妹の友達のアルノちゃん#8(完結)【ふたり】
コンコン
和:お兄ちゃん、ちょっといい?
自室でアルノちゃんへの想いに気づいてしまったところに、なぎの声が扉越しに届く。
〇:なぎ・・・
・・・・・・
・・・・・・
和:さっきは言い過ぎた、ごめんなさい
謝らないといけないのはこっちなのに、先に謝られてしまって慌てて身体を起こす。
〇:いや、なぎは悪くない。悪いのはオレだ
〇:オレを想って心配してくれたのに、関係ないなんて言って本当に悪かった
締め切った部屋の入口に向かってしっかり頭を下げると
すんっと鼻をすするような音が微かに聞こえる。
・・・・・・
〇:なぎ、聞いてほしいんだけど
うまく言葉に出来る気はしないが、正直な気持ちを伝えるべきだという事くらいは分かる。
〇:あのさ、オレ・・・
〇:なぎにも、アルノちゃんにも本当に感謝してて・・・
〇:オレにとってふたりとも大切で・・・
〇:だから、その・・・なんていうか・・・
和:ねえ、あんまり妹をなめない方がいいよ
〇:へ?
和:これは独り言・・・
〇:なんだよそれ?
和:ちょっと黙って聞いて
・・・・・・
和:好きになっちゃいけない人って自分で決めてたのに
和:気づいたら好きになってた
和:でも、その人は妹の大切な人
和:自分のせいでその関係性を壊したくない
和:だからこれ以上は踏み込むべきじゃない
和:独り言終わり・・・
・・・・・・
・・・・・・
和:私は言いたい事言ったし・・・
和:勝手に心配はするけど・・・
和:決めるのはお兄ちゃんだから・・・
和:お兄ちゃんが考えて決めた事ならって思うようにするよ
〇:なぎ・・・・
お見通しとかそういうレベルじゃない。
オレよりもオレの気持ちを言語化できる妹に感服するしかなかった。
和:そー言えば焼きそばとか、ありがとね
〇:ああ、言ってたやつ全部買ってこれなくてごめんな
和:そーだよ、全然足らなかった。来年は絶対全部買ってよね
〇:わかった、約束する
和:来年お兄ちゃんに彼女がいなかったら一緒に行ってあげるよ
◯:そうだな、来年は一緒に行こうか
扉越しになぎの笑顔が見えた気になって、少し安心する。
和:お兄ちゃん明日も休みだっけ
〇:ああ・・・
和:明日は無理やり起こさないからさ、たまにはゆっくり休んで
〇:ありがとう・・・そうするよ
和:お休み
〇:うん、お休み
なぎの優しさに目の奥がツンとなって
来年は、なぎとふたりで屋台制覇か・・・いくらかかるんだろうなんて馬鹿げた想像をしながら、
そう悪くない気分でどん底の深さまで沈んでいった。
ーーーーーー
ーーーーーー
えいっ/////
ぐえぇっ;;;
休みの日は大抵、妹のボディプレスとともにスタートする。
昨日随分と深いところまで沈んでいたからだろうか、いつも以上に目が開かない。
昨日の夜の感じから、まさかいつも通りに起こされると思ってなかったけど、
オレよりもオレを分かっているなぎの事だ。
気まずくならないようにわざとやってるのかもしれないな。
そこまで分かっていても、乗っかられれば苦しいものは苦しい。
◯:おい、寝かしてくれんじゃなかったのかよ
・・・・・・
・・・・・・
〇:おーい、なぎさーん
・・・・・・
・・・・・・
今日は、だんまりか・・・
〇:分かったよ、起きるって
・・・・・・
・・・・・・
とりあえずいつもの儀式をする。
背中をポンポンとタップして、頭をワシワシと強めに撫でる。
・・・・・・
・・・・・・
ん?
いつもはこれでどいてくれるんだが
・・・・・・
・・・・・・
〇:起きるからどいてくれって
・・・・・・
・・・・・・
なんなんだと思いつつ、いつもの儀式の2周目を試してみる。
強さも長さも4割増しで背中をポンポンとタップして、頭をワシワシと強めに撫でる。
・・・・・・
・・・・・・
ダメか・・・
〇:もー、いーだろー
・・・・・・
・・・・・・
拉致が開かないので、胸ぐらを掴まれるのを覚悟で、お尻をペシっと叩いてみると、ヒャッと短い息が漏れて全身がビクンと跳ねる。
あれ?
なんだこの反応?
てっきりエロ兄ちゃんだの、なんだのって言いながら粛清されると思ってたんだけど・・・
〇:なぎ?
和:んぅー、呼んだ?
声のする方向に開かない目を向けると、部屋の入口からこちらを見つめるなぎ。
ん?
なんでなぎがそこにいるんだ?
覚醒したての脳がぐるぐるぐるぐる・・・・
・・・・・・
・・・・・・
まさかと思いながら目を見開いて仰向けの自分の上に乗っている存在を確認する。
ア:お;;おぉぉぉ;;;おっはぁようございまぁすぅぅ//////
綺麗に裏返った高音で朝の挨拶をされる。
〇:えぇぇぇえ!!!!!!
〇:アルノちゃんっ!?な、何やってんの;;;
ア:え;;ぇっと//////えぇっと//////
ぶしゅぅぅと顔から蒸気が見えるほど赤い顔で俯く。
おおかた、なぎのドッキリに無理やり付き合わされたんだろう。
やべぇ;;;オレけっこう触ってたぞ;;;
〇:おいっ、なぎ!!なんだこれは;;;
和:何ってドッキリだよ、大成功!!
和:てってれー!妹だと思ったら、妹の友達でしたーってやつ
〇:そんなのあるかっ!!
こいつ;;;
言いたい事はやまほどあるが、今はアルノちゃんをなんとかするのが先決だ。
精一杯心を落ち着けてから事態の収束を図る。
〇:アルノちゃん//////
ア:ひ、ひゃいっ;;;
相変わらずの裏声で返事をする。
〇:と;;とりあえずどいてもらえるかな?
薄い掛布団1枚隔ててアルノちゃんが密着していて平気でいられるわけがない。
心も身体も;;;
・・・・・・
・・・・・・
〇:アルノちゃん?
ア:いぃ;嫌ですっ//////
〇:は?
ア:どど、どきませんっ;;;て、手を出してくれるまでっ//////
エッ、ナニコレ????
和:だってさ。アルノがこー言ってるけどどーする?
〇:いや、どーするって;;;
ア:おぉぉ、お願いぃします;;;;
〇:いやいやいや;;;お願いしますって///////
和:もうけっこう触ってたじゃん。観念しろっ!!
ア:そ;そそっそうです;;;か、かかっ、観念してくださいぃ//////
自室で突然始まった実力行使に逃げ場などなく、
必死で何度も掛け直すフィルターは、
ふたりの仕掛け人に秒で取り払われてしまう。
こんなのもう・・・
降参するしかないじゃないか・・・
抗う事を諦めて、目の前の一生懸命すぎるアルノちゃんと向き合う。
ずいぶんがんばらせちゃったなあ・・・
〇:アルノちゃん・・・
さっきからずっとプルプル震えているアルノちゃんの両手に
ゆっくりと手を出した。
ーーーーーー
ーーーーーー
とうっ!!
えいっ/////
ぐえぇっっぇ;;;!!!!
休みの日は大抵、ふたりのボディプレスとともにスタートする。
和:おっはよー、お兄ちゃんっ!!
生意気で兄想いの妹と・・・
ア:お;おはよう・・ございます///////、〇〇・・さん//////
まだ敬語が抜けない彼女のふたりだ。
【終わり】
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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