妹の友達のアルノちゃん#4【どっち派】
とうっ!!
ぐえぇっ!!
休みの日は大抵、妹のボディプレスとともにスタートする。
和:おきろー、もうお昼だぞー
・・・・・・
うぅ、苦しい・・・
今週は特に仕事が立て込んでいたせいか、いつも以上に身体が動かない。
脳は起きようと思っているのに、身体が追いついていない感覚だ。
せめて右手だけでも動かしてなぎにどいてもらいたいんだが、全神経を集中させても指がかすかに動くだけだった。
・・・・・・
和:なんかすごい疲れてる?
なぎにもそれが伝わったようだ。
和:それなら、しょーがないね
そう言って重みから解放される。
なんだ、優しいじゃないか。
後で起きたらちゃんと埋め合わせを・・・
はいっ!!
ぐえぇっ!!
油断していたところに強烈な2発目をお見舞いされる。
あまりのショックで身体が動き始める。
和:起きろー、もう昼だぞー
◯:なぎ、おまえ;;;
和:んっ
ぐぐっと更に体重を乗せて、頭を向けてくる。
はぁ・・・早くしろって事ですね
ポンポンと背中を軽くタップしてから強めに頭をワシワシと撫でる。
和:ふへへ
いつもの儀式を終えてようやく重みから解放された。
〇:あのなあ;;頼むから普通に起こしてくれよ
和:そんな事言って起きないじゃん
それはたしかに・・・
和:ねえそれより、今日お祭りあるでしょ
〇:そうだっけ
和:夕方くらいに行こうと思ってんだけど
〇:ふーん
和:ボディガード募集中です
〇:へえー
和:立候補する?
〇:やめときます・・・面倒くさいんで
和:えっ、嘘でしょ?可愛い妹とアルノがどこぞのニイチャンにナンパされてもいいの?
ちなみに只今胸ぐら掴まれ中だ。
っていうか!このパターンは
既視感しかないシチュエーションに、慌てて部屋の入り口に目を向ける。
・・・・・・
・・・・・・
あれ?
・・・・・・
・・・・・・
和:どしたの?
・・・・・・
和:もしかしてアルノが来てると思った?
こいつ・・
憎たらしくて、可愛らしい顔をたっぷりぶつけられる。
〇:別に・・・・
和:アルノは夕方くらいに来るよ
〇:ふーん・・・
和:浴衣着てくるって
・・・・・・
・・・・・・
浴衣か・・・
・・・・・・
・・・・・・
和:どうだった?
〇:ん?
和:とぼけちゃってぇー、アルノの浴衣姿想像してたでしょ?
〇:・・・してません
和:嘘つきは地獄行きだよ、エロ兄ちゃん
・・・・・・
・・・・・・
お見通しってわけですね・・・
〇:ちょっとだけ・・・
和:ふふふ、正直でよろしい
和:ってことでよろしくね、お財布兄ちゃん
〇:ぐぬぬぅ・・・
和 アルノの浴衣姿が見れるんだから安いもんでしょ
・・・たしかに激安だ
和:あ、その代わりってわけじゃないけど、今日は私がお昼作るよ
〇:え?マジ?
和:食べてくれる?
〇:ああ、うん・・・
和:じゃあ下で待ってるから着替えて早く下りてきてね。お兄ちゃん!!
なぎもなんだかんだで料理はできる方だ。
たまに、ほんとにたまに気まぐれで作る時があって、そーいう時は決まってオレの分も作ってくれる。
いつも傍若無人に振舞う妹が、オレに料理を作ってくれる。
それは色見の無い人生において、素直に嬉しいと思える瞬間だった。
あんまり急いで行くと、めちゃくちゃ楽しみにしてるみたいで恥ずかしいので、たっぷり時間をかけて着替えないと。
どうせなぎは、その辺お見通しなんだろうな、なんて思いながらクローゼットを開けた。
ア:あっ
リビングに入ると聞き覚えのある声が耳に届く。
エプロン姿のアルノちゃんが笑顔でテテテっと寄ってきて、ちょこんとお辞儀する。
その破壊力たるや・・・
巨大ハンマーで顔面をズドーンって感じだ。
ア:〇〇さん、おはようございます
・・・・・・
・・・・・・
〇:・・・アルノちゃん?
ア:はい、お邪魔してます
〇:・・・エプロン?
ア:あっ;;はい///・・・えっと変・・・ですか?
〇:いや、メチャクチャ似合っててすっごい可愛い。最高すぎる、毎日見たいっていうか、ずっと見ていたいっていうか、ほんとごちそうさまです
ア:ぇええ!!・・・・な、なんですか;;;褒めすぎです//////
〇:でも夕方に浴衣で来るんじゃ・・・
ア:はい?
んっと小首をかしげるアルノちゃん。
事態が呑み込めずに戸惑っていると、ソファからじーっとこちらを見ていたなぎが笑い出す。
和:あははは!!!おもろっ!!!
和:てってれー!!アルノはもう来てましたー
〇:なんなんだ、これは・・・
和:ドッキリだよ!大成功!!
こいつ、自由がすぎる・・・
一気に全身から力が抜けて、両膝がお仕事をやめてしまった。
ア:えっ、えっ;;;なんかすみません
〇:いやアルノちゃんは全然いいんだよ、全部なぎのせいだ
和:気にしないでアルノ。大丈夫だから
ア:あ、うん
ア:えっと、もうちょっとでできますので;;;;
そう言ってキッチンに戻っていく。
〇:おい、なぎ
和:ん?
