見出し画像

頭頂部の一部が少しハゲている

頭頂部あたりに一部、髪の毛がない場所がある。

ハゲだ。


きれいさっぱり髪の毛が抜け落ちたというわけではなく、

子供の頃に頭部をケガしたせいで、その傷跡には髪の毛が生えてこないのだ。

ハゲだ。


重傷ではなかったのでその傷跡は目立たないが、散髪に行った際は、美容師さんにバレていると思う。

「この子、頭の一部がハゲているけど、ストレスが相当かかっているんじゃないか」と、裏で心配されているかもしれない。実際に質問されたことはないが、もしかすると気を使わせているかも。

美容師さんに「あの子にストレスができるだけかからないように、髪の毛を切ろう」と思わせてしまって、こちらが相手にストレスをかけてしまっている可能性もある。ごめん、川越さん(仮名)。



いつから頭頂部にそのハゲができたかというと、確か小学1年生ぐらいのころだったと記憶している。

階段を踏み外し、転がり落ちて、頭から出血するほどのケガをした。頭パッカーンだ。たぶん、この事件のせいで頭のネジも外れてしまい、今では天然ボケをかまして、周りからイジられるようになってしまったに違いない。

なぜ踏み外したかというと、これもアホなだけなのだが、寝ぼけて注意力が散漫している状態で階段を降りようとしたら、3段目あたりで踏み外した。「あれっ?おかしいな、階段がないぞ」と。空気階段は、ちゃんと踏めていたのだが。

転げ落ちた時のことは、あまり覚えていない。だから走馬灯のようなものも、見えていない。気がついたら一番下の段にいて、家族が飛び上がってその場に駆けつけたことだけは、覚えている。みんなあたふたしていて、「早く病院へ行かないと」と、焦燥感と心配にかられた声音だった。



実はこの事件よりも以前に、階段での危険なシチュエーションはあった。

兄とチャンバラごっこしていた時だ。僕は3人兄弟の末っ子で、その時、真ん中の兄と剣術を競っていた。3歳、離れている兄だ。

2階の廊下でバシバシと剣を振い、兄と戦っていた。さすが3つも歳上の兄だ。剣さばきが、僕のはるか上をいっている。

兄の猛攻を後退りしながら受けていると、階段のすぐ近くまできた。「危ないから、終了〜!」とチャンバラごっこを止めることはできたのだが(止めるべきだったのだが)、「階段での戦いも、カッコいいよな」と変なスイッチが入り、停戦交渉には至らなかった。兄も楽しんでいて、剣を振ることをやめなかった。戦闘狂め。


そしてそのまま、階段での決戦に突入。僕は階段を背にして一段ずつ降りながら、チャンバラを続けていた。兄は段差の高さを利用した振り下ろし斬撃で、さらに苛烈な攻撃をしかけた。

チャンバラの方に集中していると、階段を降りる方への意識が薄くなっていた。「あっ」とその時、階段を踏み外して、滑り落ちていった。

だがこの時、奇跡的な受け身の取り方で、無傷に終わった。どうやったのか教えて欲しいぐらい、全くその時のことを覚えていないのだが、助かった。「これからは、階段でやるのはやめよう」と兄が後悔した表情で、階段では不戦の契りが結ばれた。




なのに、僕はこのチャンバラごっこがあった数週間後に、寝ぼけて再び階段を踏み外してしまったわけだ。

治療された時のことも、悔しいことにほとんど覚えていない。

お医者さんがミートボールみたいなものを、ピンセットでつまんでいた記憶しかない。あれは何だったんだろうか。ミートボールが好きで、診察室でこっそりつまみ食いでもしていたのだろうか。

ともあれ、大事に至らなくて本当によかった。頭頂の一部が、ハゲることになったが。頭頂一部脱毛。東証一部上場みたいに言っちゃった。



全国の美容師のみなさん。

頭頂部の一部だけに髪がない人がいたら、「もしかして、階段から転げ落ちた時の傷のせいですか?」と質問してみてください。

「はい、そうです」と答えが返ってきたら、たぶんそれは僕です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?