 幼い頃臆病だった私は、どこへ行くにも親の手を引いて歩く子供だった。だから、その日は、真新しいものに惹かれ駆けだしたりしたのだ。気が付くと私は迷子センターにいた。警備員のおじさんは妙に不安を搔き立てることを言う。くすんだ色調の制服、緩慢なおじさんの働きぶり。するとそこに現れた母を名乗る女性。少し考え、空気さえもが止まった迷子センターを出たい一心で私は女性のもとへと寄った。(続く)「迷子センター」より
 
 コロナ以降、あの世とこの世の境界が崩れているとの指摘がある。縁もゆかりも簡単につながっては千切れる巨大阿弥陀くじのような世の中で、岐路に立つ時に自ら信じられる道を切り開ける強さがあればよい。ただ途方に暮れる時にどのような縁が生じていくのか。
 今ここで生じる関係性とは基本的に過去の行為の集積体であり、随意的に変えられるものではないのかもしれない。ふと秋のお彼岸の頃に「心霊スポットに行くより墓参りに行った方がいいよね」と言っていた知人の言葉を思い出す。

 「怪談和尚 妖異の声」 三木 大雲 (原著), 森野 達弥 (著)。森野氏は水木しげる氏の系譜にあたる漫画家で怪談と画風のシンクロ率は高い。
(500文字)


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