〇:何が起きてるのか説明してくれ
和:えぇー、喜んでくれると思ったんだけど
〇:なんの話しだ
和:だから浴衣とエプロンだったら、お兄ちゃんはエプロンの方が好きでしょって話し
・・・・・・
・・・・・・
〇:そんなの当たり前だろ!!
〇:エプロンは頂点でトップで最強で最高で、ただの衣類じゃないんだぞ!!
・・・・・・
・・・・・・
和:ガチでキモい・・・
〇:・・・今のは悪かった。とにかく説明してくれ
和:アルノがお兄ちゃんになんかお礼したいって言っててさ
和:「何が喜んでもらえるんだろう」って迷ってたから
和:デートでもしてあげれば?って言ったんだけど
和:「それはちょっとハードル高い」って真っ赤になっちゃったのよ
和:それで、お兄ちゃんが喜ぶ事か―って考えてアルノに言ったの
和:私がたまにごはん作ると泣いて喜ぶんだよねーって
和:あと、お兄ちゃんはエプロン女子に目が無いんだよねーって
和:そしたらごはん作らせてほしいって、食べてくれるかなって、エプロンはどういうのがいいかなって
和:アルノってほんっとに可愛いんだよー
なるほど
色々言いたい事はあるが、ようやく状況が掴めた。
アルノちゃんがご飯作ってくれてるってことか。
ア:お待たせしました
〇:おぉー、親子丼
ア:はい、はまってた時期が合って、唯一まともにつくれるものなので
親子丼にハマるってなんか面白いな・・・
〇:じゃあ、いただきます!・・・んうっ、美味いっ!
ア:よかった・・・
和:んっ、おいしー
〇:アルノちゃんめちゃくちゃ上手!
和:うんうん。毎日これ作ってほしい
ア:ふふ、毎日親子丼はキツいでしょ
〇:本当美味しいよ、これなら毎日食べたい
ア:あ;;;ありがとうございます
〇:アルノちゃん
ア:えっ;;は、はい;;;
〇:これレシピ聞いてもいい?
ア:あ;;もちろんです。そしたら私もパンケーキ教えてもらえますか?
〇:うん。じゃあ、今度一緒に作ろうか
ア:えぇぇ!!いいんですか?
〇:アルノちゃんさえよければ
ア:はい、お願いします//////
和:おーい、仲間はずれにすんな
〇:してないしてない;;;
和:どうせ、教えるとか言ってアルノにエロい事しようとしてんだろ
〇:してないしてない;;;
和:「そこはこうやってやるんだよ」とかいって背後からアルノの両手をとって
和:ピトッて身体を密着させて
和:わざと耳元で何度もアルノちゃんって名前を読んで
和:緊張で動けなくなってるアルノの白い首筋に息を吹きかけて
和:「あっ///」って漏れ出た艶っぽい声に我慢できなくなったエロ兄ちゃんは
和:アルノの内腿からお尻に沿って撫で上げるように
〇:やめろやめろぉー
アルノちゃんはというと、
案の定回路がショートして、白目をパチンパチンさせていた。
まあ、そうなりますよね
その後結局、オレもリビングに居座ってそのままダラダラと3人で休日を満喫してしまった。
2人の様子を見ていると、なぎが大分アルノちゃんに心を許している事。
アルノちゃんがそんななぎを理解して優しく見守ってくれている事が分かる。
なぎは良くも悪くもまっすぐで、器用なタイプではない。
これまで友達との関係で悩んでいる姿を幾度となくみてきたけど、オレにできる事は無いに等しかった。
それでもアルノちゃんと出会ってからのなぎは、なんだか楽しそうで。兄としては少し安心してしまう。
なぎと出会ってくれてありがとう・・・なんて台詞が脳裏をよぎったけど・・・
さすがにくさいか・・・と思い直して、念を飛ばすだけにしておいた。
〇:そろそろお祭り行くか?
30分ほど前からソファでずっとゴロゴロしているなぎに声をかける。
和:うーん・・・
・・・・・・
・・・・・・
〇:体調悪いのか?
和:お腹痛い・・・生理きたかも・・・・
あぁあ・・・
和:ごめんアルノ
ア:全然、無理しないでいいよ
〇:残念だけどしょうがないな
和:うん、じゃあ留守番してるね
〇:ん?
和:せっかくアルノ来てくれたんだし2人で行ってきてよ
ア:えっ;;なぎっ、ちょっと;;;
和:とりあえず焼きそばとお好み焼きね
〇:は?
和:あと、たこ焼きとじゃがバタと
和:焼きまんじゅうとロングポテト
和:ベビーカステラとリンゴ飴も忘れないで
和:あとなんか追加で美味しいやつ
・・・一番困るタイプの注文
〇:そんなに食えないだろ
和:ダメ!!絶対食べたい!!
〇:そーいう時って食欲なくなるんじゃないのか?
和:そんなの人によるでしょ、ねーアルノ
ア:え、うん//////
和:アルノは生理の時って食欲無くなる?
ア:えぇぇ;;;;
なぎが分かりやすくアルノちゃんをいじりだしたので、おとなしくいう通りにする事にした。
〇:わかったわかった、行ってくるよ
和:ゆっくり楽しんできていいからねー
〇:はいはい、行こうか。アルノちゃん
ア:は、はい;;;よろしくお願いします;;;
【続く】
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